藤井道人監督がミューズ・清原果耶に託した”理想のヒロイン”「アミには僕自身の憧れを投影している」
「ジミーは僕でもあり、アミはかつての理想を投影したところもある」(藤井)
――台湾で映画を撮ることは、台湾にご自身のルーツを持ち、20代のころに留学もされていた藤井監督の夢の一つでもあったそうですが、実際に取り組まれてみていかがでしたか?
藤井「台湾の方たちは本当に優しくて、『やりたいことを言ってもらえれば、実現できるように全力でサポートします』というスタンスでいてくれたことが、僕としてはとてもやりやすくてありがたかったです。ただ、台湾のNo.1とNo.2の日本語通訳さんを僕らが独占してしまったので、ほかのチームからクレームが殺到していたらしいんですけどね(笑)」
――国際プロジェクトにおいては、通訳さんとの相性も非常に重要になってきますよね。本作が“青春映画”であることも、監督にとって大きな意味を持っているのでしょうか?
藤井「自分が36歳の時に、36歳の男性を主人公にした『青春18×2』を撮ることができたということが、個人的にはすごく感慨深くて。言ってみれば、ジミーは僕でもあり、アミは『18歳の僕ならきっとこういう人を好きになるだろうな』との発想から、ちょっとお姉さんだけどキュートな女性という、かつての理想を投影したところもあるんです」
――なるほど。憧れの女性像を監督のミューズでもある清原さんに託されたわけですね。
藤井「そうなんです(笑)。映画のなかの果耶ちゃん、すごくかわいかった!」
清原「…ん?映画のなかの?それは聞き捨てならないな~(笑)」
藤井「いや、違う違う!そういう意味じゃなくて。アミが。いや、アミを演じている果耶ちゃんが!…って、なんだかどんどん墓穴を掘っているような気もするけど(汗)。なんて言ったらいいんだろう?普段の果耶ちゃんは、アミよりもっとおしとやかというか…」
清原「はい(笑)。藤井さんが言わんとしてることはわかります」
藤井「そうそう。アミは等身大の女性ではあるんだけど、果耶ちゃん本人とは確実に違うので。俳優部ってやっぱりすごいんだなって、改めて実感しましたよね」
清原「確かに、アミはこれまでの2作でご一緒させていただいた役のイメージとは違いましたし、藤井さんの理想が詰まっているのであろう女性を演じることへのプレッシャーもありました」
藤井「いやいや、もちろんこちらだって、『今回お願いしたいのは、相手の男子高生より4つ年上のアミという役なんです』『実は、アミには僕自身の憧れを投影しています』みたいなことを伝えるにあたっては、正直照れくさい部分もありました。でもそれを恥ずかしげもなく言えたのは、気の置けない間柄である果耶ちゃんだからこそ。そこはすごくありがたかったですよね」
――清原さんは、そんなアミ役にどのように取り組まれたのでしょうか?
清原「私自身は喜怒哀楽の表現が激しいほうではないですが、共感することはできたので、アミとして感情を出せるラインがどのあたりまでなのかを見定めながら、ただただ彼女に寄り添うことだけを考えて向き合いました。その場に身を置いて感じることやキャストの皆さんから受け取るものをちゃんと消化したうえで表現すれば、きっと大丈夫だろうなと」
藤井「でも、結果的に今回の現場では、監督として俳優陣に非常に難しい要求をしてしまったんです。というのも、諸般の事情により時系列に即した台湾ではなく、日本からクランクインすることになったので、果耶ちゃんにとってはかなりの地獄だったと思います」
清原「ホントですよ(笑)。普段だったら『なんでそんなシーンから撮るんですか~!』って、絶対に怒ってます(笑)。現場でも『ここはこういうシーンなので、恐らくこういう感じになる思います』『スミマセン』『よろしくお願いします!』とだけ言って、藤井さんはサーッと遠くに去っていってしまったので(笑)。あえて説明しすぎないで私に任せてくれるのも、藤井さんの優しさなんだろうなと思って。『よし、こうなったら腹を括るしかない!』との想いで初日の撮影に臨みましたね」
――実年齢33歳のグァンハンさんが、18歳と36歳のジミーをとてもナチュラルに演じていたことにも驚きました。
藤井「台湾のスタッフに意見を求めたら、『ジミー役ができるのはグァンハンしかいない!』と激推しされて。いざ会ってみたら本当に若く見えるうえに、すごくナイスガイで」
――清原さんとしても、グァンハンさんが演じる18歳のジミーの4つ上の女性を演じること対する不安はなかったですか?
清原「そこについては特に不安はなかったです。実年齢がどうこうというよりは、精神面の問題だと思っていたので。あまり思い詰めすぎたりすることなく、いま私の目の前にいるジミーとちゃんと向き合えていれば、成立するはずだと思いながら演じた気がします」