吉岡里帆が『怪物の木こり』から感じた、時代へのメッセージ「人が人を簡単に決めつけてはいけない」
「三池監督は人間のきれいなものも、きれいじゃないものもすくいとってくれる方と感じます」
本作を経験して得たものについて聞いた際にも、三池監督の名前が。監督の魅力について「引き出してくださる」と、吉岡はこう話す。
「この作品に出演して、また三池さんの作品に出たいとすごく思いました。まだまだ出し切れていない感覚も正直あって、もっともっと三池さんの作品で、自分のなかでうごめいてるものを表現したいと思うんです。やっぱり、撮り方が本当におもしろいです。眠っていた感情を呼び起こしてくれる、そういう演出方法だし、そういう脚本作りをされる方なんです。人間のきれいなものも、きれいじゃないものもすくいとってくれる監督だと感じて、またご一緒できるように頑張りたいと思いました」。
「怪物と二宮が対決後に交わす最後の会話がこの映画の真骨頂だと感じました」
三池監督がすくいとる「人間のきれいなもの、きれいじゃないもの」。本作には、それがまさに濃縮されている。
「『怪物の木こり』は一見、サイコパスと連続殺人鬼が対峙するアクション・バイオレンス映画に見えるんですけど、実際はものすごく濃い人間ドラマ。自分が出ていないシーンなんですが、怪物と二宮が対決後に交わす最後の会話が私はすごく好きです。そこが、この映画の真骨頂だと感じました」。
冒頭、映美について「表面上ではわからない」という点を大切に演じたと語った吉岡。本作から受け取ったメッセージにも、映美を演じた吉岡ならではの視点がうかがえる。
「人が人を簡単に決めつけてはいけないというところが、この作品の大きなテーマだと思います。わかったような顔で、人と向き合ってはいけないというか。“本当にその人のことをわかってそんな強い言葉を、相手が悲しむような言葉を発したのか”と思ってしまうことが、いまの時代は多いなと感じるんです。だけど人には多面性があって、ちゃんと対峙した人にしかわからない“その人”がある。いまの時代にぴったりなメッセージがある作品だと思います」。
取材・文/新亜希子