「五等分の花嫁」シリーズ構成が語る、春場ねぎの描くキャラクターの奥行き!最新作「戦隊大失格」の注目ポイントは?
「『五等分の花嫁』であれだけ成功された方が、次にどういうものを描かれるのか気になっていたら、まったく違うジャンルで驚きました。大得意なラブコメディではなくヒーローもの、アクションものに挑まれた。それってかなり勇気がいることなのに、それでも挑戦したいと思われたのだと考えながら連載を読み始めました」。アニメ「五等分の花嫁」のシリーズ構成を務めた大知慶一郎は、春場ねぎが同作のあとに手掛けた「戦隊大失格」との出会いを振り返る。
週刊少年マガジンで2021年より連載がスタートした「戦隊大失格」は、毎週末に地上侵攻を繰り返しては破れ散る怪人たちの下っ端戦闘員として戦う戦闘員Dと、ヒーロー像とはかけ離れた竜神戦隊ドラゴンキーパーとの戦いを描く異色のヒーロー作品。2022年12月にテレビアニメ化が発表され、監督には「TIGER & BUNNY」のさとうけいいち、アニメーション制作を「アークナイツ」シリーズのYostar Picturesが担当。大知もシリーズ構成・脚本として携わることに。
「説明は極力短く、段取りも極力短く、感情が伝わりやすいようにしっかり書く」
「ストーリーが複雑に入り組んでいて群像劇に近い作品です。悪の怪人が主人公という独特な構図のため、初めて観る人には難しく感じてしまうかもしれない。そう思い、この世界では正義であるはずの戦隊のほうがひどい存在であると早々に印象付けるために、序盤はレッドキーパーに焦点を置くことにしました」と、大知は本作ならではの構成のこだわりを明かす。
そして「さとう監督はアクション描写が得意で、第1話から戦闘ショーとしてのアクションを見せたいとおっしゃっていたため、構成も最初からインパクトを持たせようと考えました。初回から“戦隊の戦いは茶番劇”という世界観をわかりやすく提示し、観る人を引っ張っていく。監督からは『僕はアクションをしっかり描くので、大知さんにはストーリーのテンポ感を上げてもらいたい』とお願いされました」。
その要望に応えるため、大知が意識したのは「説明は極力短く、段取りも極力短く、感情が伝わりやすいようにしっかり書く」ことだという。「セリフが多いシーンはどうしてもスピード感が落ちてしまう。でもアニメのいいところは絵の動きと演技で多くの情報を見せられること。説明的なシーンも顔の表情や言い回しなどで補完できるので、各話の脚本の方には『なるべくセリフ数は減らし、動きと展開で見せていきましょう』という方針を共有していきました」。
もちろん春場作品の魅力であるキャラクターの奥行きについても注意を怠らない。物語序盤のカギを握る夢子やレッドキーパーがなかなか“素”を見せないため、脚本に起こしていくうえで原作者の協力が必須となる。「春場先生に『夢子はなにが目的なんですか?レッドキーパーはなぜこんなにサディスティックなんですか?』と訊ねたところ、返ってきた答えは予想を遥かに超えていました。なにか引っ掛かる部分は先々の伏線になっていることが多い。なので先にあるストーリー展開まで確認する必要がありました」。