「ワンダーハッチ」「ガンニバル」プロデューサーが語る、世界へ発信するためのクリエイティブ「日本の文化でしか語り得ない物語がある」
「実写とアニメがそれぞれの世界を補完し合い、独自の世界を作り上げている」
こうして万全な下準備と最高のスタッフ、キャストで臨んだ本作の撮影は4か月に及んだと言うが、“実写”と“アニメ”で2つの世界を描く前例のほとんどない挑戦した山本は「僕らが最初に熱望した、新しいストーリーテリングの映像作品に到達していると思います」と胸を張る。「実写とアニメがそれぞれの世界を補完し合い、それぞれの語り口で埋め合い、独自の世界を作り上げている印象があるんです。この両方がないと多分伝わらない物語だったと思うし、その新しい感覚を楽しんで欲しいなと思いますね」。
本作にはナレーションや字幕での説明が一切なく、そこにも制作陣の潔さと前のめりのスタンスが感じられる。山本は「そこは最後まで悩みましたね」と複雑な表情を浮かべながらも、「思い切りました」と語気を強くする。
「ナレーションや説明字幕を入れると、物語の勢いや観た人が想像しながら自分のなかに蓄積していく作業の妨げになるような気もしました。それに、第4話のラストを脚本で読んだ時に、観た人がこの物語を最後まで見届けようといった覚悟みたいなものを持ってもらえるような気がして。編集の段階でそれが、ナレーションや字幕がなくてもおもしろいと思ってもらえるという確信に変わったんです」。
「日本の風土で生きてきたからこそ語れるものが必ずある」
山本が関わったサイコスリラー「ガンニバル」は、韓国、釜山で開催された「アジアコンテンツ&グローバルOTTアワード」で、主演の柳楽優弥がアジアエクセレンスアワードを受賞するなど世界的に評価された。その経験も、世界に向けて同じように配信される「ワンダーハッチ」には反映されているのだろうか?すると、新しい物語を紡ぐことに挑戦する山本から、「日本の文化でしか語り得ない物語があると思うんですよ」という、思いがけないシンプルな答えが返ってきた。
「例えば、小津安二郎監督の『東京物語』はいまでも世界中の新しい映画人たちに驚きを与えていますよね。それと同じように、日本の風土で生きてきたからこそ語れるものが必ずあると思っています。それを意識すること、自分たちの語りを信じることと世界に向かって語りかけることはイコールのような気がするんです。『ワンダーハッチ』も『ガンニバル』もそのことを明言しているわけではないけれど、両作の監督や脚本家たちとはその共通認識を持っていて。あとは、いまの世界に対して自分たちがなにを感じ、どう思い、その気持ちを乗せた物語を発信していくしかない。魂を削るように、みんなで一生懸命考え、作りだしていくしかない。凝り固まった価値観を粉砕し、新しいものを生みだしていくには話し合い、考え続けるしかないんです。語り口や題材、見せ方は全然違うけれど、『ワンダーハッチ』と『ガンニバル』はそこの部分でどこか奇妙にも通じるものがありました」。
最後にディズニープラス「スター」の今後の展望と可能性について聞くと、山本の言葉がさらに熱を帯びた。
「『スター』の日本のローカルコンテンツではこれまでディズニーが挑戦してこなかった、表現の豊かさみたいなものにチャレンジしていく作品づくりをしています。幅広いジャンルのコンテンツラインアップなので“ゼネラル・エンターテイメント"と弊社では言っていて、『ワンダーハッチ -空飛ぶ竜の島-』もその1本。『スター』では今後もそこに挑戦し続けていきますし、『これをやるんだ?』という驚きの企画も用意しているので、ぜひ楽しみにしていてください」。
取材・文/イソガイマサト