VFXを使わない“オーガニック”な映画が流行のきざし?

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VFXを使わない“オーガニック”な映画が流行のきざし?

全編VFXとも言うべきジェームズ・キャメロン監督の3D映画『アバター』(09)のような新世代ムービーが注目を集める一方、むしろ“VFXを使わない”ことが売り(?)の映画もこのところ続々と登場している。もしかして、密かにVFX離れが進んでいるのだろうか!?

例えば、特殊メイクやミニチュアを活用した『スペル』(09)や、火事のシーンで実際に火をつけた『イングロリアス・バスターズ』(09)。『パブリック・エネミーズ』(09)の銃撃戦では実弾を撃ちまくり、『かいじゅうたちのいるところ』(1月15日公開)はフルCGになる予定だった“かいじゅう”をあえて着ぐるみにしたというこだわりだ。

とは言え、これらの作品が完全にVFXを拒絶しているわけではない。「CGを使った映像がリアルに“見える”のに対して、実際に撮影された映像はリアルに“感じられる”んだ」と語るのは『スペル』のVFXスーパーバイザー、マット・ジェイコブス。どんなにリアルに見えても感情を揺さぶらない映画はつまらないし、見た目がインチキでは感情も冷めてしまう。要は、視覚に訴える部分と感情に訴える部分をいかにブレンドするか。その点、体は実物・顔はCGの『かいじゅう〜』は見事なバランス感覚で大いに泣かせてくれる。

かつては、とにかく最先端の技術であれば話題になったVFXだが、これから先はテクノロジーの質よりも使い方──どこにどう入れるか入れないかというセンスが問われることになるだろう。【映画ライター/安藤智恵子】

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