『破墓 パミョ』『ソウルの春』「ムービング」が躍進!第60回百想芸術大賞授賞結果&名スピーチを紹介
Disney+「ムービング」が3冠王!イ・ジョンハが明かした撮影秘話とは?
ドラマ部門で大賞に輝いたのは、やはり昨年のドラマ界で旋風を巻き起こした「ムービング」だった。演出を手がけたパク・インジェ監督は、「最終話で、ボンソクが宇宙に飛んでいくときに後ろにクレジットが出ています。その中に、私たちだけでなく、第1部から第20部まで参加したすべての俳優、そして全世界にいるすべてのスタッフのクレジットをその中に入れました。 そのクレジットの皆さんに感謝の気持ちを伝えたいと思います」
さらにドラマ部門新人男優賞をイ・ジョンハが獲得。ボンソクの可愛らしさを残しながらもすっかり精悍な顔立ちとなった彼は、「とても大きな舞台でノミネートされただけでも本当にありがたいですが、このような賞までいただけることが不思議です。ドキドキしています。実は、バンジージャンプが出来ないので撮影中怖かったんです。ワイヤーに乗って空を飛ぶシーンは本当に怖かったんですが、“僕にできるだろうか?”思うたびに監督が“できる!”と励ましてくださったり、共演した先輩や仲間がいてくれたのでやり遂げられました」と、撮影秘話を明かすとともに初々しい喜びを口にした。
脚本賞を獲得した原作者カン・プルは、『拝啓、愛しています』(11)の大ヒット原作も手掛けたベテラン漫画家だ。そうした自身のプロフィールを背負うかのように、業界活性化へ向けた一言も添える。「会場に来てみたら、私を含めて漫画家が3人いるんですよね。 でも誰も今は漫画を描いてないんです。それだけ漫画業界で食べていくことが大変だということです。 僕らの漫画家の先輩、後輩、仲間の方々にもエールを送りたいです」
一方、傑作揃いの韓国ドラマ界は、1つのシリーズばかり独占というわけには行かない。こちらもまた韓国ドラマファンを騒がせた「マスクガール」組が快挙を成し遂げた。助演男優賞をチュ・オナム役アン・ジェホン、助演女優賞を、彼の母ギョンジャを演じたヨム・ヘランが制したのだった。
特にアン・ジェホンは、薄い頭髪などで普段の彼とは全く異なる見た目を作り込んで臨んだ。「この作品を撮影しながら、本当に各々のアーティストの方々が集まって、自分の手と息が触れる瞬間に唯一無二の何かが誕生することを経験をさせていただきました。私の外見を作り上げてくださったソン・ジョンヒ扮装監督に感謝の言葉を伝えたいです。 「マスクガール」とオナムへの皆さんの愛のおかげで、俳優として歩んでいくための勇気と安らぎを得ることができたようです。多くの視聴者の皆さんに心から愛を伝えたいと思います」と話し、オナムを象徴する日本語のセリフ「愛してる!」を再現して会場を和ませた。
混戦模様に割って入ったのが「恋人(原題)」だった。丙子の乱を背景に、戦乱に翻弄されながら愛し合う二人を描いた本作は、現在日本で未配信ながら、有料放送で先行視聴していたファンからは熱い支持の声が広がっていた。見事ドラマ部門作品賞と主演男優賞の主要部門を獲得した、演出のキム・ソンヨン監督は「私が作品開始時、そして作品の途中で俳優さんやスタッフの皆さんに何度も何度も叫んでいた話があります。 “百想(芸術大賞)へ行こう!”でした。ノミネートされただけでも光栄だったのに、こんなに大きな賞を…」と喜びを爆発させた。愛を信じていないヒロイン・ギルチェ(アン・ウンジン)をひたむきに愛するミステリアスな男・ジャンヒョンを演じ栄光を獲得したナムグン・ミンも感無量の表情だった。なお、「恋人(原題)」はU-NEXTにて7月3日より独占配信だという。
映画もドラマも一作品独占ではなく、底力と個性を持つ作品と俳優が賞を分け合う形となった百想芸術大賞。傑作が揃う韓国エンタメの賞レースがいかに熾烈かを証明する結果となった。
文/荒井 南