新世代スターの共演に絶好のロケーション!“ロマコメ新時代”の到来を告げる『恋するプリテンダー』はなぜ旋風を巻き起こしたのか

コラム

新世代スターの共演に絶好のロケーション!“ロマコメ新時代”の到来を告げる『恋するプリテンダー』はなぜ旋風を巻き起こしたのか

リゾートウェディング気分を満喫!監督激推しのロケーション

もう一つロマコメ映画に欠かせないのは絶好のロケーション。従来のロマコメ映画では比較的現実の生活に近しいシチュエーションが好まれやすい傾向にあり、それこそ『アパートの鍵貸します』(60)の時代から、ニューヨークに代表されるような都会的なロケーションが目立ってきた。

ウィル・グラック監督お気に入りのオーストラリアが物語に華を添える
ウィル・グラック監督お気に入りのオーストラリアが物語に華を添える

しかしさらに遡っていけば、説明不要のロマコメ映画の名作『ローマの休日』(53)があり、近年ではエスニックな雰囲気を携えたシンガポールを舞台にした『クレイジー・リッチ!』(19)が大ヒットを記録(結婚式に出席するために渡航する点でも本作と共通している)。こうした普段の生活から離れた場所、しかもそれが非日常的であればあるほど映画的な魅力は高まっていく。

本作の舞台となるのはオーストラリアのシドニー。グラック監督は「ピーター・ラビット」シリーズの撮影で訪れたオーストラリアにすっかり魅了されたようで、「シドニーで4か月過ごしたかったので、この映画の舞台をシドニーに設定しました」と本音をぽろり。「自分勝手だとは思いますが、キャストたちも私と同じくらい、この場所を好きになるだろうという自信がありました。そして実際、そうなりました」と語っている。

まるで観光気分!スクリーン越しにシドニーの名所をめぐる
まるで観光気分!スクリーン越しにシドニーの名所をめぐる

劇中にはオペラハウスはもちろんのこと、シドニー・ハーバー・ブリッジやボンダイビーチ、パームビーチ、ザ・ロックス、シドニー・クリケット・グラウンドといった、グラック監督がその魅力を伝えたくてたまらないシドニーを象徴する場所が次々と登場。さらにシドニー湾を航行するスーパーヨットの上でも撮影が行われるなど、“観光映画”としての側面も有している。まさにこの映画を観れば、ビーとベンら登場人物たちと一緒にリゾートウェディングに出席してオーストラリアの絶景を満喫した気分を味わえること請け合いだ。

TikTokで口コミが急拡大!異例のサプライズヒットに

ホリデーシーズンの公開からじわじわと口コミが広がり、全世界興収2億ドルを突破
ホリデーシーズンの公開からじわじわと口コミが広がり、全世界興収2億ドルを突破

北米では公開初週の週末興収ランキングでは4位スタート、しかもオープニング興収は600万ドルとまずまずの滑りだしだった本作。しかし翌週、翌々週と3週続けて右肩上がりの週末興収を記録。そして公開18日目にはデイリー興収ランキングで1位を獲得することになる。上映館数を急激に増やした作品であれば珍しい話ではないが、本作の場合はそうではない。まさに異例のヒットといえよう。


その後押しになったのは、公開直後から本作に惚れ込んだ多くのインフルエンサーたちが猛プッシュする動画をTikTokなどのSNSに投稿したこと。これがきっかけで多くの若者層が劇場に足を運んだことはいうまでもない。アメリカの批評集積サイト「ロッテン・トマト」によれば、一般の観客からの好意的評価の割合は87%と抜群に高い。

突き抜けた娯楽性こそロマコメ映画の最大の持ち味!
突き抜けた娯楽性こそロマコメ映画の最大の持ち味!

往年のロマコメ映画ファンも、若い世代をも虜にした、まさに“王道中の王道”を極めることに成功した『恋するプリテンダー』。いったいどれほど魅力的な作品になっているのかは、実際にその目で確認してみるのがいいだろう。肩の力を抜いて映画館に足を運び、絶景を舞台に繰り広げられる愉快痛快なロマコメ展開を浴びたら、この上なく清々しい気分を味わえること間違いなしだ。

文/久保田 和馬

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