「脳みそくれ~」フィギュア業界は“バタリアン戦国時代”だ!【豆魚雷の「遊星からの物欲X」】
洋画やアメコミのグッズを多数取り扱うことで、映画ファンにはお馴染みのキャラクターショップ「豆魚雷」。このたび「MOVIE WALKER PRESS」のホラー特化ブランド「PRESS HORROR」で、豆魚雷スタッフがホラーキャラクターへの愛を叫ぶ連載「遊星からの物欲X」をスタート!
第1回は国内初となるBlu-rayが発売中の、ダン・オバノン監督によるホラーコメディ映画『バタリアン』(85)をピックアップ。キャラ立ちしまくったゾンビたちは近年多くのアイテムがリリースされており、フィギュア業界ではにわかにブーム中。ここからは専門店ならではのアツい原稿を、たっぷりとお届けしよう!
それまでのゾンビとは一線を画す!「走る・喋る・死なない」無敵の三拍子
みなさんどうも初めまして。好きな映画監督はギャスパー・ノエとダリオ・アルジェント、普段は「豆魚雷」のブログを執筆しているサムゲタン市川と申します。記事に関してはトーシロですが、何卒最後までお付き合いいただければ幸いです!
突然ですが、“ゾンビ”と聞いて思い浮かべる映画はなんでしょうか。往年のホラー映画ファンであれば『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(68)や『サンゲリア』(79)、若い方であれば『バイオハザード』(02)や『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)などが思い浮かぶのではないかと思います。
そんな数あるゾンビ映画のなかで真っ先に『バタリアン』を思い浮かべた方、握手をしましょう。本作は数年前まで“喰わず嫌い”していた私にゾンビ映画のおもしろさを教えてくれた、先生のような作品なんです。ここからは、従来のゾンビ観をひっくり返すような『バタリアン』の魅力、「走る・喋る・死なない」の三点を紹介していきましょう。
バタリアンたちは、それはもうめちゃくちゃ速く走ります。応援に駆け付けた救急隊を大群で襲うシーンでは、隊員に見事なタックルをかますほど殺る気に満ちている。『ナイトメア・シティ』(80)と共に“走るゾンビ”の先駆けになった本作は、『28日後…』(02)や『ドーン・オブ・ザ・デッド』(04)など、後年描かれたゾンビ像にも大きな影響を与えていますね。
加えて、ある程度の会話が出来る知性も兼ね備えています。鎖や巻き取り機を用いて扉をこじ開けたり、獲物をおびき寄せるために無線機を使うなど狡猾な一面も。バタリアンとの会話からは、彼らは死んでいることの痛みを全身で感じていることや、脳を食べるとその痛みが消え去る、ということを知ることが出来るのですが、ゾンビ自身の口から心情や人間を襲う目的が語られるのは、星の数ほどあるゾンビ映画でもなかなかに珍しいのではないでしょうか。
そして極め付きは、死なないということ。「ゾンビを殺すには頭を狙うべし!」というのがセオリーですが、本作では、蘇った"新鮮な死体"の頭部にツルハシを突き立てたものの死なず、「映画と違うぜ!」と叫ぶやり取りがあることから、それまでのゾンビ映画とは一線を画す作品であることがわかると思います。また、燃やしたとしても、煙を介してさらなるバタリアンを生みだしてしまうので、厄介極まりないのです。
オバンバと呼ぶのは日本だけ?Blu-rayならではのマニアックな楽しみ方
先日発売となった国内初のBlu-rayは、「金曜ロードショー」版の吹替が収録されているのもファン的にうれしいポイントでした。テンションが高い吹替自体が楽しいことはもちろんですが、字幕と吹替を見比べることで、『バタリアン』ならではの楽しみ方ができるからです。
例えば主人公フレディとその上司フランク、そして社長バートの3人が、"新鮮な死体"の対処に四苦八苦するシーン。吹替では「一体どうすりゃ殺せるんだ!」「どうやっても死なないのかもしれないぞ」「なにも残らないように溶かしてしまう方法があれば」と訳されている会話も、字幕では「殺せんぞ」「そうさ ハゲのタフ野郎だ」「まったくハーゲンタフだ」となっています。
ほかにも字幕では、葬儀社の遺体処理係アーニーと上半身のみとなった女性バタリアンの会話「You can hear me?」「Yes」が「名前は?」「オバンバ」と訳されていたりと、目立った出番のあるバタリアンにキャッチーな通称が取り入れられています。
実は、彼らのハーゲンタフ、オバンバといった呼び方は、日本の配給会社が独自に付けたものなのです。エンドクレジットでは、ハーゲンタフは"Yellow Cadaver"、オバンバは"1/2 Lady Corpse"と表記されています。なお、タールマンは"Tarman"なので彼だけは公式な呼称です。公開当時のチラシには特撮作品のごとくゾンビキャラの解説が載っていたりと、小学生に大流行した理由の一端がここに感じられます。
字幕翻訳を手掛けたのは進藤光太さん、吹替翻訳はたかしまちせこさんが担当。両者共にユーモラスな翻訳となっており、どちらで観ても楽しめることは間違いありません。Blu-rayならば吹替音声に字幕を重ねて、翻訳の違いを見比べながら鑑賞する…なんてマニアックな楽しみ方をしてみるのもいいかもしれません。
1995年創業の「キャラクターショップ」。株式会社Ampusが運営する実店舗(高円寺店)、およびショッピングサイトで洋画やアメコミ、ゲームを中心としたフィギュアなどを始め、「豆魚雷」でしか買えない限定商品やオリジナル商品を多く取り扱っている。
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