ゼンデイヤ主演『チャレンジャーズ』が北米No.1スタート!配信では“第二の『Saltburn』”となれるのか
北米映画界は今年2回目の閑散期のまっただなか。その大きな要因となっているのは、昨年長期にわたって続いた脚本家組合と俳優組合のダブルストライキによって陥った作品不足(あるいは、大作不足)が深刻化しているからにほかならない。2月ごろにあった1回目の閑散期は、まさにそのストライキの影響でプロモーションが困難となり公開延期になった『デューン 砂の惑星PART2』(日本公開中)に救われる格好となったが、この2回目を打破する糸口になりそうな作品はなかなか現れない。
先週末(4月26日から28日)の北米興収ランキングで初登場No. 1を飾った『チャレンジャーズ』(6月7日日本公開)もまた、ストライキの影響で公開延期を余儀なくされた一本である。本来であれば昨年の8月末に開催されたヴェネチア国際映画祭で華々しくオープニングを飾り、9月中旬に北米公開を迎え、あわよくば賞レースに絡むかもとまで期待されていた作品ではあったが、こうして半年以上経ってようやく公開を迎えることになった。
3477館で封切られ、初日から3日間の興収は1501万ドル。この数字は2024年にオープニング1位を飾った作品としては最も低い興収となる。それでもルカ・グァダニーノ監督作品としては最高のオープニング成績であり、監督の代表作である『君の名前で僕を呼んで』(17)の北米最終興収は公開からわずか5日で上回ることに成功。とはいえこれまでアートハウス映画が中心だったグァダニーノ監督だけに、単純比較は難しいところだ。
公開延期というネガティブになりうる要素がプラスに働いたとすれば、まず1つは本作で主演を務めたゼンデイヤがヒロインを演じた『デューン2』よりもあとの公開になったこと。現地メディアの報道によれば、観客の半数近くがゼンデイヤを目当てに来場していると回答しているようで、現状今年最大のヒットとなっている『デューン2』から本作に流れてきた観客も少なくはないと推察できる。そしてもう1つは、この超閑散期に公開されたからこそ“No. 1スタート”という大きな箔をつけることができた点である。
制作費5500万ドルの本作が北米興行だけでそれを回収するのは、オープニング成績を見るに少々難しそう。しかし本作の北米配給を務めるAmazon MGMスタジオが見越しているのは、興行的成功ではなくPrime Videoでの配信時にいかに盛り上がるかであろう。昨年の感謝祭時期に劇場公開された『Saltburn』(23)は、北米興収は約1000万ドルとまずまずだったが、劇場公開から1か月後に配信されるや世界規模で大熱狂を獲得。『チャレンジャーズ』の成否は、“第二の『Saltburn』”になれるかどうかで決まることになるはずだ。
しかも批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、批評家からの好意的評価の割合は89%と高い水準をマーク。当初の秋シーズンの公開と比較すれば賞レース参戦にはやや不利な春公開ではあるが、既存の映画業界のルールを打破するAmazon MGMの戦略次第では、来年の賞レースに名を連ねてもまったく不思議ではないだろう。
文/久保田 和馬