『トラペジウム』で描かれる、アイドル活動の悲喜こもごもに3時のヒロインも共感!「キラキラしたことが本当に一夜で始まって、全然実感がなかった」
「ちょっと怖じ気づいたというか、そこまでのハングリー精神はなかったかもしれない」(かなで)
――なるほど。だから3時のヒロインにも東西南北と同様、スタート地点からしてすでにメンバー間に意識の差があった、と。
福田「いや、東西南北の場合は、ゆうが上手いことやって、ほかのメンバーをアイドルのほうに引っ張り込んだところがあるから、意識の差が生まれるのもわかるんです。別にみんながみんな、ゆうみたいにアイドルになりたくてなったわけではないから、そこにリアリティがあったんですけど、ゆめっちとかなでちゃんの場合は、もともと芸人がやりたくて吉本に入ったはずなのに、なんであの時の私はこの2人をまとめるのにあんなに苦労していたんだろう…?って。そう疑問に思う瞬間が、この映画を観ながら実は何度もあったんですよ(笑)!それこそ、THE Wの決勝進出が決まった時も、ほかの芸人たちが優勝を目指して必死になっている時に、かなでの心は7割くらい恋愛に持っていかれてたんで」
かなで「『テレビに出たい』とか『売れたい』っていう気持ちはもちろんあったんですけど、いざそこに足を踏み込むとなったら、まだそこまでの覚悟ができてなかったというか…。怖じ気づいたというか、そこまでのハングリー精神はなかったかもしれないです」
福田「ハングリーじゃないどころか、『売れたくない』って言ってた時期もあったんですよ。その時はいっぱいいっぱいになっていたのもわかってたけど、私にとってその言葉はかなりダメージが大きくて。『ほんならなんでお笑いやってるん?』って。だからこそ、いまも恩着せがましく『売れてよかったやろ?』って2人に言い続けているんだと思います(笑)」
――福田さんは、どうやって2人のやる気を駆り立てたんですか?
福田「『このトリオで優勝できるチャンスがあるとしたら、もう絶対今年しかない』と思ったから、THE W決勝の2か月前に『優勝する人のマインドになろう』という話をしました。わかりやすく噛み砕いて、2人に話した記憶があります。覚えてる?」
ゆめっち「もちろん覚えています。周りがネタ合わせしながらずっと稽古しているような時に、うちらは優勝するためのマインドを作る時間に、3時間くらい充てていましたからね」
福田「東西南北の場合、ゆうちゃんは『アイドルになりたい』と思ってからが長いし、自分からいろんなチャンスを掴みに行っているけど、ほかの3人はあんまり努力せずに売れちゃっているんですよ。そこも3時のヒロインとちょっと似ているなと思っていて。私だけ2人より芸歴も長くて年齢も上で、同期はみんなテレビに出ていたけど、ゆめっちとかなでは、同期のなかでは、たぶん1番とか2番くらいの早さで売れている。思ったより簡単に夢が手に入ってしまったがゆえの弊害もあるのかもしれないなって思ったりすることもありました」
「優勝してからは、あれよあれよという間にいろんなテレビ番組に出させていただくようになった」(ゆめっち)
――本作には、アイドルグループ「東西南北」として活動するものの、テレビのクイズ番組で答えられずに落ち込む場面や、SNS上でのコメントや評価に一喜一憂する場面などもありました。皆さんもTHE Wで優勝してから、ご自身を取り巻く環境が急激に変化されたのでは?
ゆめっち「確かに、私たちも優勝してからは、あれよあれよという間にいろんなテレビ番組に出させていただくようになって。キラキラしたことが本当に一夜で始まって、全然実感がなかったです。小さい頃からテレビで見ていた大御所MCさんにせっかく話を振ってもらえても、実力がないから上手く返せなくて。キャラ設定で迷走していた時期もありましたね」
福田「いきなり『めっちゃ筋肉つける』とか『坊主にする!』って言いだしてたな」
かなで「優勝して、1日に何本もテレビの収録が入った時は『こんな状態で自分のメンタル持つのかな?』と思っていました。私はメンヘラだから、1回スベっただけでも1日寝込むのに、1日に何回もスベったら、キャパオーバーするんじゃないのかな?って」
福田「それこそ優勝するまでは、SNSで“3時のヒロイン”って入れて検索しても、ライブに来てくれた人のポジティブな感想ぐらいしか上がってなかったのに、一気に批判とかアンチとかも出てくるようになって。それまで習慣的にしていたエゴサの景色と全然違うんですよ」
かなで「テレビに出始めた頃は、SNSにいろいろ書かれた時期があって。全部嫌だけど、全部見ないと気が済まなくなっちゃって、“かなで 嫌い” “かなで つまらない”みたいに、いろんな悪口のバリエーションで検索しては、それを見て泣くっていう、意味のわからないことを繰り返していて(笑)。“かなで 見てられない”とか」
福田「うわ、”かなで 見てられない”で検索してたの!?オモロ(笑)」
ゆめっち「きっとその当時はキツいコメントしか刺さらなかったんだよね。私もすっかりエゴサが癖になっちゃって、スマホを触っている時間はほぼずっとエゴサをしているんですけど、なんとも思わないです(笑)。ただ、ネットニュースの画像だけはかわいいのを使っていただけるとうれしいなって」
福田「あと、言い訳じゃないけど自分の言い分を伝えたくて、ゆうが(SNSの投稿に対する返信を)一瞬書きかけてやっぱり消すところも、すごくいまっぽいですよね。ああいう葛藤って、アイドルに限らず、人前に出る仕事の人なら誰もが抱えていて。『いや、本当は違うねんけど、いろんな事情があっていまはなんも言われへんねん!』って、喉まで出かかることはたくさんあるんです」