シュー・グァンハン&道枝駿佑が交わした台湾バイク旅の約束「僕もアミのように後ろに乗ってみたい」
「テイクを重ねるごとに新たな発見もあったので、やるたびにテンションが上がりました」(道枝)
――「フェイクドキュメンタリーのような手法で撮影された」とのことでしたが、今回お2人は「藤井組」に初参加されてみて、どのような発見がありましたか?
グァンハン「本当に才能のある監督ですよね。藤井監督の映画はすごく自然に見えるんですが、それは監督が場面ごとにどんな見え方になるかをあらかじめすべて想定したうえで、用意周到に準備されているからだと思うんです。一方、役者に対してもとてもわかりやすく説明して誘導してくださるので、その場面で自分がなにを求められているのかすぐに理解できました。つまり、そのうえで役者自身に自由に演じる余地を与えてくださった、とも言えますよね。また、随所に様々な映像表現を織り込んでいるのも、藤井組の特徴だと感じています。例えば、劇中で36歳のジミーが出演する場面の映像は全体的に冷たいブルー系なのですが、18歳のジミーのシーンでは暖色系のトーンが使われている。藤井監督のセンスや才能は、作品のすごく細かな部分にまで一貫して宿っているんです」
――道枝さんはいかがでしたか?
道枝「本物のダイヤ通りに走っている電車に乗って撮影するのは僕にとって初めての経験だったのですが、幸次は登場の仕方からして、かなりインパクトがあると思います(笑)。通常の撮影以上に限られた時間のなかで、僕自身もより集中して楽しみながらお芝居することができたんじゃないかなと思います。テイクを重ねるごとに新たな発見もあったので、やるたびにテンションが上がりました。幸次はなにに対しても心をバッと開いていけるキャラクターで、目に映ったものは“全部友だち”ぐらいの感覚で生きている人なんです。写真を撮っている最中に電車がトンネルに入ってしまった瞬間のシーンでは、トンネルにさえも『おーい、トンネル!』とツッコんだりするのですが、藤井監督の頭の中にあるイメージを体現するのに一番苦労した気がします。ツッコミと同時に『しょうがないな』みたいな諦めのニュアンスも含んだ絶妙なラインだったので。ぜひそのセリフに注目してほしいです(笑)」
グァンハン「電車の中は音がすごかったんですよね。トンネルに入った電車の中で会話するシーンだけは現場でうまく録音できなくて、あそこだけ別日に録り直したんですよ」
道枝「そうでしたね!止まっている電車をスタッフさんたちが揺らしながら録ってたんです」
グァンハン「あの日は撮影が終わった後、スタッフ全員がハアハア肩で息をしてました(笑)。『ハアハア、お疲れさまでした!』って」
――長いトンネルを抜けると白銀の世界が一面に広がっていて…。ジミーと幸次が雪合戦に興じるシーンはいつまででも観ていたくなるほどステキな場面でしたが、現場はどんな状況だったんですか?
グァンハン「(日本語で)めっちゃ寒かった(笑)」
道枝「僕もめっちゃ寒かったです!」
グァンハン「いまでもよく覚えているのですが、僕はこれまであまり雪合戦をやったことがなかったので、本当に興奮するほどうれしくて。夢中になって雪玉を投げまくっていたんですが、カットがかかった途端、雪のないところにそそくさと逃げだしました(笑)。というのも、長時間雪の中に立ち続けていると、氷水が靴の中まで染み込んでくるんですよ」
道枝「僕もまさにグァンハンさんと同じ感想です。久しぶりの雪合戦で、寒さを忘れるぐらい夢中になってやっていたんですが、雪が靴の中まで入ってきて本当に大変で…(笑)」
グァンハン「でも雪のおかげで、言葉の壁を越えたコミュニケーションが図れました!」
道枝「アドリブもあったりして。本当にわちゃわちゃと楽しみながら撮影してましたね」