三池崇史監督が“全編iPhone”の映画撮影に確かな手応え!主演・賀来賢人も「いよいよここまで来た」と興奮
三池崇史監督が“全編iPhone”で撮影し、手塚治虫の隠れた名作を実写化したApple制作ショートフィルム『ミッドナイト』のプレス向けプレミア試写会が 3月6日にLUMINE 0(ルミネ ゼロ)イベントホールで開催され、賀来賢人、加藤小夏、小澤征悦、三池監督が登壇。iPhoneでの撮影に対する、確かな手応えを語った。
本作は、iPhoneのみを使って写真や映像を撮影する企画「iPhoneで撮影 - Shot on iPhone」の一環として全編iPhoneで撮影されたショートフィルム。手塚治虫最後の週刊少年漫画誌連載作品で、隠れた名作と言われる「ミッドナイト」を三池監督の監督によって初めて実写化。夜の東京を舞台に、夜にしか現れないはぐれもののタクシードライバー“ミッドナイト”(賀来)が、デコトラを運転する少女カエデ(加藤)と出会い、彼女のために“第5の車輪”を持つ改造タクシーでのカーチェイスを繰り広げる。この日は登壇者陣も会場と一緒に本編を鑑賞したのち、ステージに上がった。
iPhone 15 Proで、激しいアクションも交えたスピード感あふれる映画を撮り上げた三池監督は「再デビューというか、新しい気持ちで撮影に臨むことができた」と充実感たっぷり。オファーを受けた当初は「無茶なことを考える人がいるなと思った」と笑いながら、「普段からiPhoneを使っていて。どんどん進化していて、日常的に使っていて感心する。ロケハンとか行っても全部それで撮っちゃう。iPhoneに支えられて現場までたどり着く」とこれまでの映画制作においてもiPhoneは大活躍していたという。続けて「今回はそれを中心に持ち込む。技術的になにができるかという検証をいろいろやった。想像以上にいい感じだった。自分にこびりついた概念がぼろっと崩れていった」と吐露しつつ、「20歳の時に助監督になったんですが、初めて行った現場が加山雄三さんの『ブラックジャック』。あっという間に月日が流れて、43年経って。自分が手塚先生の連載作品の監督をできる。しかもiPhoneで。個人的にはとても感慨深い」と特別な想いもあったと打ち明けていた。
オファーを受ける決め手について「ワクワクを大事にしている」という賀来は、「AppleさんがiPhone 15 Proのみで、三池さんが手塚さんの作品を撮る。4つもワクワク要素があって、てんこ盛り。即、『やりたい』と言ったのを覚えています」と回顧し、「それくらいチャレンジングな企画。いま完成作を観て、参加してよかったなと思う」と高揚感を告白。そしてiPhone 15 Proを使用しての撮影はたくさんの発見や驚きがあったと、それぞれが口を揃えた。
賀来は「iPhoneのサイズ感にしか出せないアングルの入り方がある。(車に乗り込んだ自分の)アクセルの真横の位置まで入り込める。普通だったらカメラが絶対に入り込めない位置。これは画期的。よりパーソナルなところを切り取れるのが、iPhoneの撮影の強みだと発見した」とコメント。これまでの撮影ならば、キャラクターが疾走するシーンなどは、大きなカメラを積んだ車が俳優と並走する形で撮影に臨むことが多いが、走るシーンがあった加藤は「今回はカメラマンさんがiPhoneを持って、(隣を)全速力で走っていた。これは初めての経験でしたし、完成した作品を観てもすごくきれいで手ブレもしていない。こんなことができるんだと驚きました」と目を丸くし、殺し屋役の小澤は「現場が暗いところが多かった。監督も暗闇に座っているので、どこにいるのかわからないくらいの状況。でもこのクオリティになる。すごいなと思いました」と暗闇でもはっきりと人物や背景を捉える技術に惚れ惚れとしていた。
「一番驚いたのは、これだけ無茶な撮影をやってもトラブルがゼロ。壊れない」と語ったのが三池監督で、激しく機材を動かすと「普通ならデジタルだからノイズが走ったりする」そうだが、「むしろスムーズに撮れすぎていて、あとでちょっと振動を足したカットもある。1台も壊れず、ちゃんとお返しできました」と目尻を下げていた。
完成作を観ても「めちゃめちゃ興奮した」という賀来。「ここまでのクオリティは想像していなかった。iPhoneで映画を撮るなんて、ちょっと前までは考えられなかったこと。いよいよここまで来たんだなと実感しました」と驚嘆。「誰でも撮れることがいよいよ証明された。若い方、お子さんだったりが、とんでもない作品をつくる時代になるんだろうなという確信があります」と力強く語る。三池監督も「僕らにとっては選択肢が増えていく。普段使っているプロ用の撮影機材にはない力を、明らかに持っている」と口火を切り、「誰がどのように使うかが問われている。子どもたちも持っているし、皆さんもその気になれば撮影ができる。やるかやらないか。そういうものを普段僕らは手にして、ポケットに入れている。すごいなと思います」と映画制作の新たな可能性を感じて刺激になったことを明かしていた。
『ミッドナイト』はApple Japan YouTubeほかにて配信中。
取材・文/成田おり枝
※手塚治虫の「塚」は旧字体が正式表記