東京の下町の風景に魅了される…ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』のロケを台東区フィルム・コミッションに聞いてみた!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
東京の下町の風景に魅了される…ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』のロケを台東区フィルム・コミッションに聞いてみた!

インタビュー

東京の下町の風景に魅了される…ヴィム・ヴェンダース監督作『PERFECT DAYS』のロケを台東区フィルム・コミッションに聞いてみた!

ドイツの名匠ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主役に迎え、東京を舞台にトイレ清掃員の男が送る静かな日常を見つめた映画『PERFECT DAYS』(公開中)。第96回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされ、ヴェンダース監督作品史上最高の興行収入を記録し、ロングラン上映が話題となっている。日本を代表する建築家やクリエイターによる美しいトイレがロケ地として印象的だが、役所演じる平山の住まいがある東東京の風景も味わい深く映しだされる。撮影エリアのひとつとなった台東区のフィルム・コミッションを担当する平田大輔から、ロケ地の秘話や活動の展望などについて話を聞いた。

ロケハンで“木”にこだわったヴェンダース監督

最初に台東区フィルム・コミッションに『PERFECT DAYS』の話がやってきたのは2022年6月。「昭和の雰囲気が残る場所」というオーダーのもと、台本という台本がないなかでロケ地候補を選別していった。「通常は台本を読んで、私の中でも想像してロケ地をご紹介します。ただこちらから『台本がほしい』なんてごちゃごちゃ言って、台東区での撮影は面倒だと思われたくなかったので、内容を大まかに把握した状態でスタートしました。ヴィム・ヴェンダース監督の撮影に関われることなんてそうそうないことですから、絶対に台東区で撮影してほしいと思っていました」と振り返る。

『PERFECT DAYS』のヴィム・ヴェンダース監督も浅草のシンボル、浅草寺へロケハンに訪れた
『PERFECT DAYS』のヴィム・ヴェンダース監督も浅草のシンボル、浅草寺へロケハンに訪れた[c]2023 MASTER MIND Ltd.

その後、来日したヴェンダース監督と共に数日間にわたって台東区内をロケハンした。「なかでも“木”にこだわりがあるのを感じました。特に浅草寺の古い木は気に入ったようで、この木は撮影できないのか?などいろいろと質問されていました。今回は残念ながら撮影には至らなかったですが」と明かす。

平山が自転車で駆け抜けた桜橋は何度も劇中に登場する
平山が自転車で駆け抜けた桜橋は何度も劇中に登場する[c]2023 MASTER MIND Ltd.

ロケハンの末、台東区で撮影が行われたのは4か所。まず1か所目は、平山が浅草方面に向かう際に自転車で通る、台東区立隅田公園の桜橋(台東区今戸1-1)。墨田区と台東区の間を流れる隅田川に架かるこの橋での撮影は、夜間でも撮影が可能な台東区側で行われた。というのも、通常フィルム・コミッションは自治体や観光協会が運営するところ、台東区フィルム・コミッションは民間運営であることから、夜間の撮影にもすべて立ち会うといった臨機応変な対応ができるため。「長い時間をかけてルールを見直し、住民の皆さまからも信頼を得ながら、ようやく夜間も撮影ができるようになりました」というエピソードから、台東区フィルム・コミッションのこれまでの実績と制作者に寄り添う柔軟な対応力がうかがえる。桜橋では5日間撮影が行われ、夕暮れの美しい風景などが収められた。

東京メトロ銀座線、浅草駅改札近くにある「福ちゃん」。ヴェンダース監督もひと目で気にいったとか
東京メトロ銀座線、浅草駅改札近くにある「福ちゃん」。ヴェンダース監督もひと目で気にいったとか[c]2023 MASTER MIND Ltd.

2か所目は、平山が銭湯のあとに晩酌をする浅草地下街の「福ちゃん」(台東区浅草1-1-12)。昭和の哀愁漂うこの場所は、ヴェンダース監督もひと目で気に入ったそう。「『福ちゃん』のすぐ横が東京メトロ銀座線の改札なので、午前中の人が少ない時間帯に撮影しました」と解説。また、撮影が行われた2022年10月は秋雨前線が到来し、急な雨に襲われることも多々あった。カッパ姿の平山が浅草地下街に駆け込んで行くシーンは、急遽雨の設定に切り替えられたシーンだという。「撮影期間も短かったので柔軟に変更されたのだと思います。雨のおかげでスカイツリーがすごくきれいに映しだされていて感動しました」と笑顔で述懐する。

3か所目は平山が通う古本屋「地球堂」(台東区浅草1-39-9)、4か所目は石川さゆり演じるママのお店「紅の灯ノヴ」(台東区浅草4-16-4 トドロキマンション1F ※会員制)。本屋も居酒屋もいくつかロケハンしたなかで、ヴェンダース監督がこの店を選んだという。両店とも、店名も内装もほぼそのままの状態で撮影されている。

古本屋「地球堂」での撮影に挑む、ヴィム・ヴェンダース監督
古本屋「地球堂」での撮影に挑む、ヴィム・ヴェンダース監督[c]2023 MASTER MIND Ltd.

台東区の魅力は海外の映画監督まで広がる

『PERFECT DAYS』の反響は大きく、公開後はロケ地巡りをしている人をSNSで多数見かける。それだけでなく、海外からはロケハンの問い合わせがあったという。「先日はマレーシアの映画監督から、『PERFECT DAYS』を観て台東区を選んだといううれしいご連絡をいただき、うちの外国人スタッフが1日かけて台東区をご案内しました」と笑顔を見せる。台東区フィルム・コミッションには外国人スタッフもいるので、英語での対応によってよりスムーズに海外のチームとやりとりができるのも強みだ。


『PERFECT DAYS』で平山が通うママの店「紅の灯ノヴ」も店名そのままで実在する
『PERFECT DAYS』で平山が通うママの店「紅の灯ノヴ」も店名そのままで実在する[c]2023 MASTER MIND Ltd.

コロナ前は海外からの撮影実績が年間100~200件ほどあったが、一度ゼロになってしまったという。ここ最近でようやく問い合わせが戻りつつあるなかで、海外案件を取り戻すための施策も打ち始めた。『PERFECT DAYS』のオープニング作品を飾った東京国際映画祭と併催されるコンテンツマーケット、TIFFCOMへの参加もそのひとつ。海外のメディアや制作者に、台東区の魅力を伝える資料を配布し営業活動を行った。


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