カンヌ、ニューヨーク映画祭のプログラマーによる対談が実現!映画祭のプロから見た東京国際映画祭の魅力

インタビュー

カンヌ、ニューヨーク映画祭のプログラマーによる対談が実現!映画祭のプロから見た東京国際映画祭の魅力

「自分の表現したいことを映画を使って表す、そこを一番大事にしてほしいです」(ジュンヌ)

――たくさんの人に映画を届けるために、プログラムをする際に重要視するのはどんなことでしょうか?

ジュンヌ「毎年(映画祭の)テーマが違うので、ガイドラインがないというのが正直なところ。すごく難しいことだけど、強いて言うならこの監督ならきっといい映画をつくるだろうなと期待を込めてという感じかな。成功のレシピはありません。その時期にオファーされた映画で良いセレクションを作っている、そんなところでしょうかね(笑)」

リム「よく、セレクションを見て『これはあなたが好きな作品リストなんですね』などと言われがちですが、まったくそうではありません。ニューヨークで観客に向けてやっている映画祭としてプログラムに合うか合わないか、ストーリー性を重要視しています。いろいろなテイストを持つ観客がいるなかで、映画祭のアイデンティティ、視点を定めて観客にフィットする映画を提供したいと考えています。どうやってプログラミングしているのか問われると、正直、やってみないとわからないというのが大きいです」


ニューヨーク映画祭の会場であるリンカーンセンターの代表、レスリー・クレインバーグとデニス・リム
ニューヨーク映画祭の会場であるリンカーンセンターの代表、レスリー・クレインバーグとデニス・リム写真:SPLASH/アフロ

――東京国際映画祭のよいところとして若い映画人達を育てるプログラムがあることを挙げていらっしゃいましたが、カンヌ、ニューヨークではどのような取り組みがありますか?

ジュンヌ「カンヌには学生映画部門のLa Cinefondationという取り組みがあります」

リム「ニューヨークにも学生向けの教育機関のようなものがあります。コロナ禍を経て1つよかったと感じているのは、ニューヨークを含めアメリカでは若い世代が映画にいち早く戻ってきてくれたこと。いま、映画を観に来てくれる層がちょっと若くなっているのは、とてもいいことだと思っています」

――もしお2人が東京国際映画祭のプログラマーに就任したら、どんなプログラムを作りたいですか?

ジュンヌ「それはジョブオファーと考えていいのかな(笑)。でも、私は日本語がしゃべれないから、その時点で基準を満たしていないかなと思います。やはり言語や文化の理解度は重要ですから」

リム「私には難しいと思います。映画祭の観客のことをわかっていることがプログラムを作るうえでとても大事なことなので。私は力不足です」

――最後に、カンヌ、ニューヨークの映画祭で作品を上映したいという監督にアドバイスがあればお願いします。

ジュンヌ「ここでも言いたいのは『レシピはない』ということ。映画祭のために映画を作るとは思ってほしくありません。自分の表現したいことを映画を使って表す、そこを一番大事にしてほしいです」

リム「どういったポイントを見てプログラムを作っているのかという質問をよくされます。答えとしては『なにもないです!』が正解です。私たちがどんな期待をし、なにを欲しているのかを考えるのではなく、作品で驚かせてほしいと思っています」

取材・文/タナカシノブ

※記事初出時、スペルミスがありました。訂正してお詫びいたします。

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