「ジャームッシュ組は、みんないい人(笑)」永瀬正敏が27年ぶりの恩師の作品出演を語る
ニュージャージー州パターソンで、妻と愛犬と暮らすバス運転手のパターソン。街と同じ名前の彼は、毎朝ベッドの妻にキスをして仕事に向かい、帰宅し妻との夕食を終えると愛犬の散歩に出かけ、いつものバーで一杯だけ酒を飲む。平凡な毎日の思いがけない出会いや出来事が、彼の人生を豊かに彩る…。
ジム・ジャームッシュ監督4年ぶりの新作『パターソン』(8月26日公開)は、詩心を持つ青年の日々をユーモアを交えてつづったヒューマンドラマだ。様々な形で交差する人々を描く本作に、日本から永瀬正敏が参加。1989年製作の『ミステリー・トレイン』以来27年ぶりに監督作へ出演した彼が“ジャームッシュ・ワールド”の魅力を明かす。
永瀬が演じたのは、クライマックスで主人公パターソン(アダム・ドライバー)が出会う日本人の詩人。ジャームッシュ監督は、永瀬が演じることを想定して脚本を書いたという。「役者冥利に尽きますよ。実は『ミステリー・トレイン』に出演した後も、ずっとコンタクトは取り続けていたんです。でも、まさか新作に呼んでもらえるとは思ってもいませんでした。監督は当て書きをすることが多いので、役者の素のパーソナリティが役にそのまま出るんです。いくら芝居をしようとしても、突き詰めるとシンプルなものが一番強い。今回もそれを感じましたね」
同じように過ぎてゆく日常のふとした瞬間が、いつしか愛おしいものになっていく。そんな本作の脚本を読んだとき、永瀬は初期のジャームッシュ作品に共通する独特の感触を覚えた。「どんな人の人生にもドラマチックな瞬間があるし、逆にパーソナルな部分にこそ心を動かすドラマが潜んでいたりするんです。小さな“個”に目を向けた企画が成立しにくいこの時代、こんなパーソナルな作品が作れたことは、ちょっとした奇跡みたいだと思いました」
すべての登場人物が、物語の世界へ自然に溶け込むジャームッシュ作品。27年ぶりに現場を訪れた永瀬が、ジャームッシュ組の魅力を語る。「基本的にみんないい人(笑)。今回アダム・ドライバーもすごく助けてくれましたし、以前ご一緒したジョン・ルーリーやスティーヴ・ブシェミも、みんなごく普通の人たちと同じ感覚の持ち主なんです。監督自身、物事をとてもフラットに見れる人。そんな優しい眼差しこそ、今の時代に最も必要なんじゃないでしょうか」
何気ない暮らしの中にある幸せや輝きを、温かい目線で切り取った『パターソン』。本作を通し、普段見過ごしがちな大切な“何か”を感じ取ってみてほしい。【トライワークス】