「出来上がった映像を観て『ヤバい』と思った」緒方恵美と釘宮理恵が映画『デジモン02』のアフレコを振り返る
「緒方さん演じるルイは体中からせつなさがにじみでていた」(釘宮)
――お2人で一緒にアフレコができたとのこと。悲しい過去を抱えたルイと、彼のパートナーになるウッコモンとして共演した感想を教えてください。
緒方「釘宮さんは、ピュアなものを演じられるまま、大人になっている方なので。外側だけではなく、ピュアな中身までを演じられるんです。外側だけを演じられる人はいますが、ピュアなものを持ち続けて、さらに経験値を積んで年齢を重ねている声優というのは、実はすごく少ないのではないかと私は思っていて。そして伝え方が、ものすごく的確。ルイを演じる私としては、ウッコモンが優しくしてくれることに乗っかっていけばよかったので、とても楽でした(笑)」
釘宮「ありがたい。光栄です」
緒方「ウッコモンの優しさに身を委ねていたルイは、次第に『あれ?これでいいのかな?』と違和感を覚えていきますが、それもウッコモンに悪意がなくピュアでい続けていてくれたからこそ、戸惑いが生まれるわけで。釘宮さんのおかげで、乗っかっていったまま演じることができました。ありがとうございました」
釘宮「こちらこそありがとうございます。私は、悲しい想いを抱えている4歳のルイとウッコモンの出会いが強烈すぎて。緒方さん演じるルイは体中からせつなさがにじみでていて、『なんてかわいい子なんだ。なぜこんなつらい目に遭わなければいけないんだ』『自分にできることは全部やってあげたい』と心から思いました。そんなルイから『お友だちになってくれるの?』と言われたら、『なる。全員、友だちにする!』と愛情が湧きでてきました」
緒方「ウッコモンを演じるのが愛情深い人で、本当によかったです」
「『やっちゃっていいですか』と確認しました」(緒方)
――ルイとウッコモンは気持ちがすれ違い、ぶつかり合うこともあります。ルイが感情を爆発させるシーンは、彼の悲痛な叫び、それを目の当たりにするウッコモンを演じられた、緒方さんと釘宮さんの熱演が心に響き、お2人のすごみを実感するようなシーンとなっています。その場面のアフレコで印象的だったことがあれば教えてください。
緒方「私が本気でやると、だいぶ悲惨なシーンになってしまうと感じたので『どこまでやっちゃっていいのかな』と思いました。監督を始めスタッフの方々に『やっちゃっていいですか』と確認したところ、『少しお待ちください』ということで、15分くらいディスカッションされた時間があって。そこで『やっちゃってください。いきましょう!』と言っていただき、よりリアリティを追求する方向で演じさせていただきました。検討する時間があって現場の空気もグッと引き締まったものになりましたし、ルイに対するウッコモンの反応も本当にすごかった。実際に出来上がった映像を観て『ヤバい』と思うほどでした」
――ルイの痛みを体現するのは、とてもつらい時間だったようにも感じます。
緒方「私は長年、戦う声優なので(笑)。これまでも悲惨なシーンをたくさん体験してきました。私たちがやることは、作ったものを通してお客様に共感してもらって、擬似体験してもらって、笑ったり、泣いたりしてもらうこと。ルイとウッコモンのやり取りを通して、切なさに共感していただいたり、ホッとしてもらえたらいいなと思っていました」
――ディスカッション後のルイの叫びは、釘宮さんから見ていかがでしたか。
釘宮「ルイくんの悲痛な、全身全霊の叫びが胸に迫りました。ウッコモンとしては、身を裂かれるような想いがしましたね。緒方さんがおっしゃったように、ディスカッションの時間があったことで、アフレコブースの中、そして監督やスタッフさんの意志が一つになって、同じ方向に突き進んでいけたような気がしています。『みんなで一つのものを創造していくぞ』というエネルギーが生まれた瞬間でしたし、そういう意味でも、緒方さんの『やっちゃっていいですか』という問いかけは、今回の作品作りにおいて肝になったと思っています」
――ルイとウッコモンの関係性や、大輔たちに背中を押される様子から、「絆や信頼を深めるためには本音で話したり、お互いをきちんと知ることが大切なんだ」と感じる人も多いと思いますが、本作の現場でもいいディスカッションがあったのですね。
釘宮「本当にそう思います。そういった話し合いからも、監督やスタッフの方から『託します』という全力の信頼をいただけていると感じたので、こちらもやれることは全力でやりたいという気持ちが一層湧き上がる。そういった信頼関係を結ぶことができた現場だったと思います」