「まったく予想できないストーリー」「展開に引き込まれていく」斬新なタイムループに裏切られる人続出…!繰り返し観たくなる『ペナルティループ』の魅力
俳優の演技が浮かび上がらせる岩森と溝口の関係性の変化
主人公が自らループを選んだことに加え、「犯人も記憶を残していることによって、同じ日なのにまったく違う1日になるところがおもしろい」(30代・男性)というコメントの通り、ループしているのが主人公だけではない点も本作のポイント。
来る日も来る日も溝口のことを殺す岩森はもちろん、殺され続ける溝口もループしているため、毎日殺されなければならない理由を探ろうと岩森に接近。結果、同じ日の繰り返しにパターンが生まれ、キャラクターの心境や関係性にも変化が生じていく。
「ループを重ねることで知らない人から知っている人に変わり、殺す時の心情が変わっていったのがおもしろかった」(20代・女性)
「2人の間に、現実なら絶対に生まれないであろう空気感があったのが印象的でした」(20代・女性)
「恋人を殺した犯人でも近くにいれば情が湧いてしまうんだなと思った」(30代・男性)
そんな変化を体現した俳優たちの演技も見事で、「若葉さんと伊勢谷さんのセリフがなくても伝わる演技がすばらしかった」(10代・男性)という声も。
『街の上で』(21)の今泉力哉監督や『愛にイナズマ』(23)の石井裕也監督など、名だたる監督とこれまでも共に映画を作ってきた主演の若葉だが、本作についてはカルトな代表作と認定しているそう。演じた岩森というキャラクターを、初めこそ復讐に取り憑かれ冷たい雰囲気を漂わせつつも、心が揺れていく様子を口調や表情などでさりげなく表現。「時を経ることで犯人への先入観から脱却し、契約当初に望んでいた結果なのか?という混沌とした変化を感じた」(20代・女性)、「若葉さんの哀愁漂う演技がよかったです」(30代・男性)など、自ら望んだはずの復讐に意味はあるのかと虚しさを感じさせる岩森の姿が心に刺さる。
一方、伊勢谷が演じる溝口もミステリアスな男として登場するが、繰り返し罰せられるうちに「殺されるの、痛いんだよ」と愚痴をこぼすようなコミカルな一面も露わになっていく。「犯人なので悪役ともいえるけど、人間味があり印象に残った」(30代・男性)、「悪役顔に反して殺されることを素直に受け入れるところにギャップがあっていい」(20代・女性)など、どことなくチャーミングな演技が人間味を醸しだしており、観客の印象に残ったようだ。
「一定の縛りやルールがある、区切られた空間の中において人間関係が描かれるところが、荒木監督の魅力だと思います」(30代・男性)
「1日の終わりの結果は同じなのに、過程にどんどん変化が生まれていく様子には人間の不可思議さを感じました」(20代・女性)
といったコメントにもあるように、ループという“枠組み”のなかで繰り広げられる人間の姿こそ、荒木監督の作家性が最も表れた見どころと言えるだろう。