いま観始めるならMCUではなく“BCU”!?密かに盛り上がりを見せるインドネシアのヒーロー映画とは|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
いま観始めるならMCUではなく“BCU”!?密かに盛り上がりを見せるインドネシアのヒーロー映画とは

コラム

いま観始めるならMCUではなく“BCU”!?密かに盛り上がりを見せるインドネシアのヒーロー映画とは

インドネシア初のスーパーヒーローを題材とした『スリ・アシィ』が12月15日より公開となった。本作はインドネシアのエンタメ企業ブンミラゲットが、MCUに倣って開始したBCU(ブンミラゲット・シネマティック・ユニバース)作品として制作されたもの。この動きからもわかるように、実はいまインドネシアのヒーロー映画界隈が密かな盛り上がりを見せていることをご存知だろうか?

インドネシア初のスーパーヒーローを再映画化!

【写真を見る】インドネシアのヒーローを扱う、MCUならぬ“BCU”って知ってる?(『スリ・アシィ』)
【写真を見る】インドネシアのヒーローを扱う、MCUならぬ“BCU”って知ってる?(『スリ・アシィ』)[c]2022 SCREENPLAY BUMILANGIT PRODUKSI. All Rights Reserved.

“インドネシア漫画の父”と呼ばれるR. A. Kosasihによる同名コミックスに登場する女性ヒーローの活躍を描く『スリ・アシィ』。インドネシア初のスーパーヒーローであり、キャラクターの誕生と同じ1954年にはすぐさま『Sri Asih』という映画が作られるなど、原作コミックはエポックメイキングな作品として本国では知られている。

火の女神の復活を阻止すべく戦うことになる(『スリ・アシィ』)
火の女神の復活を阻止すべく戦うことになる(『スリ・アシィ』)[c]2022 SCREENPLAY BUMILANGIT PRODUKSI. All Rights Reserved.

それから70年近くの時を経て新たに作られた今回の映画は、ヒーロー、スリ・アシィの誕生を描くもの。ジャワ島のムラピ山が噴火し、若夫婦が事故で亡くなってしまう。死の間際に生まれた女の子アラナ(ペフィタ・ピアース)は、孤児院で正義感の強い少女に育ち、いまでは格闘家として活躍するが、その一方で激しい怒りに悩まされていた。そんなある日、謎の組織の2人組と出会ったアラナは、自らが伝説のヒーロー“スリ・アシィ”だという運命を知る。

スリ・アシィこと主人公アラナを、インスタグラムのフォロワー1800万人超の人気女優、ペフィタ・ピアースが演じる(『スリ・アシィ』)
スリ・アシィこと主人公アラナを、インスタグラムのフォロワー1800万人超の人気女優、ペフィタ・ピアースが演じる(『スリ・アシィ』)[c]2022 SCREENPLAY BUMILANGIT PRODUKSI. All Rights Reserved.

インドネシアで大きな影響力を持つウピ監督がメガホンを握り、人気女優ペフィタ・ピアースが主演。さらにそのほかのキャストもインドネシアのトップスターを配し、映像もCGIを多用するなど、伝説的コミックを気合いを入れて映像化した『スリ・アシィ』。

というのも、インドネシアのブンミラゲットが、自社でライセンスを持つキャラクターコンテンツを映画化した本作は、BCUとしてシネマティック・ユニバース化した2作目。勝負の1作として盤石の布陣が敷かれると、海外の賞レースにも出品されるなど話題を集めた。


続々と作品をリリース中のBCUがいまアツい!

BCU第1弾作品となった『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』
BCU第1弾作品となった『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』[c] Well Go USA / Courtesy Everett Collection

そんな『スリ・アシィ』に先立ち、記念すべき第1弾としてBCUの口火を切ったのが、1981年に一度映画化されたことのある「Gundala」というコミックスを原作とした『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』(19)だ。『呪餐 悪魔の奴隷』(22)で本国3位の興収を記録したヒットメーカーで、エグゼクティブ・プロデューサーとしてBCUのすべての作品に関わるキーマン、ジョコ・アンワルが監督を務めた。

雷に打たれたことで特殊な力を手に入れた男がヒーローとなる(『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』)
雷に打たれたことで特殊な力を手に入れた男がヒーローとなる(『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』)[c] Well Go USA / Courtesy Everett Collection

インドネシアの人気俳優アビマナ・アルヤスティアが主演を務める(『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』)
インドネシアの人気俳優アビマナ・アルヤスティアが主演を務める(『グンダラ ライズ・オブ・ヒーロー』)[c] Well Go USA / Courtesy Everett Collection

貧困地域でストリートチルドレンとして育った青年が、雷に打たれたことで特別な力を身につけ、地域を守るべくヒーロー、グンダラとしてマフィアや殺し屋といった悪に立ち向かっていく様を描いた本作。少なくとも300億ルピア(約2億8000万円)というインドネシア映画では巨額の制作費が投じられ、その制作費を上回るヒットを記録した。

また2023年3月には、ヒーローパワーを持つティーンエイジャーの少女の活躍を、ロマンス要素も織り交ぜながら描いたWEBコミックを原作とする第3弾『Virgo and the Sparklings(原題)』も本国で公開されたばかり。

さらにドラマシリーズ「Tira(原題)」もDisney+ Hotstarで今月から配信が開始され、その関連作となる『Godam & Tira』も2024年の公開を控えるほか、多くの作品が待機中。勢いに乗りだしただけに、まだ序盤のいまこそチェックしておきたいコンテンツとなっているのだ。

別の出版社が展開するスカイラー・ユニバースも存在!

また、インドネシアにはスカイラー・コミックという出版社もあり、こちらもユニバース構想の1作目として『ヴァレンタイン ヒーロー誕生』を2017年にリリース。この作品は女優を目指すシラットの使い手の女性が、ヴァレンタインというヒーローとして自警団活動をしていくというもので、話やキャラのルックなどが『キック・アス』(10)を彷彿とさせるものとなっている。

その後は、映画からWEBシリーズへとフィールドを移し、コミック風アニメシリーズ「Valentine Motion Comic」(22)や「Sakti(原題)」(22)といった作品を制作。数々の作品が待機中となっている。今後、劇場版が作られることになるのか、気になるところだ。

このように日本ではまだまだ知られていないが、密かな盛り上がりを見せるインドネシアのヒーロー映画界隈。その筆頭であるブンミラゲットは、1000以上のキャラクターを抱えており、今後もさらに世界観を拡大していくこと間違いなし。MCUフィーバーに乗り遅れてしまったという人も、BCUならまだまだ序盤なので、まずは『スリ・アシィ』をチェックしてみてはいかがだろうか?

『スリ・アシィ』は公開中
『スリ・アシィ』は公開中[c]2022 SCREENPLAY BUMILANGIT PRODUKSI. All Rights Reserved.

文/サンクレイオ翼

関連作品