『劇場版ブルーロック』島崎信長&浦和希が語り合う、凪視点だから生まれる潔世一の“脅威”「同じシーンの印象がこんなに変わるんだ」
「凪という人物を、“かっこいい記号の集合体”で完結させてはいけない」(島崎)
――それぞれのキャラクターのどんなところに魅力を感じていますか。演じるにあたってはそれをどう演技に落とし込んでいますか。
島崎「凪って、やっぱり“ガワ”がめちゃくちゃかっこいいんですよ。見た目もだけど、無気力でクールで面倒くさがり。そのくせやったこともないサッカーが超上手い!(笑)。そんなスマートなキャラクター、誰もが憧れてしまうんですよね。でも凪の深い魅力というのはその“ガワ”だけじゃなくて、心の奥にある“エゴ”やその熱量なんです。それに、意外とほかのメンバーとしっかりコミュニケーションをとったり、自分がいいと思った相手にはてらいもなく好感を示したり、人間的な魅力もあるし、弱さもある。だからこそ演じる時には、天才とかクールとかの“かっこいい記号の集合”だけで完結させないよう、凪という人間の奥底にある魅力を引き出せるようにしています」
浦「潔は、サッカーに対するまっすぐさがすごく魅力的だと思っています。糸師凛と出会った時の彼のボールさばきに対する感動や、世界選抜メンバーとの試合のあとにも、普通なら『悔しい!』って思うようなところで素直に『すごい』と受け止め、自分がそこに行くにはどうすればいいのかを考えるようなキャラクターです。二次選考で馬狼と組んだ時も、馬狼を変えようとするのではなく自分がうまく馬狼に適応して有利に戦うし、そういった現状打破能力みたいなものもすごくいいなって思います」
島崎「潔の対応力とかは、声優にとって理想的だよね。声優って、その場その場での対応の瞬発力を求められることが多いんですよ。例えば『大号泣の演技をして、その10秒後にそれを吹っ切った朝のシーン』とか、『3年前と10年後』とか、瞬間的な切り替えが必要になることも多い仕事なんです。即興力も求められるし、その瞬間や現場で感じたことにすぐ対応していく…というのは、潔に近いものがあると思います」
浦「確かに。信長さんなんか僕から見たらまさにそうかも」
島崎「いやいや(笑)」
「自分の心のなかにあるエゴを主張してもいいんだと背中を押してくれる作品」(浦)
――「ブルーロック」は「史上最もアツく、最もイカれたサッカーアニメ」とも言われていますが、その作品の魅力について改めて語っていただけますか。
浦「なかなか切り込めなかったところに切り込んでいった作品なのではと思います。エゴとか世界一になりたいとか、『冷静に考えたら無理』と言われるだろうし、なかなか本気で言えないじゃないですか。それを『言っていいんだ』『頑張っていいんだ』って、自分の気持ちを主張することに対して、『いいんだよ』って背中を押してくれるような作品なのかな」
島崎「僕もそう思います。いまの時代は『俺が!』というエゴを抑え込んでしまいがちだけど、実際に世の中には競争なんてたくさんあるし、エゴを否定できないですよね。それを『言っていいんだ』っていう世界観が、読む人にとっても気持ちいいんじゃないかなと思います。加えて、やっぱりお話の構造やキャラクター作りがすごくおもしろくて、キャッチ―なんですよね。
でもそこに“中身”がしっかり詰まっているのが『ブルーロック』の本当にスゴいところで。キャラクターも一人一人とがっているんだけど、ちゃんと人間として分析していける深さがある。だからキャラが成長する時にも、都合よく『血が覚醒した』みたいな感じではなく、その人の精神性や行動原理に基づいて成長していくんです。馬狼なんてまさにそうで、だからすごく説得力があるし、おもしろいんですよ!」
――最後に『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』の見どころについて教えてください。
浦「僕自身、『ブルーロック』をずっと劇場の大スクリーンで観たいと思っていました。今作は90分間の劇場版ですから、そのための絵づくりもされていますし、スタッフさんの努力もスゴいものになっていると思います。凪が躍動するシーンが大画面で観られるのが、僕としてもすごく楽しみです!」
島崎「やっぱり注目していただきたいのは、テレビシリーズと同じシーンなのに、視点が違うだけで『こんなに違って見えるんだ!』というところ。潔視点で見ると凪はとんでもない天才だけど、『EPISODE 凪』での潔は本当に底知れない、バケモノみたいなキャラクターで(笑)。テレビシリーズを観てくださっていた方はきっとおもしろいと思いますし、『EPISODE 凪』からの方にはぜひその後テレビシリーズを観てもらえたらと思います!」
取材・文/藤堂真衣
※島崎信長の「崎」は「たつさき」が正式表記