森崎ウィン、母国ミャンマーの家族に伝えたい『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』でのラクスの長セリフ「届けたい相手が遠く離れていればいるほど響く」
テレビ放送から約20年の時を経て、「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」待望の新作『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開中だ。キラ・ヤマト役の保志総一朗、ラクス・クライン役の田中理恵、アスラン・ザラ役の石田 彰などおなじみのキャストに加え、今作にはアウラ・マハ・ハイバル役の田村ゆかり、オルフェ・ラム・タオ役の下野紘など新キャストが多数参加していることも話題となっている。
MOVIE WALKER PRESSでは、新キャストであるグリフィン・アルバレスト役の森崎ウィンにインタビューを敢行!前編ではガンダムシリーズに出演することへの想いなどを語ってもらったが、後編となる本稿では実際のアフレコでのエピソードや、感銘を受けたというラクスのセリフについてお届けする。
※本インタビューには『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』のネタバレとなる要素を含みます。未見の方はご注意ください。
「皆さんの声を聞いて、ただのファンになって喜んでしまいました(笑)」
「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」は、遺伝子を調整され生まれながらにして優れた身体能力や頭脳を持つ人類(コーディネイター)と、自然のままに生まれた人類(ナチュラル)の戦いを描いた作品。今作は、2004年から2005年に放送されたシリーズ2作目となる『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の約2年後の戦いが描かれている。いまだに続く戦いを沈静化するべく、 “世界平和監視機構コンパス”を設立し各地の戦闘に介入していたキラたちは、新興国ファウンデーションから、反コーディネイター団体である“ブルーコスモス”本拠地への合同作戦を提案される。
本作のアフレコは、メインキャストは前半と後半の2回に分け、少人数ごとに行われたという。森崎自身は一人で収録を行い、キラ役の保志総一朗などメインキャストが録り終えたものを聞きながら、それに合わせる形で行われたとのこと。
「福田監督とは、収録当日に現場で『おはようございます』と挨拶した時が初対面で、収録前に少しお話をさせていただいたうえで収録に臨みました。僕はほかの皆さんが収録したものを聞きながらだったのですが、皆さんの声を聞いて『おおっ!キラの声だ』と、ただのファンになって喜んでしまいました(笑)。グリフィンは『闇に落ちろ、キラ・ヤマト!』というセリフがあるのですが、『闇に落ちろ』なんて普段は絶対言わない言葉なので、『アニメの作品に携わっている』という実感が沸きました」。
「イライラがいい感じで声に乗って、グリフィンが追い込まれた瞬間の声として使われました」
アフレコブースで行われる声の演技と音響監督による演出は、映画やドラマの演出とは大きく異なり戸惑うことも多かったそうだが、そこは経験豊富な森崎。舞台や映像作品での演技経験やアーティストとしてのレコーディング経験なども活かされたという。
「歌の仕事なら『キーはこれで』『BPMはいくつで』『コードはこうで』など音楽をやっている人同士の共通言語があるんですけど、アニメのアフレコでディレクションしてもらう時の共通言語の知識が僕にはまだ無くて、すぐには理解できなかったので最初はちょっと大変でした。その代わりにいろいろな言い方で指示をしてくださって、例えば『ドスの効いた感じ』とか『相手を上から見下ろす目線で』『もっと空気圧がほしい』など、その指示を自分なりに解釈して頑張りました。喉や呼吸をどう使って声を出すのかも教えていただいて、『マイクに顔を近づける』とか『声帯をちょっと閉めながら話す』とか、『瞬間的に圧をかける』みたいな感じです。そういうところは歌にちょっと似ている気がして、音楽の現場に例えると『音遊び』に近いのかなと思いましたね。喉や体をどう使うかも、声優の演技の一端なのだなと知ることができました」。
なかでも印象的だったのはグリフィンの戦闘シーンで追い込まれた瞬間の声で、そこには独特な演出があったと話す。
「アフレコブースという密閉空間で、ヘッドフォンをしたまましばらく待たないといけない時があって。ブースの外では監督やスタッフのみんながなにかを話していて、どんな話をしているかもわからず、イライラして『うわ~』って叫びそうになったんです。でもそのイライラがいい感じで声に乗って、その後に録った声が、グリフィンが追い込まれた瞬間の声として使われていて、『こういう演出方法もあるのか!』って思いました(笑)。敢えて追い込むじゃないけど。これはあくまでも僕の主観ですけど、おもしろいなって思いました」。