初心者×映画ファン×原作ファンが魅力を徹底分析!映画『陰陽師0』は“シャーロック・ホームズ”のような胸アツバディムービーだった!
「夢枕先生のフォーマットがきちんと描かれていて安心感がありました」(三浦)
――原作ファンとして魅力に感じた部分はどこにあるのでしょうか?
三浦「夢枕先生のいいところは、男性同士がやたら熱い絆を持っている一方で、ヒロインが常に存在していること。今回は晴明と博雅のバディと博雅と徽子女王の恋が描かれるということで、夢枕先生っぽさもしっかり踏襲している感じがありました。晴明と博雅が酒を酌み交わし、“行こう”と出掛けていく。目的を果たし戻ってきたら、最後はまた酒を飲む。夢枕先生のフォーマットがきちんと描かれていて安心感がありました」
高橋「男同士の絆は常に描かれていますね。なんてことない話をしているところとかにも、夢枕ワールドを感じました。原作ファンだと、本作を観て逆に文章化できそうですよね」
三浦「『ゆこう』『ゆこう』『そういうことになった』みたいな有名な構文もありますが、お互いのことを聞きあったりしないで、禅問答みたいな会話をしている部分が本作でもあって。この距離感の置き方が夢枕ワールドっぽいと感じました」
――佐藤監督の描き方についてはいかがでしょうか?
高橋「村上虹郎さん演じる橘泰家が殺されるくだりとかすばらしくよかったですね」
三浦「あそこは横溝正史のような世界でしたね。佐藤監督は和風エンタテインメントにすごい感性を持っている方だと思っていて。和風で怖い、なんかドキドキするというものへの興味の度合いも知っていたから、ドンピシャでした」
高橋「夢枕先生だと死体を直接的に描写しないだろうなと。あえて見せるところに佐藤監督らしさを感じました」
三浦「あと、嶋田久作さんが出演しているのは外せないですね。『帝都物語』で嶋田さんが演じた加藤保憲は、晴明の末裔とされているキャラクターなんですよ。佐藤監督らしいオマージュだと思いました」
――佐藤監督は本作のテーマとして、現代社会を反映する内容であることも仰っていました
三浦「SNSには‘呪“が蔓延していると話されていましたね。自分の思い込みをずっと語っている世界だと。この映画での、晴明が狐の子である揶揄されるくだりも、このSNSでの思い込みやネットいじめとかにつながっているのだと思いました。人間はいつの時代も変わらない。孤独感のあるなかで、晴明が博雅に会う話なのだと思います」
魚田「なるほど」
高橋「いわば、呪というのは人間の本質のようなことなのかもしれないですね。僕は本作を観てコミュニケーションの重要性を感じました。この映画で一番コミュニケーションが取れているのが、一番傍若無人に振る舞えるはずの帝なのではと」
三浦「確かに全体的にコミュニケーションが不足していましたね。博雅、ちゃんと気持ちを伝えろよ!と思う場面もありました(笑)」
「現代語で時代劇だけど“いま風”。魔法ワールドファンもぜひ!」(魚田)
――最後に、皆さんの視点から本作の魅力をお聞かせください。
三浦「原作ファンからすると制作発表時のコメントがすべてです。夢枕先生の『絶対間違いないので期待してください』という言葉を信じて観てよかったと思いました。オリジナルストーリーだけど、夢枕先生の世界観が完全に表現されているので、原作ファンの方も安心してほしい。それに尽きます!」
高橋「佐藤監督ファンにとっては待ちに待った作品。どんな作品を撮るのか楽しみにしていましたが、演出がもう冴え渡っていました!そして、『犯人はお前だったのか!』という、佐藤監督の真骨頂が全開ですばらしかったです」
魚田「『陰陽師』初心者でも楽しめるし、『陰陽師』に触れたことがない人にこそ、ここからはじまる晴明の物語に気軽に触れてほしいと思いました。本作の特別PVでも『ハリー・ポッター』シリーズに触れながら映画の魅力を紹介していたので、魔法ワールドファンもぜひ!」
三浦「陰陽寮授業のところとか、まさに『ハリー・ポッター』の世界のようでしたね」
高橋「魔法と呪術は同じだと感じる部分は確かにありました。ハリーと晴明は両親が殺されているという共通点もあります」
魚田「現代語で時代劇だけど“いま風”に描かれていますし、とても間口の広い作品なのだと思います!」
構成・文/タナカシノブ