『愛にイナズマ』の窪田正孝×池松壮亮×若葉竜也が語る!「これからを生きる自分たち自身についての映画」
「窪田さんの持っている空気って宇宙人みたいなんですよね」(若葉)
ーー役者としてお互いに抱いていた印象、演技でぶつかり合って感じたことはありますか?
若葉「ぶつけ合っているというよりは、時間や空間を共有しているという感覚が強くて。誰が目立とうとするわけでもなく、こんなことをやってやろうみたいな作為的なタイプの役者もいない。自然にお互いの役としての空間ができあがっていった感じがあります。僕の場合は、現場では池松さん演じる長男が切り開く道をトボトボとついていっただけです(笑)。窪田さんは現場での佇まいが圧倒的にほかの方とは違いました。窪田さんの持っている空気って宇宙人みたいなんですよね」
窪田・池松「あははは」
若葉「ほかの人では感じたことのない空気感でした。それが、本作の役としてのものなのか、窪田さん本人のものなのかは僕にはわからないままですが、その魅力はとてつもないものでした」
ーー「宇宙人のよう」と言われたことは?
窪田「いや、初めてです…」
ーー若葉さんがイメージする宇宙人がどういうものなのかも気になります。
若葉「なんだろうな。僕の周りにはまったくいないタイプだったので、現場にいた時の窪田さんは、役だったのかご本人だったのか、いまだに疑問ではあります(笑)」
窪田「現場では(松岡)茉優ちゃんと一緒にいることがすごく多くて。花子と正夫は恋人だけど、ソウルメイトのような関係。花子も、それを演じる茉優ちゃんもものすごく芯が強くてエネルギッシュなのに対し、その正反対にいる正夫は実直で、いまの世の中でいちばん生きにくいタイプ。色の違う2人が、どこか魂を共有しているような関係性だったというのもあって、宇宙人?のように見えたのかな。どうだったんだろう…」
若葉「本当の窪田さんがどんな人なのかという興味がすごく湧きました。別の現場で会ったら、なにかわかるかもしれません」
池松「正夫って非常に難役だと思うんです。現実味を疑ってしまうほどの汚れのない優しさと、一方で聖人ではない人間味を持ち合わせています。そのバランスが小さなニュアンスの積み重ねで印象が大きく変わってしまうようなキャラクターでした。窪田さんは正夫のよどみない誠実さ、実直さを見事に演じられていました。窪田さんの持つ聖なるものというか。本当に心がいい人ということをこの役をとおして感じました。窪田さん自身のバランス感と、正夫のバランス感がとても近いところにあったのではないかと思います。バランスを損なうと現実味のない“映画のなかのキャラクター”になってしまう人物を、地に足ついたキャラクターに起こし切っていてすばらしいと思いました。
若葉くんは、まあ本当に愛すべき兄弟で。雄二は冷静で、優しくて。この家族において居なくなった母親の欠落を埋めているようなところがありました。僕自身にも弟や妹がいて、弟や妹という存在にそもそもめっぽう弱いんですが、現場で若葉くんがこの物語に没頭する姿やその目を見ただけで、いちいちグッときていました。関わった役や作品にその身を丸ごと投げるような稀有ですばらしい俳優だと感じました。俳優をやっている、生業にしているというだけではとても到達できない、昔から俳優として呼吸してきたような、そんな匂いを感じました」