「この発想はいままでなかった」映画&アニメのプロたちが語る「大雪海のカイナ」唯一無二の世界観
「幻想と現実の間を体験させてくれる」ポリゴン・ピクチュアズによるアニメーション
映像美だけでなく、劇場のスクリーンでこそ映える大迫力のアクションも満載。大軌道樹を目指すカイナたちが乗る船の前に、突如として現れる“大海溝”という巨大な雪の壁。この困難をカイナたちは驚くべき方法で攻略し、船を進めるのだが、これらの一連のシーンにおけるスペクタクルは思わずのけぞってしまうほどに圧倒的だ。
さらに、カイナたちの仲間である黒い鎧をまとったアメロテ(声:坂本真綾)とアトランドの親衛隊長、オリノガ(声:小西克幸)らが、プラナトの兵士たち相手に繰り広げるソードアクションのスピードある緩急と躍動感は必見。複数の建設者がいっせいに起動する場面では、その光景に畏怖の念すら覚えてしまうはずだ。
アニメーションを担当したポリゴン・ピクチュアズに言及する声も。「ポリゴン・ピクチュアズのセルルックなデジタルアニメーションは、幻想と現実の間を体験させてくれる。スクリーンで雪海を目の当たりにした時、自身を物語の内側に置くか、外側に置くか。どちらも選べてしまう映像の余白に敬意を表したい」と阿部が説明しており、スクリーンでの鑑賞ならではの感動が伝わってくるよう。同スタジオは設立40周年を迎えており、持ち味である3DCGアニメーションの強みが本作でも遺憾なく発揮されている。
「曇のない瞳だからこそ、たどり着ける真実がある」カイナの物語を牽引する純粋さ
物語の主人公であるカイナは、天膜のうえで年老いたおじいさんやおばあさんを支えながら暮らしてきた純朴な少年。リリハと出会ったことで、人類の命運を握る旅に出ることになるのだが、マイペースでどこかおっとりした気性をしている。しかし、ピンチの際には驚くほどの行動力を見せ、身を挺して誰かを守ろうともする。争いを嫌い、常に平和的な解決方法を模索している。
そんなカイナのキャラクターについて、アニメ評論家の藤津亮太は「ごく普通の少年カイナ。権力や金儲けから遠い、彼の曇のない瞳だからこそ、たどり着ける真実がある」と分析。俗世的なものと縁がなかった彼の純粋さが物語を牽引するエネルギーになっていると言える。
カイナと様々な苦難を共にするリリハもまた、王女として民の安寧を第一に考え、無謀と思われながらも、大軌道樹にたどり着けると信じて進み続ける芯のあるキャラクター。「滅びの予感が充満するなかで、 それでも未来を信じ、逞しく挑み続ける少年少女が眩しい」と宇垣も語っている。
明日への希望を失わない姿が「脳裏に焼きついて消えない」
絶望的な世界の中で、明日への希望を失わないカイナたちの姿が胸を打つ本作。出自も価値観も異なる人たちが、時に対立しながらも、一つの目的のために結束する様は困難な時代を生きる私たちにも力強いエールを贈っている。
そんな作品の持つメッセージ性については、伊藤が「どこまでも身近に迫る私たちの物語だった。未知の冒険がたどり着くラストはいまも脳裏に焼きついて消えない」、藤津も「時代が動く時、普通の少年が大きな働きをはたす瞬間がある。小さな村から旅を始めたカイナが、ついに大きな世界を動かすのだ」と力説。気候変動や水不足で滅亡の危機に瀕する、どこか現代社会にも通じるような世界線や、特別な能力を持たない等身大の少年を主人公に置いたことで、誰もが共感でき、自分事としていつまでも心に残る作品として映ったようだ。
はたして、大軌道樹に人類を救う希望はあるのか?世界はどうして雪海に沈んでしまったのか?滅びゆく世界の謎に迫るカイナ、リリハたちの冒険を見守りながら、『大雪海のカイナ ほしのけんじゃ』の圧倒的な映像美をスクリーンで堪能してほしい!