40年前の知恵と現代の技術が融合!『ゴーストバスターズ』最新作のゴーストたちはこうして作られた
世界中で大ヒットを記録するだけに留まらず、1980年代カルチャーの代名詞としていまなお絶大な人気を誇る『ゴーストバスターズ』(84)。その正統続編として話題を呼んだ『ゴーストバスターズ/アフターライフ』(21)のさらなる続編『ゴーストバスターズ/フローズン・サマー』が公開中だ。本作の見どころはなんと言っても、現代の技術を駆使して生みだされた“ゴーストバスターズらしい”見た目のゴーストたち。そこで本稿では、そんなゴーストたちを作りだす本作の要、特殊効果(SFX)と視覚効果(VFX)にスポットライトを当てていこう。
シリーズの生みの親であるアイヴァン・ライトマンの息子、ジェイソン・ライトマンがメガホンをとった前作『アフターライフ』では、初代ゴーストバスターズの一員だったイゴン・スペングラー博士(ハロルド・ライミス)の孫フィービー(マッケナ・グレイス)が、祖父の遺した屋敷の地下室で見つけた“ゴーストトラップ”を誤って開封。それをきっかけにオクラホマ州サマーヴィルの田舎町で大騒動が繰り広げられた。
その前作の公開直後、アイヴァンは75歳でこの世を去った。父からシリーズを託されたジェイソンは「父とは次回作のアイデアを話し合っていて、これが父に語った最後のストーリーになりました」と振り返る。ライトマン親子の強い想いが詰まった今作では、ジェイソンは脚本と製作にまわり、前作で脚本を担当したギル・キーナンが監督を務める。そしてアイヴァンは引き続きプロデューサーの1人として名を連ねている。
物語の舞台は、シリーズの原点ともいえるニューヨーク。ゴーストバスターズとして活動するスペングラー家の面々は、ゴースト研究所の調査チームと協力し、街角のオカルト鑑定店に持ち込まれた骨董品に史上最強のゴースト“ガラッカ”が封印されていることを突き止める。しかしそのガラッカが解き放たれ、真夏のニューヨークは氷河期さながらの氷の世界へと変貌してしまうのだ。
使用したスライムはなんと1トン!40年前の伝統を活かして特殊効果が進化
霧や雨、爆発など、カメラで物理的に撮影されるあらゆるエフェクトを構築したり操作したりする特殊効果チーム。それを率いたのは「ダークナイト」3部作や「スター・ウォーズ」シリーズなど、これまで名だたるハリウッドの超大作の特殊効果に携わってきたジョン・ヴァン・デル・プール。そして、合成やアニメーションを駆使した視覚効果チームを率いたのは、『トータル・リコール』(90)でアカデミー賞特別業績賞を受賞し、以後も2度にわたりアカデミー賞視覚効果賞にノミネートされたエリック・ブレヴィグだ。
「おもしろくてファンタジックでエフェクトが満載で、若いころから『ゴーストバスターズ』は是非やってみたい種類の映画でした」と長年の憧れを叶えたブレヴィグは、「視覚効果が物理的な効果をサポートすることによって、両方の世界の最善を実現することができるのです」と、特殊効果と視覚効果の両部門の協力関係の重要性を語る。「実際に撮影ができれば、物事はリアルに見えるものです。でもそこに少しだけ手助けをしてみる。ワイヤーを塗りつぶしたりパペット師を隠したりすれば、観客はもっと完璧なまでのリアルさを感じることができるでしょう」。
その例としてブレヴィグは、本シリーズを代表するゴーストのひとつ“スライマー”の登場シーンを挙げる。シリーズ第1作の際には大きなゴム人形を俳優が身につけるかたちで撮影され、俳優のいる背景シーンと合成していたスライマー。「今回も当時と似たようなことをやっています」と明かすブレヴィグは、パペット制作チームやパフォーマー、撮影監督と密に協力しながらこのゴーストを緻密に具現化していったという。「手間のかかる仕事だが、それに見合うだけの価値がある。昔とまったく同じようなかたちでありながら、現代の合成技術を使って彼を登場させました」。
またスライマーには、特殊効果の面でもこだわりが詰まっている。ヴァン・デル・プールは今回、これまでのシリーズ作ではできなかったことに挑戦。それはスライマーが実際にカメラの前で俳優をスライムまみれにすることだ。「トレヴァー役のフィン(・ウルフハード)の胸と背中に同時にスライムをかけられる内蔵型パックを開発しました」と自信満々に語るヴァン・デル・プールは、40年前から受け継がれたスライムのレシピで約1トンのスライムを制作したのだとか。