「これから世界の映画界を担うであろう若手の監督を選出」黒澤明賞を若手監督2名が受賞!
現在開催中の第36回東京国際映画祭で10月31日、帝国ホテルにて、黒澤明賞の授賞式が開催。グー・シャオガン監督と、モーリー・スリア監督が受賞した。
世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる賞として、昨年14年ぶりに復活した黒澤明賞。昨年は、アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督と深田晃司監督が受賞。今年は、山田洋次監督、檀ふみ氏、奈良橋陽子氏、川本三郎氏、市山尚三東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの5名が選考委員として参加し、『春江水暖~しゅんこうすいだん』のグー・シャオガン監督と『マルリナの明日』のモーリー・スリヤ監督を受賞者に選出した。
授賞式の初めに、チェアマンの安藤裕康氏が今年の特色について説明。「今年は、これから世界の映画界を担うであろう若手の監督を選出させていただきました。今年は未来志向の強い選考だったと思います」と話した。
シャオガン監督は、デビュー作である初長編映画『春江水暖~しゅんこうすいだん』が、2019年カンヌ国際映画祭批評家週間のクロージング作品に選出されており、第20回東京フィルメックスのコンペティション部門では審査員特別賞に輝いている。
トロフィーと賞金100万円が授与されると、「本当にいまうれしくて…。光栄に存じます」とシャオガン監督。「私がまだ、映画に対する興味が芽生えていないころ、黒澤監督がアカデミー賞の名誉賞を受賞したというニュースを見ました。その時黒澤監督は『私はまだ映画がよくわかっていない。これからも映画というものをつかむために努力する』と、おっしゃっていて。その時私はまだ黒澤監督の映画を観たことがなかったのですが、そこから1本1本観て、映画を勉強して、制作するようになりました。今回、東京国際映画祭の厚いご厚意と信頼によって、このような賞をいただけるというのは、黒澤監督からの厳しい戒めのようにも思えます。『これからも映画とはなにかを探求しなさい。その答えを模索することが、映画を作り続けるということだ』と、重い責任を託されたと感じています」と挨拶した。
一方、初の長編映画作品『フィクション。』を2008年に制作したスリヤ監督は、インドネシア映画祭にて、最優秀作品賞など4つの賞を受賞。一人の女性の行動をパワフルに描いた監督第3作目の『マルリナの明日』は、カンヌ映画祭監督週間を皮切りに米国、カナダ、日本を含む14か国で劇場公開され、第18回東京フィルメックス最優秀賞も受賞。第91回アカデミー賞外国語映画賞には、インドネシアを代表して出品された。
スリヤ監督は、「今回の賞は、私が初めてとった栄誉ある賞です。本当にありがとうございます」と挨拶。続けて、「この賞は、アジアの映画界にとっても意味のある賞だと思います。私は黒澤監督には非常に影響を受けていて、『マルリナの明日』については、タランティーノ監督の影響が強いのではないかと言われるのですが、実はそんなことはなく、黒澤監督の『羅生門』『七人の侍』に影響を受けているんです」と明かし、今後については「映画というのは社会を映す鏡だと思っているのですが、社会の変化、変わりゆく未来を受け止めながら生きていきたいと考えています」と語っていた。
取材・文/平井あゆみ