4Kレストアでさらに美しく妖艶に…“ソフトポルノ”を確立した『エマニエル夫人』はなぜ伝説となったのか
ピエール・バシュレによる印象的なテーマ曲で知られ、いまも女性たちの性的解放のシンボルとして語り継がれる伝説の傑作『エマニエル夫人』(74)。その公開50周年のメモリアルイヤーの到来にあわせ、『エマニエル夫人 4Kレストア版』『続エマニエル夫人 デジタルリマスター版』『さよならエマニエル夫人 デジタルリマスター版』のトリロジーが本日12月29日より劇場公開されている。
バンコク、香港、そしてセーシェル。世界をめぐるエマニエル夫人の愛の旅路
女性向けの“ソフトポルノ”という新たなジャンルを確立した本シリーズは、エマニュエル・アルサンの小説を原作に、外交官の妻であるエマニエル(シルヴィア・クリステル)が夫の赴任先で様々な人々と出会い、幸福でありながらも退屈な日常から性的に解放されていく姿を描いた物語。
第1作『エマニエル夫人』の舞台はタイのバンコク。パリから夫ジャン(ダニエル・サーキー)の元へ向かったエマニエルは、夫の同僚の伴侶たちの性的な明け透けさに驚きながらも、官能の渦へと飛び込んでいく。ビー(マリカ・グリーン)という考古学者と出会って彼女と束の間の逃避行を楽しみ、性の大家マリオ(アラン・キューニー)に導かれて愛のエキスパートになるべく性的洗練を受けることになる。
続く『続エマニエル夫人』(75)では香港へ赴任した夫へ会いに行ったエマニエルが、パイロットのクリストファー(フレデリック・ラガーシェ)との妄想をふくらまし、パーティで知り合った若い娘アンナ・マリア(カトリーヌ・リヴェ)に肉欲的な愛の快楽と繊細さを伝授していく。そしてセーシェル島に舞台を移した『さよならエマニエル夫人』(77)では、若い映画監督グレゴリー(ジャン・ピエール・ブーヴィエ)と出会いこれまでにない感情を抱いてしまうエマニエルの葛藤が描かれていく。
オランダでファッションモデルとして活動していたシルヴィア・クリステルは、本作をきっかけにスターダムを駆けあがり、その後も『華麗な関係』(77)や『プライベート・レッスン』(81)、『チャタレイ夫人の恋人』(82)と、エロティック路線を牽引。ハリウッドにも進出を果たし、大作パニック映画『エアポート'80』(79)やコメディ映画『0086笑いの番号』(80)などに出演するなど一時代を築きあげた。
その後再びクリステルを主演に迎えてシリーズ4作目の『エマニュエル』(84)が製作され、以後も続編やテレビシリーズなどの派生作が数多く作られてきた「エマニエル」シリーズ。なかでもこのクリステルが主演を務めた初期3部作は、“ウーマンリブ”が叫ばれた時代と重なったこともあって本国フランスをはじめ世界各国で大ヒットを記録。日本でも熱狂的なブームを巻き起こすこととなる。