『パスト ライブス/再会』グレタ・リーにインタビュー「静ひつな演技で愛や運命を表現できれば、時間の流れという概念も伝わる」
次回作はSFアクション!今後の活躍にも期待大のグレタ・リー
本作の成功により、リーの活躍の場はさらに広がりそうだが、彼女自身が目指す方向性はどこなのか。そのヒントとして、好きな映画、理想とする俳優を聞いてみた。
「アンドリュー・ヘイ監督の『さざなみ』ですね。あの作品のシャーロット・ランプリングの演技は今回の参考にもなりました。ハリウッドは資本主義が加速し、スペクタクルな作品が増えていますが、『パスト ライブス/再会』のように小さな輝きを放つ作品では、ランプリングの演技にインスパイアされます。俳優ではマギー・チャン。ウォン・カーウァイの作品では、ストーリーテリングのスタイルと彼女の力強い演技が見事に重なって、愛や憧れの本質を表現していましたから。リチャード・リンクレイターの『ビフォア』シリーズも、主人公2人に地に足の着いた演技が要求されていて、本作のような作品に出る際の私にとっては理想の作品です」
しかしその言葉とは裏腹に、次回作として待機しているのは、あのSFアクション『トロン』の新作(原題『Tron:Ares』)。ちょっと意外なチョイスという気もするが…。
「たしかにまったく違うジャンルですね(笑)。でもほとんどの俳優は、自分の能力を伸ばすために異なる作品に挑戦したがるものです。『トロン』のような作品では肉体的に多くのリスクを冒す必要があり、少し違ったアプローチで自分の本能を信頼するわけです。でも同時に、恋愛映画とアクション映画は似ているとも思います。恋におちるという精神的、身体的な経験は、アクション映画の盛り上がりに近い感覚でしょう?」
『パスト ライブス/再会』で繊細を極める演技をみせたリーが、SFアクション大作でどんな輝きを放つのか。ぜひ楽しみに待ちたい。
取材・文/斉藤博昭
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