「長澤まさみのすべてがこのなかにある」三谷幸喜監督、最新作『スオミの話をしよう』“5つの顔”を笑いを交えて解説!
三谷幸喜監督が12月13日、TOHOシネマズ日比谷で行われた最新作の製作報告会に出席。長澤まさみを主演に迎えた最新作『スオミの話をしよう』が2024年9月13日(金)より公開となることが発表された。長澤への並々ならぬ信頼感を口にした三谷監督が、「長澤まさみのすべてがこのなかにあると言っても過言ではない」と彼女の魅力を存分に盛り込んだと自信をのぞかせた。
本作は『記憶にございません!』以来5年ぶり、映画監督作品としては9作目となる三谷監督の最新作。突然行方をくらませた大富豪の妻、スオミ。スオミの失踪を知り、夫が住む豪邸に集結したのは彼女を愛した5人の男たち。彼らが語るスオミのイメージはそれぞれ見た目も性格も、まったく異なるものだった。一体スオミの正体とは?一つの屋敷を舞台に、三谷監督の真骨頂とも思えるサスペンス・コメディが繰り広げられる。昨年の暮れにプロットを書き始め、今年8月にクランクインしたという。
主人公のスオミを演じるのは、長澤まさみ。三谷作品には、脚本を務めたテレビドラマ「わが家の歴史」に出演以降、三谷作・演出の舞台「紫式部ダイアリー」で主演を務め、大河ドラマ「真田丸」への出演や「鎌倉殿の13人」では語りを務めるなど、三谷からの信頼は厚い。長澤の三谷映画への出演は、本作が初めてとなる。
「映画の話をする時に、この映画はコメディだとか、ミステリーだとか、恋愛ものだとか、そういったことを作った側が言うのはちょっと違うような気がしている。お客さんが観て判断することだと思う」と切りだした三谷監督は、「この映画には5つの顔があります」とコメント。「まず本作は、ミステリーです」と自身の発言とは裏腹にジャンルを掲げ、さっそく飛びだした三谷節に会場も大笑い。「大富豪の奥さん、スオミが突然いなくなる。誘拐事件なのか家出なのかわからない。大富豪はことを大きくしたくないため、自分の知り合いの警察官に極秘で捜査をしてくれと頼む」とストーリーを解説した。
2つ目の顔は「コメディ」だといい、「僕はコメディしか作らない人間です。『鎌倉殿の13人』はシリアス側に描きましたが、笑いの要素もあって。自分が作るものは、皆さんに笑ってもらうことが大前提だと思っています。スオミを愛する男たちが集結して、誰が一番スオミを愛していたかとマウントを取り始める。そういった展開になります」とにぎやかなやり取りが予想されるが、「5人の夫はキャラクターも多彩。出演してくれた俳優さんたちもすばらしい方ばかり」とキャスティングにも大満足。夫役はまだ秘密にしなければいけない様子で「僕の作品にあまり出てこなかった俳優さんたち。佐藤浩市は出ていない。中井貴一も、西田敏行さんも出ていない。これでだいぶ狭まった」と話し、再び会場を笑わせていた。
3つ目の顔は「恋愛。5人の男たちが自分とスオミの思い出を語る。いろいろな愛の形が見えてくる」とのこと。そして三谷監督が「もっとも大事な顔だ」と言う4つ目の顔が、「長澤まさみ作品」であることだ。「おそらくいまの日本映画界でもっとも力があって、輝いている女優さんだと思います。彼女のコメディエンヌとしての輝きも含めて、いま現在の長澤まさみさんの魅力をスクリーンに収めたかった。長澤さんファンの方には『こんな長澤さんが観たかった!』ときっと思ってもらえると思います」と力強く語った。
脚本の段階から、スオミ役には長澤を想定して書いたという三谷監督。長澤の魅力について聞かれると、「長澤さんにははっちゃけたイメージもあるけれど、実はすごく繊細なお芝居をする方。舞台をやった時にも感じた。ご本人がすごく真面目で、役を掘り下げていく。セリフ一つ一つも自分が納得いくまで繰り返す。僕がこれでOKだと思っても、『もう一回お願いします』ということもあります。それくらい意気込みがある方」とその誠実さを証言。「コメディエンヌであると同時に、とても芝居上手。今回の役はとても難しい役。5人の男たちが思いだすスオミの印象が、それぞれ違う。そういった複雑な役を、僕の思っていた以上に演じてくださった」と称えつつ、「こういう長澤さんを、皆さんに見てほしかった。長澤さんはエンターテイナー的なものを持っているので、ちょっとだけ歌うシーンや踊るシーン、アクションもある。長澤まさみのすべてが、このなかにあると言っても過言ではない」と熱を込めた。
そして5つ目の顔について、「三谷幸喜作品。僕にとって9本目の映画。毎回試行錯誤を繰り返していますが、今回は手応えがあります。カンヌ、ベネチア(国際映画祭)には縁のない作品ですが、いまの日本のお客さんには必ず楽しんでもらえる作品になっていると思う。原作もない、アニメでもない、テレビが元になっているわけではない完全オリジナル作品」と語った三谷監督。「僕のバックボーンは演劇だと思っている」と前置きしながら、「舞台と映画の違いというのは、どれだけたくさんの人が観てくれるかということ。どれだけ舞台をロングランしても映画を観てくれる人にはかなわない。また映画はいい形に残れば、永遠に楽しんでもらうことができる媒体。そこには憧れがあります」と胸の内を明かし、多くの人に観てもらえる場所だからこそ、「僕が映画を作るときはできるだけたくさんの人が喜んでくれる、楽しんでくれることが大前提」だと改めてモットーを話していた。
また同日に行われた「2024年東宝配給作品ラインナップ発表会見」では、本作以外にも東宝が送りだす今後のラインナップが明らかとなった。シリーズの最新作やベストセラー原作の映画化、期待のアニメーション作品など、強力なラインナップがズラリ。来年も大いに映画館をにぎわせつつ、新たな大ヒットが生まれそうだ。