最後のピアノソロコンサート映画『Ryuichi Sakamoto | Opus』坂本龍一が観客に宛てたメッセージ
2023年3月に逝去した音楽家、坂本龍一の最後のピアノソロコンサートの模様を収めたドキュメンタリー『Ryuichi Sakamoto | Opus』(4月26日から109シネマズプレミアム新宿で先行公開、5月10日より全国公開)から、生前の坂本によるコメント映像が解禁。さらに監督の空音央、撮影のビル・キルスタイン、編集の川上拓也、録音、整音のZAKからのコメントも到着した。
本作は2022年9月、東京のNHK509スタジオで行われていた坂本による最後のピアノソロコンサートをモノクロ映像で収めたドキュメンタリー映画。『Ryuichi Sakamoto: CODA』(17)の撮影を手掛けた空音央が監督を務めたほか、坂本が全面的に信頼を寄せる撮影クルーが集結。入念に撮影プランを練り上げ、親密かつ厳密な映画空間を創出した。劇中で坂本は2000年にカスタムメイドされたヤマハのグランドピアノで、『戦場のメリークリスマス』(83)のメインテーマである「Merry Christmas Mr. Lawrence」や、2023年に発売された最後のアルバム「12」からの楽曲や「Tong Poo」まで、自身で選出した20曲を披露している。
このたび解禁されたのは、坂本自らが本作について撮影時に語ったコメント映像。本作の撮影が行われたのは坂本が亡くなる約半年前の2022年9月。映像では「2020年の6月に癌であることが分かり、表立った活動はしておらず現在も治療を続けています」と自らの状況を告白。そして「かなり体力も落ちてしまって、通常のコンサートは難しいんですよね。今回は1曲ずつここで撮影して編集し、一つのコンサートとして発表することにしました」と本作を撮影するに至った経緯を説明する。
続いて本作の収録場所となったNHKの509スタジオについて「40年前かな、NHK‐FMの番組を担当していた時に毎週のように来ており、このような大きなスタジオは特別な時にしか使えませんでしたが、(509スタジオは)とっても音が良いんですね、何度も録音したことがありますが、ここを今回特別にお借りすることができました」と1980年代にDJを務めていたNHK-FM「サウンドストリート」放送当時の話を披露しつつ、坂本が「日本でいちばん音のいいスタジオ」と評する場所での撮影が実現したことを語る。最後に作品を鑑賞する観客に向けて「通常のコンサートのように楽しんで頂けたら。それでは、Enjoy!」と締めくくっている。
また本作は坂本が信頼を寄せた約30名ものスタッフが集い、8日間に渡り撮影が行われた。監督を務めた空は「坂本龍一が意図したコンサートをできるかぎり忠実に映画化するため、本人含めスタッフ一同、全身全霊でOpusを作り上げました」と丁寧に親密に作品を作り上げたことを語り「ウトウトしたら音楽に揺さぶられながら寝ちゃうのも一興。本物のコンサートのつもりで音に身を預け、体験していただければ、(坂本龍一)本人も嬉しかったんじゃないかと思います」とコンサート映画である本作ならではの楽しみ方について言及。
撮影を務めたビル・キルスタインは「撮影が始まると、坂本さんの演奏、美しいレコーディング・ホール、入念なサウンド・レコーディングが相まって、まるで大聖堂で撮影しているかのような、あるいは森の中でじっと座っているかのような、独特の雰囲気が生まれました」と撮影中の神秘的な空間に魅了されたとコメント。編集を務めた川上拓也は「監督や現場スタッフのみなさんが、それぞれの役割を全うされて、丁寧に捉えた美しい撮影素材をお預かりし、その素材の素晴らしさに常に新鮮な刺激を受けながら、坂本さんが音のひとつひとつと語り合うドキュメンタリー映画と捉え、編集しました」とスタッフ、そして世界的音楽家である坂本へのリスペクトを語った。
長らく坂本龍一とタッグを組み本作で整音を務めているZAKは「この音を通して、その創造力、ピアノと一体化した身体、それが空間と調和する美しい生命を見て欲しい」と坂本龍一が全身で奏でる“音”の素晴らしさについて話している。
モノクロの4Kフォーマットカメラ3台を使用し、坂本が絶賛するスタジオで撮影された本作。生前の坂本と彼が信頼するスタッフたちが残してくれた貴重なコンサートを映画館で体感したい。