『碁盤斬り』草なぎ剛×白石和彌監督が対談!同い年である2人の共通の記憶は「SMAPが辿ってきた道」
「囲碁の対局シーンは、演出をシンプルにしながら画作りと音楽で魅せていく」(白石)
――『麻雀放浪記2020』(19)で坊や哲だった斎藤工さんが、格之進と因縁のある武士、柴田兵庫として碁を打つ姿には痺れました。転生したのかと。白石和彌ユニバースですね。
白石「ユニバースなんてそんな大層なものではないですが、遊び的な意味ではそのねらいもたしかにあります」
草なぎ「工くんは僕が主演したテレビ朝日系ドラマ『スペシャリスト』の最初の犯人役だったんですよ。その特番シリーズが成功したことで連続ドラマ化したという背景があるので、工くんに対する思い入れがありました。しかも今回も敵役ということで、僕としては集大成という気持ちを込めて対峙しました。自分としてもいいシーンになったのではないかと思っています」
白石「ちなみに格之進と兵庫の囲碁勝負の際、背景に富士山が見える演出をしました。現代では高い建物があるから見えない位置なのですが、当時は実際見えたはず。ならば富士山は入れておきたいよねと」
――CG処理で行ったのですか?
白石「CGではないです。時代劇なので撮影手法も昔の時代劇でやっていたような形でやろうと思ったので。ベニヤ板を切って色だけ塗ってもらって、それを背景セットとして置きました」
――過去の時代劇からヒントを得たシーンもあるのでしょうか?
白石「時代劇は結構観ました。なかでもヒントにしたのは『人情紙風船』。長屋の住人たちが楽しくお酒を飲むシーンは『人情紙風船』にもあって、長屋の奥に先がないのは彼らに未来がないことの隠喩だと山中貞雄監督はインタビューで語っていました。それに習って『碁盤斬り』でも長屋の屋根の上に工事のための職人を配置しています。
吉原大門の前の橋は加藤泰監督の『緋牡丹博徒 お竜参上』に出る今戸橋の図面を基に同じスタジオで作りました。脚本では橋とは書いていなかったものの、クライマックスの大門前でドラマチックなことが起こるので、それをどう見せようかと悩んでいた時に美術の今村力さんが提案してくれました。実際の吉原大門は劇中セットよりも大きいです。ただリアルに再現しようとすると予算の問題があるので、ならば橋も含めてデフォルメしようと。デフォルメするならばどんな形がベストなのか?吉原のセットはそんな逆算から生まれました」
――囲碁の対局シーンでのこだわりも教えてください。
白石「それこそ参考に、『神の一手』やチェスの『クイーンズ・ギャンビット』も観ました。でも今回やろうとしている時代劇の演出法とはマッチしない気がしたので、演出はシンプルにしながらカメラの質量を上げた画作りと音楽で魅せていこうと。それによって画に重みが出るし、格之進が向き合う囲碁勝負の精神性が浮かび上がるのではないかとの計算もありました」
――たとえ囲碁のルールがわからなくても、静謐な演出によって白熱さと緊張感が醸し出されているように思いました。
白石「将棋やチェスと違って、ルール的にも囲碁を撮るのは難しいと思います。将棋やチェスは駒を取るアクションがあるけれど、囲碁にはそれがない。とはいえ攻められた側に『あ!』とリアクションをさせるのはトゥーマッチ。オーバーにせずいかに対局の緊張感を出すのか、そこは悩みました。國村(隼)さん演じる萬屋源兵衛との最初の対局シーンは一度編集してみたものの、何カットか足りない気がして後日追加撮影をしました。初めての事なので実際にやってみないとわからないことだらけですね(笑)。そこでコツを掴めたので残りの対局シーンはスムーズになりました」
草なぎ「こだわりますね~!まさにセンス」