映画『デデデデ』でW主演!幾田りら&あの、初共演前から惹かれていた互いの魅力とは「すごく正解を叩き出す人」
「浅野さんから、『そのままでやってほしい』と言われた」(幾田&あの)
――歌手でいらっしゃるお2人が、歌とは別の“声”という形で感情表現を行うアフレコで苦労したことはありますか?
あの「うーん…ディレクションというディレクションがなくて、浅野さんは『あのちゃんが思うままにやってほしい』と言ってくれたので、声のお芝居は初挑戦だったのにすごくやりやすかったんです。一つ苦戦したことを挙げるなら、凰蘭ちゃんのしゃべり方。ぼくの生活にはないスピードの早口なんですよ(笑)。難しい言葉をいっぱい使って饒舌に話すことに慣れていなくて、最初はちょっと苦戦しました。でも、やっていくうちに癖になっていく感じがあって、楽しかったです」
幾田「私も初めて浅野さんにお会いした時、『役を作って門出に入るのではなく、幾田さんが思う門出をそのままやってくれたら、それが門出になると思います』と言ってくださったんですね。なので、あまり作り込みすぎずに、私が感じる門出をやっていこうという気持ちでいました。ただ、難しかったのは、言葉の裏に隠された本音を頭で思い描きながら話していくのはかなり大変で…。発する言葉と背景にある感情の塩梅を意識して、いろんなことを試しながらお芝居をしました」
――逆に、アーティスト活動とはまた違う声の表現に楽しさは感じましたか?
幾田「自分ではない誰かの人生になって、誰かとして生きることはすごく楽しかったです。普段やっていないからこそ、素直に演じることの楽しさを感じることができました。誰かの中で生きると遊び心も生まれてきますし、それもまたおもしろかったですね」
あの「幾田さんがおっしゃるように、自分ではない誰かとして生きること、しかも凰蘭というすごく愛おしいキャラクターに入って物語の中で生きることが楽しかったですね。アフレコの期間は何事にも代えがたいくらい、やりがいを感じました」
「運動神経がいいから、息が合うのは早かった」(幾田)
――共演が決まる前、お互いにどのような印象を抱いていましたか?
幾田「あのちゃんがリリースされている楽曲を聴いた時、すごく音楽と真摯に向き合ってきた人なんだと感じました。特に衝撃を受けたのが、THE FIRST TAKEの『ちゅ、多様性。』と『普遍』。どちらも違う表現で、心の中の弱い部分をさらけ出して歌っているのを見て、すごいシンガーだなと感動しました。同じ歌い手として、その姿にすごく惹かれました」
あの「幾田さんはすごく正解を叩き出す人。詞に感情を乗せる歌い方がすごくお上手なイメージがありました。だから、これだけ歌詞が人に届くんだろうなと思っていて。そう感じてきたから、声のお芝居もめちゃくちゃ上手なんだろうなと感じていました」
――実際にお互いのお芝居を聞いてみて、いかがでしたか?
幾田「すごくハマっているなと思いました。一方で、私が演じる門出とあのちゃんが演じるおんたんがどんな風に掛け合いをするのか、最初は想像ができなかったんですね。なので、あのちゃんが出演されているTV番組をたくさん見て、どんな人なのかリサーチしながら、どんなおんたんで掛け合いをするのか想像しました。おんたんと出会って門出は変わっていくからこそ、私もあのちゃんからいい意味で影響されていきたいとたくさん調べました(笑)」
あの「(笑)」
幾田「実際にお会いして話してみると、いろんなメディアに出られているあのちゃんそのままでしたね」
あの「幾田さんの門出は、めちゃくちゃ門出でした」
幾田「うれしい…」
あの「幾田さんの門出を初めて聞いた時、『あー!』ってなりました。めちゃくちゃナチュラルなのに、門出になっている。幾田さんは運動神経がいいらしいのですが(笑)、そういうところも含めてすごく器用な方だなと思いました」
幾田「お互いの共通点が、足が速いとか“運動神経が割といい”ということなんです。運動神経がいいのもあってか、息が合うのが早かったなと思います(笑)。また、アフレコをしていると、この門出とおんたんの会話がいつまでも続いていたらいいなと思うんですよ。いつもハッピーで、おちゃらけていて、たわむれ合っている、絶対的な2人の関係性がグッとくるので、そこはぜひ注目して見てほしいなと思います」
あの「そうですね。門出と凰蘭の掛け合いは本当にたわいもないのに、この作品においてすごく大事な気がしています。観客の人たちにも、楽しんで観てほしいなって思いました」
「1番の魅力は(凰蘭の兄)ひろしです(笑)」(あの)
――最後に、お2人が感じる劇場版『デデデデ』の魅力を教えてください。
幾田「コロナ禍を通じて現代となっては、『デデデデ』で起こることはあり得ない話ではなく、自分のすごく身近に起こり得る話だと思うんです。そんな世界が変わる大きな出来事に対して、主人公以外の視点が描かれるのが、この作品の魅力です。私自身、自分の死生観や自分を取り巻く世界や環境を見つめ直すきっかけにもなりました。きっと観ていただいた皆さんも同じことを感じるのではないかと思います」
あの「いま、当たり前のように流れる時間について考えさせてくれる、刺激を与えてくれる作品だと思います。だからこそ、絵や動きはすごくかわいいのに、どことなく一瞬怖くなる時があるんですよね。そんなかわいさだけではないところが、すごく魅力的だと感じます。めちゃくちゃ入り込んで観てもらえるのではないかなと思っています。あと、ぼくはひろし(中川ひろし、凰蘭の兄)がめっちゃ好きで…」
幾田「えーー!私もめっちゃ好き!」
あの「ひろしが現実にも現われてほしいと思っています(笑)」
幾田「いてほしい!いつも導いてくれるし、絶対的な味方だと思わせてくれるキャラクターなんです」
あの「そこが一番の魅力かもしれないですね(笑)」
取材・文/阿部 裕華