『ザ・クリエイター/創造者』の原点は20年前に観た「子連れ狼」!?ギャレス・エドワーズ監督が明かした制作秘話 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
『ザ・クリエイター/創造者』の原点は20年前に観た「子連れ狼」!?ギャレス・エドワーズ監督が明かした制作秘話

インタビュー

『ザ・クリエイター/創造者』の原点は20年前に観た「子連れ狼」!?ギャレス・エドワーズ監督が明かした制作秘話

「僕は『スター・ウォーズ』育ち。当然この映画にもその影響は出ているでしょう」

【写真を見る】『ザ・クリエイター/創造者』で本物の親子のような絆を築いた、ワシントンとヴォイルズの撮影風景
【写真を見る】『ザ・クリエイター/創造者』で本物の親子のような絆を築いた、ワシントンとヴォイルズの撮影風景[c]2023 20th Century Studios

エドワーズ監督が温めてきたアイデアをまとめた、オリジナル作品として製作された本作。そのストーリーはどのように形作られたのだろうか。「SF映画が大好きだから、いつかロボットものが作りたいという想いをずっと持っていました。それで日本語のロゴの工場を目にした時に、工場の中で働いているのがロボットだったらおもしろいなと考えたんです。そのロボットが初めて外に出て、空を見たらどう思うか。この草むらに触れたらどんな風に感じるだろうかってね」。ただしそれだけで一本の映画にするのは弱いと考えたエドワーズ監督は、親子のドラマを加えたという。「しまっておいた『子連れ狼』と組み合わせたらおもしろいんじゃないか、と考えました。2つのアイデアを頭の中でミックスしていたら、彼女の家族の家に着くころにはストーリーの大枠が完成していました。ここまでスムーズに物語ができるのは、自分にとってはレアなケースだと思います」というエドワーズ監督は、タイミングもよかったという。「『ローグ・ワン』という大きな仕事が片付いて、頭の中のドライブをリセットして空っぽになっていた時でした。空きスペースがたくさんあったのがよかったと思います」と笑う。

過去の任務で心に傷を追った元特殊部隊員のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)
過去の任務で心に傷を追った元特殊部隊員のジョシュア(ジョン・デヴィッド・ワシントン)[c]2023 20th Century Studios

そのストーリーをもとに『ローグ・ワン』の脚本家クリス・ワイツと共同で書き上げたのが、大切な者を守るため命を捨てる覚悟で戦う兵士ジョシュアの物語。彼の姿は帝国との戦いに勝利するため死を覚悟しミッションに挑んだ『ローグ・ワン』のならず者部隊にも重なる。なにかしら影響はあったのだろうか。「僕はいわば『スター・ウォーズ』育ち。意識したかどうかは別にして、当然この映画にもその影響は出ているでしょう。もし僕が『ローグ・ワン』を作っていなくても、似ている話になったかもしれないですね。ドラマ作りの面からしても、命がけの状況は観る人を惹きつける。だから5分に1回はジョシュアやアルフィーが死ぬんじゃないかと思えるぐらい、危機に直面させるつもりで作りました」。

「背景も本当に必要なところだけ作るほうが、みんなが幸せになれると考えました」

AI搭載ロボットのメカ表現などは、すべて後処理でCG加工を施したそう
AI搭載ロボットのメカ表現などは、すべて後処理でCG加工を施したそう[c]2023 20th Century Studios

本作に登場するAI搭載ロボットは、人間と変わらない豊かな表情を見せる。しかしそれは“顔のみ”で、耳から後頭部にかけてはメカがむき出しの状態だ。そのため渡辺謙をはじめAIを演じた俳優たちは、すべてCGで加工されたハイブリッドの形でスクリーンに登場する。通常は合成作業のために、俳優の頭などVFXを加える箇所はグリーンで覆ったりマーカーを付けて撮影するが、本作では素の状態のまま撮影し、あとから監督が指定した場所にメカ部分が合成された。「ロケハン用の費用が出たので、東京やネパール、インドネシア、タイに行ったんですが、その時に小型のムービーカメラを持っていったんです。そこで試し撮りした映像をILM(VFXの制作会社)に渡して、CGを合成した8分ほどの映像を作ってもらいました。すごくクオリティの高い仕上がりで、すべて後処理にした方が効率的だと判断したんです」。

グリーンバックによる背景の合成も極力省き、可能な限りロケ撮影が行われたが、そこには予算や効率以外の理由もあった。「合成をする場合、背景をすべて作り込まなければなりません。でもクリエーターが何か月も費やし作った映像なのに、完成した映画には一部しか使われなかったというケースも多いんです。だから背景も本当に必要なところだけ作るほうが、みんなが幸せになれると考えました」とVFXクリエーター出身者ならではの映画術を教えてくれた。なおエドワーズ監督は日本のレンズメーカー興和(KOWA)のレンズがお気に入りで、本作の撮影には70年代に発売されたオールドレンズを使用したという。カメラはSONYのシネカメラFX3が使われたが、独特の柔らかい質感はビンテージレンズが生みだしたものだという。

「やりたいと思ったことがすべて実現できた、満足以上の仕上がりです!」

新たな撮影方法に取り組んだという『ザ・クリエイター/創造者』
新たな撮影方法に取り組んだという『ザ・クリエイター/創造者』[c]2023 20th Century Studios

スリル満点のアドベンチャーと、家族の絆を描いたエモーショナルなドラマが共存するアクション大作として完成した本作だが、その満足度をたずねると「やりたいと思ったことがすべて実現できた、満足以上の仕上がりです!」と自信を見せた。「ドラマ部分もそうですが、これまでにない撮影方法を考え、それを実現できたことにとても満足しています。例えばロケーション中心なので、スタジオと違って現場の状況に合わせて撮影しなければなりません。カメラを手持ちして主人公と一緒に走りながら撮影もしているので、カメラが揺れてうっかりスタッフが映り込んでしまう可能性もありました。そこでスタッフは最小限にして、さらにエキストラと同じ格好をして撮りました。観光客などたくさんの人がいるツーリストスポットで、人止めをしないで渡辺(謙)さんたちと撮影をしたこともありましたよ。その場にいるスタッフは5人くらいだったので、たぶん周りの人からYoutuberだと思われていたんじゃないかな(笑)。でもそれだけ自由な現場だったからこそ、普通の映画では撮ることのできない空気感や臨場感を生みだせたと思います」。


本作への手応えを口にしたギャレス・エドワーズ監督。次なるプロジェクトにも期待が高まる
本作への手応えを口にしたギャレス・エドワーズ監督。次なるプロジェクトにも期待が高まる撮影/黒羽政士

人類とAIが戦争状態に陥った近未来を舞台に繰り広げられる『ザ・クリエイター/創造者』。イマジネーション豊かな物語を展開するが、そのビジュアルは日常と地続きにあるリアルな世界。「ゴジラ「」「スター・ウォーズ」に続くギャレス・エドワーズ最新作は、テーマを含め誰もが自然にその世界に入っていけるワザありの作品なのだ。

取材・文/神武団四郎

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