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アニメ制作現場のリアルを描いた「SHIROBAKO」で再確認!『駒田蒸留所へようこそ』につながる“お仕事シリーズ”の魅力

コラム

アニメ制作現場のリアルを描いた「SHIROBAKO」で再確認!『駒田蒸留所へようこそ』につながる“お仕事シリーズ”の魅力

業界それぞれの仕事風景を覗き見しているようなリアルな描写

キャラクターの魅力に加えて注目したいのは、お仕事シリーズを冠するだけのことはある、その業界への深掘りだ。温泉旅館に観光協会、水族館―。それぞれ、作品制作の際にいったいどれほどの取材を行っているのかと唸りたくなるほど、各業界のリアルな仕事風景が描かれる。

なかでも、「SHIROBAKO」はアニメ業界ということもあり、制作の現場からあふれ出てきたような細かな描写が多い。押しまくるスケジュール、原作者による全リテイク=通称“ちゃぶ台返し”、製作委員会を構成する企業間のパワーゲームなども盛り込まれ、自分が実際にその仕事に就いて業界を覗いているような気持ちにさせられる。

進行スケジュールの遅れをデスクに咎められる監督の木下誠一
進行スケジュールの遅れをデスクに咎められる監督の木下誠一[c]「SHIROBAKO」製作委員会

「SHIROBAKO」の舞台となる武蔵野アニメーションの舞台は東京都の西部だが、背景美術の精緻さも手伝って、本当に会社がその街にあり、あおいたちがそこに出社しているような、道を歩けばすれ違うような気さえしてくる。こうした街並みの取材力にも、ぜひ着目していただきたい。

キャラクターの挫折やピンチをドラマティックに乗り越えるエンタメとしての爽快感も!

と、ここまで作品世界を作り上げるリアリティについて言及してきたが、もちろんお仕事シリーズはリアルなだけではない。キャラの挫折やピンチ、起死回生の一手!といったドラマティックな展開が、視聴者に爽快感を与えてくれる。

「SHIROBAKO」でも様々なことを起因としたピンチが訪れ、あおいたちを追い詰めることが度々ある。「万策尽きた!」というセリフが持ちネタのようになっているキャラクターもいるが、本当に万策尽きることはなく、スタッフたちの協力によって、また時には他社から手を差し伸べられて、あおいたちはピンチを乗り越えていく。

一度火が点くと一心不乱に仕事に取り組む木下監督
一度火が点くと一心不乱に仕事に取り組む木下監督[c]「SHIROBAKO」製作委員会

ピンチを打開する方法は、魔法ではない。誰かの些細な一言や、偶然会った同業者からの助けだったりする。そこがまた仕事をテーマにした作品として「ありそう」で、だからこそハラハラしたり、ワクワクしたりといった気持ちが強まるのかもしれない。仕事のリアルさを追求しながらも、良質なエンタテインメントとしての魅力を手放すことのないP.A.WORKSの構成力には目をみはるものがある。


仕事を扱う作品は数多く存在する。私たちはそれを観て自分の知らない仕事について知ったり、壁にぶつかって思い悩むキャラクターと共に涙したり、一つのピンチを乗り越えて成長した姿に自分を重ね「自分も頑張りたい」と思うことができるはずだ。

主人公の成長ストーリーが物語の軸に
主人公の成長ストーリーが物語の軸に[c]「SHIROBAKO」製作委員会

蒸留所を立て直すために幻のウイスキーを復活させようとする女性と、その姿を取材するWEBライターたちを描く『駒田蒸留所へようこそ』でも、“自分の仕事”に真摯に向き合う人の姿がたくさん見られることだろう。この作品がまた、働く人たちを励ましてくれる存在になることを願わずにいられない。

文/藤堂真衣

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