監督&キャストが明かす“再会”シーンの秘密とは?『パスト ライブス/再会』撮影環境や設定のこだわりを語る
第96回アカデミー賞で作品賞と脚本賞にノミネートされるなど、これまでに各国の映画賞で246ノミネート88受賞を獲得している『パスト ライブス/再会』(4月5日公開)。このたび本作から、本編映像とともにセリーヌ・ソン監督やキャスト陣が演出や役づくりについて振り返る特別映像が解禁された。
本作は、ソウルで恋に落ちた幼なじみの2人が、24年後に36歳となり、ニューヨークで再会する7日間を描いたラブストーリー。ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソン。お互いに恋心を抱いていた2人だったが、ノラの海外移住によって離れ離れになってしまう。12年後、それぞれの人生を歩んでいた2人はオンラインで再会。そしてさらに12年の歳月が流れ、ノラ(グレタ・リー)は作家のアーサー(ジョン・マガロ)と結婚。ヘソン(ユ・テオ)はそのことを知りながら、ノラに会うためにニューヨークを訪れる。
ノラとアーサーの関係、ノラとヘソンの関係、そしてアーサーとヘソンの関係を描いた本作について、リーは、それぞれの関係の本質はまったく違うものだとしたうえで「その感覚を掴むには枠にとらわれない考え方が必要だった」と振り返る。それを実際に体現してみせたのは、本作の最も重要なシーンといえるノラとヘソンの24年ぶりの再会シーン。「2人が会う瞬間がどんなものか、しっかり捉えたかったから」とリーが話すように、なんと撮影までリーとテオは顔を合わせない手法がとられたという。
一方、ヘソンとアーサーが初めて出会うシーンも、テオとマガロが実際に初めて会う瞬間だったこと、さらにそのファーストテイクを本編に採用したことをソン監督は明かしている。マガロはこの時のことを「実験的な手法を使った」と語り、「ヘア・セットやメイクの時もお互いを避けていました。私たちは一度も会わなかったし、話をすることもなかったんです。台本を読み返す時も、ノラとヘソンのシーンは読まないようにしました」と徹底的にこだわり抜いた挑戦的な撮影であったことを明かした。こういった撮影についてソン監督は、「彼らが決して遭遇しないようにしたスタッフの功績は大きいです。制作進行的には少し負担がかかることでしたが、私はその効果を心から信じていました」と自信をのぞかせる。こうして生みだされた印象的なシーンの数々に注目しながら、3人の運命をスクリーンで見届けてほしい。
文/久保田 和馬