星街すいせい、sakuma.が参加!MAISONdesプロデューサーに聞く映画『トラペジウム』主題歌へのアプローチとは?

インタビュー

星街すいせい、sakuma.が参加!MAISONdesプロデューサーに聞く映画『トラペジウム』主題歌へのアプローチとは?

「物語やキャラクターがアーティストとして一人歩きできるのがMAISONdesのストロングポイント」

MAISONdesと言えば、2021年に「ヨワネハキ feat. 和ぬか, asmi」がTikTokでの楽曲再生回数25億回を超え、日本記録を更新。音楽STサービスやYouTubeでのMusic Videoの再生回数の合計も2億5千万回を超えている。その後も、「うる星やつら」の第1期エンディングテーマ「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ feat. 花譜, ツミキ」は音源、Music Videoの再生回数2億回超を記録。ヒット曲を次々と生みだしている。映画の主題歌を手掛けるのは今回が初めてとのことだがどういうことを意識していたのだろうか。

「作品をメタ的に表現するのが主題歌で、基本的に広告的な意味合いも大きいと思っています。映画の広告はおもに映像ありきだから広告を打てる場所が限られているけれど、音楽なら有線放送などでいろんなお店や商業施設でも流してもらえます。音楽ニーズが映画を広げることも多々あるし、逆に映画を観た人の印象に音楽が残れば、その後も何度も聴いてもらえます。外に拡販していく量がこんなにずば抜けたメディアは、音楽以外にありませんね」。

ボランティア活動や観光ガイドのお手伝いをするなどアイドルになるためのプランを実行していく
ボランティア活動や観光ガイドのお手伝いをするなどアイドルになるためのプランを実行していく[c]2024「トラペジウム」製作委員会

続けて、MAISONdesにおける楽曲制作で軸にしているものについて聞くと、一つの成功例といえる「うる星やつら」になぞらえて説明してくれた。

「なにかの作品とタイアップする際には、その作中の人物の感情やストーリー上の人間関係を“因数分解”することを意識しています。『うる星やつら』ではメインヒロインであるラムちゃんの感情を因数分解して楽曲を制作し、ラムちゃんのビジュアルを二次創作させていただいたこともあって、ラムちゃんという存在をアーティストにすることができたと思っています。作品が持っている物語やキャラクターを、アーティストとして一人歩きできるコンテンツにできることは我々のストロングポイントだし、ほかのクリエイターが持っていない部分です」。

 着実に憧れの”アイドル”へと近づいていく「東西南北」の4人
着実に憧れの”アイドル”へと近づいていく「東西南北」の4人[c]2024「トラペジウム」製作委員会

「『トラペジウム』の感情の揺れ動きと、VTuberがなりたいと思う自分になろうとする“エモさ”は一緒」

“感情やストーリーの因数分解”とは、物語やキャラクターを構成する要素を分類し整理する作業。それによって物語やキャラクターにとって重要な要素が絞られ、そこに最適な歌い手やクリエイターを選定していくこともできる。『トラペジウム』は「アイドルになりたい女の子の青春譚」であり、そのなかで巻き起こる人物の感情や人間関係の機微を因数分解することで浮かび上がったイメ―ジにはまったのが、ホロライブに所属する人気VTuberの星街すいせいと、作詞・作曲・編曲を担当したクリエイターのsakuma.だ。

「今回はアイドルを目指して青春を謳歌する物語で、そこには悔しい思いや達成感なども含まれます。さらにアイドルの不合理性と、“十代の青春の美しさ”をエッセンシャルした楽曲を表現しようとした結果、VTuberの星街すいせいさんに辿り着きました。そもそもバーチャルはとても不合理な世界で、本来的には人間が生きるうえで必要ないものなのに、そこに強烈に憧れてしまう人がいて、自分の姿、形を変えてまで表現活動を行っています。『トラペジウム』で描かれている感情の揺れ動きは、VTuberの方々がなりたいと思う自分になろうとして活動していることに通じる部分があり、煮詰めていった先の感情の種類は一緒なんじゃないかと考え、星街さんにお声掛けしました。原作者の高山一実さんも、楽曲を聴く前は親和性があるか想像がついていなかったようですが、実際に歌声を聞いたら腑に落ちたようでした」。

主題歌「なんもない」のボーカルを務めるのは、「ホロライブ」所属のアイドルVTuber、星街すいせい
主題歌「なんもない」のボーカルを務めるのは、「ホロライブ」所属のアイドルVTuber、星街すいせい

「sakuma.さんは一瞬を切り取ることに長けていている」

一方のsakuma.は音楽ユニット「終電間際≦オンライン。」というプロジェクトでも活動している気鋭のクリエイターで、ClariSなどのアーティストにも楽曲提供を行っている。

「終電間際≦オンライン。は、“終電間際”という一瞬をいろんな角度から切り取って表現しているユニットです。sakuma.さんはアイドルグループを作ろうと思った経験はないかと思いますが、”誰かの一瞬“を切り取ることに長けていて、きっとアイドルの“青春”に寄り添った楽曲を作っていただけるのではないかと思いお願いしました。そうして生まれた楽曲を聴いた純粋な感想としては、メロディと言葉がすごくいいのはもちろん、“せつないけど暗くない”が特に印象的でした。このような相反するものが同居していることは、何回でも消費してもらえる要素の一つで、sakuma.さんと星街さんの手腕にとても感謝しています」。


音楽ユニット「終電間際≦オンライン。」のsakuma.は主題歌の作詞、作曲、編曲を務める
音楽ユニット「終電間際≦オンライン。」のsakuma.は主題歌の作詞、作曲、編曲を務める

「“なんもない”という言葉の持つ解釈性の広さからタイトルにしました」

「なんもない」という、ネガティブな印象を与えかねない楽曲タイトルもユーザーを強く惹きつけそう。しかし、歌詞を読み、楽曲を聴くと、なんとなく寄り添ってくれていて、自己肯定感が上がるものになっている。

「sakuma.さんが書いた『僕がいちばんなんにもないんだろう。君もいちばんなんにもないんだろう』というサビの歌詞を読み、“なんもない”という言葉の持つ解釈性の広さから、魅力的な言葉だと思ってタイトルにしました。でも僕は、“なんもない”ことは、そんなに悪いことではないと思っています」。


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