ギデンズ・コー監督、『ミス・シャンプー』で描きたかったのは「愛の偉大さ」ドタバタの映画人生も告白し、会場を沸かす

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ギデンズ・コー監督、『ミス・シャンプー』で描きたかったのは「愛の偉大さ」ドタバタの映画人生も告白し、会場を沸かす

現在開催中の第36回東京国際映画祭にて10月28日、ワールド・フォーカス部門『ミス・シャンプー』のQ&AセッションがTOHOシネマズシャンテで開催され、ギデンズ・コー監督が登壇した。

ギデンズ・コー監督がワールド・フォーカス部門『ミス・シャンプー』のQ&Aセッションに登場した
ギデンズ・コー監督がワールド・フォーカス部門『ミス・シャンプー』のQ&Aセッションに登場した

『あの頃、君を追いかけた』(11)などで知られるコー監督が、自らの小説を映画化した本作。嵐の夜に追っ手から逃れてヘアサロンに隠れたヤクザのアータイが、助けてくれた店員のアーフェンと恋仲になる様子を描く。エンドロールでも爆笑や拍手が沸き起こるなど、大盛況の上映会となったこの日。コー監督は「東京国際映画祭にやって来られて、とてもうれしいです。私にとって映画はとても大切なもの。今日は映画祭で皆さんにお会いできて本当にうれしいです」と挨拶した。

観客からの質問に答えたギデンズ・コー監督
観客からの質問に答えたギデンズ・コー監督

多忙のなか同映画祭に駆けつけたコー監督だが、「今日の午後、(東京に)やって来たばかり。明日の朝の便で台湾に戻ります」と極めて短い滞在期間だと苦笑い。今回の来日は「とてもラッキーだ」と口火を切り、「いま、次の作品の準備をしていて。うまくいけば、3週間以内にクランクインできると思います。こんなに忙しい時にクルーの皆さんに『ごめんなさい。休暇を2日もらって、日本に行きますよ』と言ってきました」と近況と共に来日が叶った喜びを伝えていた。

美容師とヤクザの組み合わせが魅力的な本作だが、観客から着想の鍵となったものについて聞かれたコー監督は「私は小説もいっぱい書いています。出版されたものは80作以上あると思いますが、それぞれテーマは違います。固定はしていません。映画も、自分の撮りたいものを撮るというだけです」とコメント。

上映中には笑い声や拍手が沸き起こっていた
上映中には笑い声や拍手が沸き起こっていた

「『あの頃、君を追いかけた』という最初の作品は、私自身の高校時代の体験を描いたものです。2作目については、その時に浮気をしてしまい問題になってしまって。世の中が僕のことを嫌いになったんです。そのことをテーマにして、2作目を作りました」と正直に打ち明けた。さらに「3作目の『赤い糸 輪廻のひみつ』は気に入ってもらえるかわかりませんでしたが、興行成績はすばらしかった。皆さんも、僕のことを許してくれたのかなと思います。あまりにもハッピーな気分になったので、それを今回の作品にしました」と正直な言葉を次々と口にし、「ドタバタで、どのようになっているのか自分でもよくわかりません」と目尻を下げながら、心のままに映画道を歩んできたと話した。

【写真を見る】ギデンズ・コー監督、独特なヘアスタイルも印象的!奥さんが整えてくれるという
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観客と一緒に映画を鑑賞していたという、コー監督。「隣にいた通訳の人に、『この映画の字幕はどうなっているの?』と聞いたんです。なぜかというと、劇中のヤクザの人たちの言葉は乱暴で汚くて、話す時には相手の気持ちも考えていない。これが字幕になったらどうなるのかなと思っていたんです」と告白。「翻訳をした方が、優しい気持ちを込めて日本語にしてくれたようで。本当に感謝しています」とお礼を述べ、会場の笑いを誘っていた。


様々なヘアスタイルが登場する本作だが、コー監督自身も独特なヘアスタイルをしている。「私のヘアスタイルはいつも妻がやってくれるんです。ただこのスタイルしかできません」とお茶目ににっこり。「この映画で撮りたかったのは、どんなに暴力的な男でも、どんなにみっともない男でも、恋に落ちてしまえば、男の子のようにすごく優しくなるということ。この映画は、私自身の愛に対する憧れの表れなんじゃないかと思っています」と本作に込めた想いを吐露。「エロや暴力もありますが、描きたかったのは愛は偉大だということ。現実の人生は大変なもの。悲しいことだってあるので、この映画の後半でも悲しい話を展開しています。でも最後には、観客の皆さんが笑ったり、拍手をしてくださった。やっぱりどんなに苦しい世の中でも、ハッピーエンドはみんなが求めるものなんだと思った」と語り、会場から大きな拍手を浴びていた。

取材・文/成田おり枝

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