【第96回アカデミー賞】国際長編映画賞は”無関心”の恐ろしさ描いたA24の『関心領域』!『PERFECT DAYS』は惜しくも受賞逃す
現地時間3月10日(日本時間3月11日)、米ロサンゼルスのドルビー・シアターで開催中の第96回アカデミー賞授賞式。国際長編映画賞は、ジョナサン・グレイザー監督による『関心領域』(5月24日公開)が獲得。ヴィム・ヴェンダース監督が役所広司を主演に迎えた『PERFECT DAYS』は、惜しくも受賞を逃した。
イギリスの作家マーティン・エイミスの同名小説を原案に、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(13)のグレイザー監督が10年もの歳月をかけて映画化した本作。製作は、2023年のアカデミー賞で作品賞ほか最多7部門を受賞した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(23)など多くの話題作を手がけ、近年の賞レースを席巻している映画スタジオ、A24が担った。
「The Zone of Interest(関心領域)」とは、第二次世界大戦中に、ナチス親衛隊がポーランド・オシフィエンチム郊外にあるアウシュヴィッツ強制収容所群を取り囲む40平方キロメートルの地域を表現するために使った言葉。劇中では、アウシュビッツ強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住む収容所の所長ルドルフ・ヘス(クリスティアン・フリーデル)とその妻ヘドウィグ(ザンドラ・ヒュラー)ら家族の暮らしが描かれる。
グレイザー監督は制作に関わったたくさんの人に感謝を伝えつつ、「私たちは、いまについて伝えたいと思いました。これからなにができるかということです。なんの罪もない人が犠牲になっています」と本作に込めた想いを吐露。会場にいたヘドウィグ役のヒュラーも胸を抑えて同調するなか、「ホロコーストがハイジャックされ、紛争が起きている。どのように我々は抵抗できるのでしょうか?」と悲惨な過去、そしてイスラエルやガザ地区についての現在の世界情勢に目を向けてほしいと願い、拍手を浴びていた。
世界的に注目を集めている本作は、初お披露目となった第76回カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞、第81回ゴールデン・グローブ賞では作品賞(ドラマ部門)ほか3部門にノミネート。各地の映画祭で数々の賞を受賞し、第96回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞、音響賞の計5部門にノミネートされた。
文/成田おり枝