「『ゴジラ-1.0』はブラムハウスに通ずる」ジェイソン・ブラムが明かす、“恐怖”を具現化するクリエイティビティの秘密

インタビュー

「『ゴジラ-1.0』はブラムハウスに通ずる」ジェイソン・ブラムが明かす、“恐怖”を具現化するクリエイティビティの秘密

『エクソシスト/信じる者』(23)、『透明人間』(19)などのブラムハウス・プロダクションズと、「ソウ」、「死霊館」シリーズなどのヒットメイカー、ジェームズ・ワンが再タッグを組んだホラー映画『ナイトスイム』が公開中。PRESS HORRORでは本作のプロデューサーであるブラムハウス・プロダクションズのCEO、ジェイソン・ブラムへ独占インタビューを敢行した。

本作は憧れのプール付き物件を購入した一家を襲う恐怖を描いたホラー。『ナイトスイム』で商業長編監督デビューを飾ったブライス・マクガイア監督が2014年に発表し絶賛された同名ショートフィルムをベースに、長編映画化した。

憧れのプライベートプールを裏庭に備えた郊外の家を購入した、元メジャーリーガーのレイ(ワイアット・ラッセル)とその一家。レイは難病発症によってプロ野球選手からの早期引退を余儀なく迫られたが、いまでも現役復帰を夢み、理学療法を兼ねてこの物件を選んだ。だが弟、姉と遊泳中次々にプールへ引き込まれる恐怖体験をする。長年使われていなかったこのプールに潜む謎が、やがて一家を逃れる事の出来ない葬られた過去の奥底へ引き摺り込んでいく。

「『ゴジラ-1.0』はブラムハウスの映画に通じるものがありました」

――『ナイトスイム』はホラーですが、“願いごと”が重要な要素になっていますね。だからちょっとおとぎ話というかダークファンタジーですね。

「ええ。最近ではディズニーの『ウィッシュ』も同じ“願い”をテーマにしていましたが、あちらは空の星に、こちらは薄暗い地下の水に願いをかける、という大きな違いがありますね(笑)」

我々の取材に気さくに応じてくれたジェイソン・ブラム
我々の取材に気さくに応じてくれたジェイソン・ブラム撮影/河内彩

――『M3GAN/ミーガン』や『ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ』と機械仕掛けのホラーが続いて、今度は“水”のホラーですね。しかも怪物がいる海や、仮面の殺人鬼が潜む湖ではなく家のプールです。

「そう、プールというのは不思議な場所です。昔からあるものだし、でもいまも使っている。そしてすごく身近な場所ですよね。そこで怖いことが起こる、ここが本作の魅力です。この映画のモンスターはプールそのものですから」

――家のプールが恐怖ゾーンというになるということですね。先に挙げた2作もそうでしたが、今回も家族の物語ですね。

「そうなんです。自分たちが作るホラーは“家族の物語”であることが重要な要素になっています。要するに、ホラーというのはありえないことが起こるわけですよね。だからこそ、家族という一番リアルで共感しやすい要素を絡ませることで物語への没入感も違ってきます。また、自分たちに近い生活シーンのなかで事件が起こった方が観客も『もし自分の身に起こったらどうしよう』と問いかけやすいわけです。そういう意味で、『ゴジラ-1.0』は非常に自分たちの映画に通じるものがありました。あの作品も怪獣と家族のドラマをうまく組み合わせていますからね」

「ブラムハウスは“フィルムメーカーの役に立つ会社”でありたいと思っています」

【写真を見る】水のなかから見つめるものは…衝撃のビジュアルに絶句する『ナイトスイム』
【写真を見る】水のなかから見つめるものは…衝撃のビジュアルに絶句する『ナイトスイム』[c]2023 Universal Studios. All Rights Reserved.

――ところで本作は、特にクライマックスのたたみかけは、ジェームズ・ワン監督の「死霊館」シリーズに通じるものを感じました。

「その通りです。実は『ナイトスイム』はもともとジェームズ・ワンの率いるアトミック・モンスターの企画だったのです。彼が本作の原典であるショートフィルムを気に入り映画にしたんです。制作の過程でブラムハウスと合併したことで、私も参加することになりました」

――ジェームズ・ワンの名前が出たところで、アトミック・モンスターとブラムハウス・プロダクションズの合併についてお聞きしたいのですが、ビジネスパートナーでもあるワンはどういう方ですか?

「まず、彼ほど人を怖がらせるツボを押さえたクリエイターはほかにいないと思います(笑)。例えば彼に映画の脚本を渡して4時間の時間を与えたら、まったく違う怖くておもしろい作品に仕立てなおしてくれますよ。一番の違いは僕は“80%ビジネス、20%クリエイティブ”の人ですが、ワンは“20%ビジネス、80%クリエイティブ”なんです。お互い違うから上手くいくし尊敬し合えます。合併こそしましたが、一つの会社のなかで『ブラムハウス』と『アトミック・モンスター』という2ブランド制にして、部屋も別、映画作りも別で展開します。映画を作るうえで一つのやり方がいい、ということはないので1つの傘のもとでブラムハウスとアトミック・モンスターが別々の映画作りを走らせるほうが、ノウハウも貯まるし、ビジネスチャンスが広がりますから」

――あなたとワンで、映画作りについての違いはどんなものがありますか?

「作家に対するスタンスが少し異なるかもしれません。今回の『ナイトスイム』は2014年のショートフィルムを原案にしており、その作品を作ったブライス・マクガイアが初めて長編映画の監督をしています。つまりワンは新人にチャンスを与えたわけです。今後も彼は新しい才能を発掘していくでしょうが、僕は新人というよりすでに監督としてデビューしている人を積極的に起用します。そしてその監督は…ちょっといま元気がない人といいますか、才能あるのに少しトレンドからそれてしまって作品を作る機会に恵まれていない人です。例をあげると、ジェームズ・ワン自体がそうでした。彼は『ソウ』シリーズでブレイクしたあと少しスランプ気味でしたが、僕は彼の才能を信じていたので声をかけました。そうして生まれたのが『インシディアス』です。僕はブラムハウスを“フィルムメーカーに役立つ製作会社”したいと思っているんです」

――水がテーマだからでしょうか?『ナイトスイム』のじめっとした感じは日本のホラーに近いものを感じます。Jホラーの監督がブラムハウスで作品を作ることもありえるでしょうか?

「もちろんです。そのための条件はまず低予算で作れることです。この意味を誤解しないでほしいのですが、予算はクリエイティビティの敵です。予算が膨らめば膨らむほどリスクを考えて挑戦できなくなるんですよ。それは企画選びに冒険をしなくなる、ということでもあります。僕は企画を選ぶ際、『ほかとは違う新しさがあるか』、『おもしろいストーリーか』、なによりも『怖いか』、という点を大事にします」

――いつかJホラー×ブラウハウスの映画を観てみたいです。ありがとうございました!

『ナイトスイム』は公開中!
『ナイトスイム』は公開中![c]2023 Universal Studios. All Rights Reserved.


取材・文/杉山すぴ豊

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