アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第24回 核

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アルコ&ピース平子祐希、初の小説連載!「ピンキー☆キャッチ」第24回 核

MOVIE WALKER PRESSの公式YouTubeチャンネルで映画番組「酒と平和と映画談義」に出演中のお笑いコンビ「アルコ&ピース」。そのネタ担当平子祐希が、MOVIE WALKER PRESSにて自身初の小説「ピンキー☆キャッチ」を連載中。第24回は怪人たちの狙いの核心に迫る!?

ピンキー☆キャッチ 第24回 核

イラスト/Koto Nakajo

「・・・」
「・・・」
「・・かく?どの『かく』を言うてんの?」
「今挙げてた国、全部核保有国です。フランス、アメリカ、イギリスにロシア」
「・・・」
「・・・・へえ、そうなんや」

都築は脳の奥がスッと冷たくなった。何かとてつもなく強大で恐ろしい何かが、しかし同時にとても重要な事実の輪郭が見えかけた気がしたからだ。鈴香と理乃はいまいちピンときておらず、七海に疑問をぶつけ続けている。

「核って核爆弾のでしょ?だけど怪人はバリア張ってるんだし、関係なくない?」
「あくまで予想だけど・・。核爆弾の中でも中性子線の放射率が高いものがあって、ちょっとした物質なら透過するって聞いた。地球外・・生命体?は、あのバリアじゃ中性子線を防ぎ切れないのを知ってて、核保有国を避けてるんじゃないのかな?ってか核の話はみんなも歴史の授業で聞いてたはずだよ。終戦の箇所で中川先生が話してたじゃん」

「中川っちの授業固いんやもん、忘れたわ。じゃあじゃあ、日本のシャンパンを狙う理由はそれだとして、どうして街中で意味も無く悪さするん?こっそりシャンパンだけ盗んだらええやんな?」
「私もそう思う。わざわざ正体明かすようなことするのおかしいよね?」

不意に鈴香に目線で問いかけられ、都築は言葉に詰まった。

「ああ、前に調べたんだが・・。怪人達の出現先を線で囲うと、その中心が防衛省になる・・・ような気もしてるんだ。その目的が結界の様なものを結ぶ為なのかどうか、色々と考えてはいるんだ」
「結界・・ふうん・・」

七海が唇を尖らせて目を固く閉じている。何かを深く考えている時の癖だ。頭を左右にしばらく揺らしていたが、パッと目を開けた。

「都築さん。結界を張ってるとかじゃなく、もっと単純なんじゃないですか?」
「単純?・・というと?」
「この国の防衛における組織力を測ってるんじゃないのかな。初めは小物の怪人を送り出して、どう対処してくるかでこの国の軍事力を見定めようとしてるのかもしれない。だからその中枢機関である防衛省近辺にランダムに怪人を出現させている・・・」
「そう考えると・・ねえ都築さん。前にも3人で話してたんだけど・・」
「うん鈴香、何でも言ってくれ」
「怪人がね、ほんの少しずつではあるけど強くなってる気がするんだよね。この前の七海の怪我もそう。ハプニングがあったとはいえ、以前はあそこまでの事はなかったでしょう」

「ちょっと待ってくれ・・少しまとめるぞ。つまり奴らはその気になればいくらでも強力な攻撃をする事が出来る可能性があると?」
「核攻撃は避けたい。そこで非核保有国かつシャンパン保有量の多い日本の東京を選び、国の防衛力を知るために怪人を製造、送り出してこちらの攻撃力を測っている」

七海が語る『シャンパン保有量』のところで鈴香が吹き出し、理乃に小突かれた。無理はない。切迫した状況にシャンパンだけがあまりにも浮いている。

「七海の予想が正しいと仮定して・・。核の中性子線を避け、かつシャンパンを無事に回収するのが目的か」

都築は先日吉崎が『大規模な戦闘が起こると回収が難しくなるデリケートな物なのかもしれないな』と話していたのを思い出した。

「それだけでは怪人を派遣する理由になりません。もうシャンパンはあらかた回収し終えているのに、怪人は出現し続けている・・・」
「と、いうと?」
「シャンパンはあくまでエネルギー源。まずはこの国を制圧。そして日本を基点にし、蓄えたエネルギーで核対策、最終的に地球そのものを征服する。・・・こう考えると、これまで不明確だった物事に説明がつきます」

都築は無意識にふらりと立ち上がった。決して大きな脅威程ではない怪人の出現とその地域。この日本が、ひいては東京が標的となった理由。七海の予想に穴は無く、不可解だったポイントが一斉に線で繋がっていった。

都築は防衛省に繋がる特別回線の受話器を握った。

「もしもし、都筑です。至急、防衛大臣との面会を要求します。・・・いえ、緊急非常事態を上回る有事だとお伝え頂きたい」

(つづく)

文/平子祐希

■平子祐希 プロフィール
1978年生まれ、福島県出身。お笑いコンビ「アルコ&ピース」のネタ担当。相方は酒井健太。漫才とコントを偏りなく制作する実力派。TVのバラエティからラジオ、俳優、執筆業などマルチに活躍。MOVIE WALKER PRESS公式YouTubeチャンネルでは映画番組「酒と平和と映画談義」も連載中。著書に「今夜も嫁を口説こうか」(扶桑社刊)がある。
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