「なぜ戸愚呂弟はサングラスをしているのか…」綾野剛&滝藤賢一が明かす「幽☆遊☆白書」戸愚呂兄弟へのアプローチ
「いまこそ日本のことをもっと知り学び、そして届けたい」(綾野)
――高度な技術を取り入れた映像作りの機会も増えてきたかと。技術の進歩との向き合い方をどのように捉えていますか?
綾野「まず、本作のようなスケールの作品を作ろうとしている方々がいることに感謝ですし、勇気をもらっています。表現することを諦めず『幽☆遊☆白書』を映像化しようと挑戦し、そこに辿り着いていることに感銘を受けます。役者としてそれに応えられる自分でありたいとも思っています。僕が本作の撮影を通して思ったのはCGを豊かにするのは現場だということ。表情はCGではなく役者でとなったのは、人間にしかないニュアンスという表情があるから。アナログな作業をしっかり積み重ねなけらば、この完成形には辿り着けないという確信が持てました。フルCGの世界では僕たち役者は必要ないかもしれません。でもそれも一つの作品性です。ですが、本作には人が握手をして感じる体温と同じように、CGを超えた“体温”があります。CGと共存できた瞬間といいますか。それが礎になってほしいと願っています」
――主人公である浦飯幽助役の北村匠海さんが「日本のエンタテインメントがさらに広がりますように」とコメントされていましたが、お二人は日本から世界に発信できるエンタテイメントに必要なこと、やるべきことをどのように考えていらっしゃいますか?
綾野「日本語を知って頂けたら幸いです。耳慣れといいますか、日本語の響きや鳴り方、情感がより伝わったらいいなと思っています。日本語にしかない語感が俳優の生体を通して、レンズを通して伝わっていく。僕は母国語で世界へ発信できる喜びをとても大切にしています。もちろん他国の言語でもコミュニケーションしていきたい思いはありますが、今回の現場では僕が上手に(英語を)話せなくても受け止めてくださいましたし、つい日本語で話していても表情で伝わっていて。言葉の壁を超えて伝わるものが必ずあります。映像にはそれが映ると思うので、日本語の作品で日本の魅力を知ってもらいたいです」
滝藤「漫画やアニメは世界中で楽しまれているもの。今回の『幽☆遊☆白書』もそうだし、Netflixシリーズ『サンクチュアリ -聖域-』での相撲とか、時代劇とか。やっぱり日本人がやるからしっくりくるものってありますよね。日本独自の社会問題もたくさんあります。日本発にするなら、日本の文化、日本の良さ、日本社会における問題など、世界に通じるもので戦っていかなけばならないのかなって感じています」
綾野「配信サービスの広がりもあり、どの国もドメスティックをもう一度見直せるチャンスが来ていると思います。今回は漫画があって世界中の方々が作品を知ってくださっていることがすごく大きくて、背中を押していただいたと思います。Netflixシリーズ『サンクチュアリ -聖域-』で圧倒的なドメスティックを描いた作品を世界に届けるイメージが生まれたとも感じています。知り合いに海外の方がいるのですが、僕よりも日本のことを知っていたりするんです。そんな時、もっと身近なことを知っていく姿勢が大切だと気づかされます。だから、いまこそ日本のことをもっと知り学び、そして届けたい。まだまだここからです」
取材・文/タナカシノブ