山田洋次監督が中国の若き才能グー・シャオガン監督と対談!「寅さんのような愛される映画を作ってもらいたい」

イベント

山田洋次監督が中国の若き才能グー・シャオガン監督と対談!「寅さんのような愛される映画を作ってもらいたい」

11月1日(水)まで行われている第36回東京国際映画祭(TIFF)で30日、「国際交流基金×東京国際映画祭 co-present 交流ラウンジ」が開催。日本映画を代表する巨匠である山田洋次監督と、本年度のTIFFで「黒澤明」賞を受賞し、コンペティション部門に最新作『西湖畔に生きる』が出品されている中国のグー・シャオガン監督の対談が実施された。

今年で4年目の開催を迎えた「国際交流基金×東京国際映画祭 co-present 交流ラウンジ」は、是枝裕和監督を中心とした検討会議メンバーの企画のもと、東京に集った映画人たちが語り合うトークセッション。今回の対談は、山田監督がグー監督の長編デビュー作となった『春江水暖〜しゅんこうすいだん』(19)に強く感銘を受けたことを受けて実現。その対談の模様を、再構成してフルボリュームでお届けしていきたい。

「人間が描かれているかどうか。大事なことは観客が決める」(山田洋次)

90本目の監督作『こんにちは、母さん』が現在公開中の山田洋次監督は、現在92歳
90本目の監督作『こんにちは、母さん』が現在公開中の山田洋次監督は、現在92歳

山田洋次(以下、山田)「『春江水暖〜しゅんこうすいだん』を観て、こんなすばらしい映画があるのかと驚かされました。軽やかで暖かくて気持ちがいい。ちょっと褒めすぎかもしれませんが、モーツァルトの音楽を聴いているような映画だと感じ、どのようなプロセスで作られたのかとても興味が湧きました。是枝(裕和)くんがグー監督にお会いしたというので、不思議なカットの撮り方をいくつか彼を通して聞くことができました。そして今年の上海映画祭でようやく直接お会いできて、とても素敵な青年で想像通りでうれしい限りです」

グー・シャオガン(以下、グー)「今回来日するにあたって特に緊張していたことは、『西湖畔に生きる』のワールドプレミアをやることと、今日こうして山田監督にお会いすることでした。こういう機会は僕のような若い映画人にとって非常に励みになることです。今回の作品は『春江水暖〜しゅんこうすいだん〜』とはだいぶ違う作品です。上映の時に山田監督がいらっしゃってくれましたが、上映後のQ&Aの途中で退席されているのを見つけて、もしかして相当お怒りになられたのかとヒヤヒヤしました(笑)」


山田「大変失礼かとも思いましたが、他の用事があったためそっと出て行ってしまったんです。でも今回の映画は『春江水暖〜しゅんこうすいだん』のような作品かと思ったら全然違う映画だったので、びっくりしたのは事実です」

グー「おっしゃる通りです。この2作品の創作の動機はまったく異なっていて、前作の時は映画がどういうものか自分でもわかっておらず、作る時には作品の本質に近付こうとして観客のことを考えずに撮ることを心がけていました」

山田「それは、どう受け取られるか考えないでということですね」

『春江水暖〜しゅんこうすいだん』でデビューしたグー・シャオガン監督は現在35歳
『春江水暖〜しゅんこうすいだん』でデビューしたグー・シャオガン監督は現在35歳

グー「そうです。でも今回の作品では観客に向き合うことを心掛けていました。監督は先日の上海での『こんにちは、母さん』の質疑応答の際に『コメディを撮るのは難しいです』とお話しされていて、それをだんだん理解できるようになりました。監督の偉大さやアート性は、もっと別の映画を作ることができる。それでも監督は何十年も観客のために映画を作り続けてきた。こんな現実を前にしても軽やかで暖かく。そのことにつくづく感動させられます。だから僕自身も、中国の観客の皆さんに向き合うように、自分の家族が観て理解できるような映画を心掛けて作ったのです」。

山田「いま話にあった『コメディが難しい』という話だけど、その作品がコメディか悲劇かを決めるのは観客なんですよね。作り手がいくらおかしな映画を作ろうとしたって、おかしい映画はできない。大事なのは人間が描かれているかどうか。だから作り手の予想しないところで観客は笑ったりする。ここがおもしろいだろと考えてもいけないし、そう考えて演出したってちっともおもしろくない。大事なことは全部観客が決めるってことなんです」

映画の力で世界をカラフルに!「第36回東京国際映画祭」特集

関連作品