『陰陽師0』佐藤嗣麻子監督と夢枕獏が語り合う、お互いの作品の魅力「獏さんの文章は、改行がカット割りに近い感覚」
「次は八百比丘尼をやろうと思っています」(佐藤)
――佐藤監督に「陰陽師」のこの話をやってほしい!というのはありますか?
佐藤「ないよね(笑)」
夢枕「あんまり言うと、ろくなことがないので(笑)」
佐藤「今作では、(蘆屋)道満とか出さなかったんだけど、原作の道満は何歳ぐらいの感じなんですか?」
夢枕「昔だったら山崎努さんのイメージだったんだよね」
佐藤「どこら辺?『八つ墓村』ぐらい時の?」
夢枕「『マルサの女』で片足が不自由な男性やったでしょ。あれから15年ぐらいの間のイメージかな。あの山崎努さんが、ちょっとひょうきんでワルでさ。足が不自由なことの苦労を見せないで、ちょっと主人公の女性を口説きかけたりする感じが、なんか道満の感じに近いかなと感じていました」
――小説を執筆している際に、俳優さんの顔が浮かぶことはあるのでしょうか。
夢枕「それはないですね。ただ、一時、博雅は岡野(玲子)さんの描く博雅が浮かんでいましたね」
佐藤「岡野さんが書いている時に、あれは加藤剛さんを思い浮かべているって話していたよ。それじゃあ、登場人物の声はどうなんですか?声が聞こえてくるのか、文章が見えてくるのか」
夢枕「具体的にどの役者っていうのはないかなあ。自分の中ではイメージとしてはあるんですけど。結構もう自分で喋りながら書いていますね」
佐藤「それで私は小説読むと、『獏さんだ…』って思うんだ。獏さんが朗読してくれている」
夢枕「登場人物になりきって書いていますね」
佐藤「すごいかっこいい美形キャラも獏さんだ(笑)」
夢枕「(笑)。だから『陰陽師』で言うと晴明と博雅と道満には、自分の中のなにかが全部入ってますね」
――イベントなどで佐藤監督は、『陰陽師0.1』『陰陽師0.2』と続編を作っていきたいとお話されていました。最後にこの構想を教えてください。
佐藤「次は八百比丘尼をやろうと思っています」
夢枕「“0”だと無限にできるんじゃない?“0.1”から“0.9”までいって、そのあとに“0.91”と続けて…」
佐藤「あと“1”になって、原作のエピソードもやりたいとも思いますね。ただ毎回お酒を飲むシーンから始まって、そのあとどこかに行ってまた戻ってくるという構成だと、やっぱり連続ドラマ向きだと思うんです。映画にするとしたら別の構成を考えないといけないかもです。いずれにしても獏さんと同じく、私も晴明と博雅をまだまだ描いていきたいですね」
取材・文/編集部
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記