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「ハイキュー!!」誕生から原作者・古舘春一の強みまで。初代担当編集に聞く、ふたりが歩んだ日々

インタビュー

「ハイキュー!!」誕生から原作者・古舘春一の強みまで。初代担当編集に聞く、ふたりが歩んだ日々

「古舘先生の根っこにあるのは、人間や物事に対する非常に誠実な観察眼と、すべてに対する細やかさ」

「ハイキュー!!」の魅力といえば、読者の胸に迫る生き生きとしたキャラクターたちと彼らから発せられる強いセリフ。それらはどのように生まれていったのだろうか?「古舘先生が漫画家になる前に働いていたデザイン事務所でスーパーのチラシのイラスト描いたそうなんですが、その時の上司にめちゃくちゃ怒られたらしいんです。『これはお前が描きたい絵であって、お客様に見せたいクライアントさんがほしいものじゃない』って言われて、めちゃくちゃ悔しかったんですって。怒られた後にたくさん描いて、ようやく最後に『これはちゃんとクライアントさん、お客様がほしい絵になってるね』と言われたみたいなんです」

すべてのキャラクターが魅力的なのも「ハイキュー!!」の特徴
すべてのキャラクターが魅力的なのも「ハイキュー!!」の特徴[c]2024「ハイキュー!!」製作委員会 [c]古舘春一/集英社

「その当時は悔しい思いをされたそうなんですが、『いまになって思えば、このことがお客様を意識した絵を描くことのスタートになった気がします』というようなことを先生はおっしゃってましたね。そもそも先生は絵がうまくてセリフも強いし、演出も上手で…凄まじいパラメーターを持っている作家さんだと思うんですよ。その根っこにあるのは、人間や物事に対する非常に誠実な観察眼と、すべてに対する細やかさという気がしますね。キャラクターが薄っぺらいとかバレーボールに対する扱いが薄っぺらいとかそういうことがなく、軽んじているようなところがまったくないんです」。

「古舘先生もアニメーションのことをすごく信頼してくださっている」

そうして誕生した漫画「ハイキュー!!」はTVアニメとなり、そして劇場版になった。物理的に動くことのない漫画から、音も動きもついてさらに大スクリーンへ。「先生は喜んでらっしゃいましたね。アニメーションのことをすごく信頼くださっていて、『アニメーションが一番いい形だといいと思います』というふうに常々おっしゃってくださっているので」

原作者の古舘春一もアニメーション化を喜んでいたとのこと
原作者の古舘春一もアニメーション化を喜んでいたとのこと[c]2024「ハイキュー!!」製作委員会 [c]古舘春一/集英社


「やっぱり、媒体が異なれば表現の最適解は変わってくるので。漫画だったらこの表現でOKだけれども、でもそれはアニメーションの時間に置き換えたらそんなに長く割けないよねとか、本来出したかったニュアンスが出せないなら、違う形でそのニュアンスを出せる方法を考えるべきだと思うんです。それは『ハイキュー!!』の根っこみたいなところを違う媒体で表現をするという意味においてやるべきことで、原作漫画の構成をそのままにすること=原作を大切にしていることでは決してないはずなんです。原作はかなり情報量が多い漫画だなと思うので、アニメになると、スピード感を出しながら、かなり絞っていく作業が多かったのかな、と。理想はTVアニメや劇場版で『ハイキュー!!』を観た時に、原作漫画が再現されていると受け取ってもらいつつ、実はよく見たら表現が変わっているというのが一番ですよね」。

取材・文/編集部

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