令和の新宿に冴羽獠が降臨!鈴木亮平からあふれる『シティーハンター』へのこだわり「新宿はもう一人の主人公として大切な存在」
「雰囲気が伝わる映像になったのは、歌舞伎町という場所が出すリアリティにこだわった結果だと思う」
実際の撮影にあたってもかなりの労力が割かれている。歌舞伎町タワー前やTOHOシネマズに向かう通称「ゴジラロード」と呼ばれる通りをはじめとした道路での撮影は、トラブルなどが起きないような形で徹底した準備がなされていた。
「歌舞伎町タワー前の広場での撮影は、安全を確保するうえでは貸し切らないとできないので、イベント会場として貸し切りにして、そこにエキストラの方々を400人以上入れて、普段の雰囲気を表現していました。ただ、TOHOシネマズ前の通りに関しては閉鎖することができないので、なかなか大変でしたね。最初にこちらが走り抜けるルートだけを決めておいて、そのルートに沿う形でエキストラの方を配置し、そのなかに突発的な状況に対応できるような方も混ざってもらっていました。そういう意味では、今回の撮影では、一番ピリピリした現場でしたし、監督も緊張していたと思います。歌舞伎町の雰囲気を伝えるのが重要だったので、『歌舞伎町で撮影ができてうれしい!』という感じではなく、何事もなくロケが終わってホッとしたという感じがありました」。
そうした入念な撮影準備を行った結果、歌舞伎町の持つ派手で怪しい雰囲気を「シティーハンター」という作品の魅力として取り入れることができた。それは、完成映像を観た鈴木も満足だったという。
「歌舞伎町のシーンは、全部歌舞伎町で撮影しているのではなく、一部は名古屋で撮影していて、名古屋の皆さんにも協力いただいています。でも、実際に歌舞伎町で撮ったからこその雰囲気というのがあって、香が一人で歌舞伎町に足を踏み入れて不安そうにするカットは、自分が初めて歌舞伎町に入って『こんなところに一人で来て大丈夫なのかな?』と思ったことを思い出しました。そうした雰囲気が伝わる映像になったのは、歌舞伎町という場所が出すリアリティにこだわった結果だと思いますね」。
そのほかにも、「シティーハンター」らしい空気が感じられる新宿周辺でのロケも本作の見所となっている。
「東新宿のビルの屋上で香と会話するシーンは、ちょうど新宿の街を見下ろすことができるホテルの屋上を借りて撮影しています。屋上という密室で誰かと大事な話をするのは、まさに『シティーハンター』らしい画なので演じたなかでも印象深いですね。歌舞伎町での撮影は不安が大きかったので緊張感が強かったですが、屋上のシーンは撮影面での不安がないということもあって、『新宿をバックに冴羽獠になって撮ってるな』とちょっと気持ちも上がりました。そして、『シティーハンター』では、歌舞伎町も大事なんですが、どちらかと言えば西新宿なんですよね。アニメ版でもよく登場していましたし。ファン代表として出させてもらった脚本会議でも、シチュエーションのアイデアをいくつか出させてもらいました。獠が活躍するもう一つの作品である『エンジェルハート』では、槇村が殺されてしまう場所が西新宿の虹の橋に設定されているんですが、そこでロケができないか?とか、そこで槇村が死ぬシーンを撮れないか?とか提案して。最終的には、冴子との都庁の夜の展望台で会うシーンや、そのあとに獠が一人で夜の西新宿を歩くシーンなんかも撮影させてもらっています」。
こうして実際に新宿を描くことに注力し、映画『シティーハンター』が完成。実際に映像のなかに印象深い新宿の姿が描き込まれ、心が揺さぶられたそうだ。
「自分がロケ撮影には行っていないんですが、物語のラストで朝焼けの西新宿から歌舞伎町に向けて靖国通りをミニクーパーが走るシーンがあるんです。獠は映らないんですが、ハミングでベートーヴェンの『第九』を口ずさむところは槇村を想っている感じが伝わるし、そのあとに登場する朝焼けの新宿の空撮もすごく実在感があっていいんですよね。最終決戦の地となるとある施設は、新宿の地下にあるという設定なんですが、そこもある意味『シティーハンター』感があっていいですし、靖国通りを抜けてその地下施設にミニクーパーで向かうショットも現実と続いているような感じでちょっとテンションが上がりました」。
「実写化された『シティーハンター』のなかでは、もっとも『シティーハンター』らしい作品になった」
本物の新宿を背景することによって、多くのファンが夢に見てきた冴羽獠が新宿に実在するような思いにさせる映像に仕上がった。最後に、夢想していたシチュエーションが実際の映像になることで、原作コミックスやアニメとは違った形で解像度の上がった映像に対しての想いを語ってもらった。
「僕自身の感想としては、これまで実写化された『シティーハンター』のなかでは、もっとも『シティーハンター』らしい作品になったと思います。北条司先生が描かれたオリジナルの漫画の世界観に近い形で、でもアニメ版の要素もたくさん入れているので、そういうバランスでいいものができたなと。自分が出演している作品に関しては、どうしても客観的に観ることができなくなってしまうのはいつものことなんですが、『シティーハンター』ファンとしては単純に楽しめないのがちょっと寂しいですね。でも、それは自分が冴羽獠を演じられたということの副作用みたいなもので、ものすごく幸せなことなんだと思います。作品を観ていただいて、往年のファンの方には本当にいまの新宿に冴羽獠がいるように感じてもらえたらうれしいですし、『シティーハンター』を知らなくて、ここで始めて触れる方もたくさんいると思いますので、“はじまりの物語”としてここからなにかを感じて、おもしろいなと思ってもらえるとうれしいですね」。
取材・文/石井誠