「すみっコぐらし」脚本家・角田貴志も『ブルー きみは大丈夫』に共感!「実生活と結びついて描かれているからこそ、惹きつけられた」
子どものころの空想の友達が、本当に存在していていまでも自分を見守っていてくれるとしたら…。「クワイエット・プレイス」シリーズのジョン・クラシンスキー監督が手掛ける映画『ブルー きみは大丈夫』(公開中)。母親を病気で亡くし、心に傷を抱えた少女ビー(ケイリー・フレミング)のもとに現れた子どもにしか見えない不思議な存在“ブルー”との心の交流を描き、子どものころの大切な“夢”や“思い出”に巡り合う物語だ。
優しくて“もふもふ”なブルーが友達だった子どもは、いまは大人になり、彼のことを忘れてしまったという。居場所がなくなったブルーはもうすぐ消えてしまう運命。ビーは大人だけどブルーが見える隣人の男性カル(ライアン・レイノルズ)の力を借りて、ブルーの新しいパートナーを探すことになる。かわいいキャラクターがたくさん登場し、子ども向けに見えるが大人にも響く!と話題の本作を、大人も感動する『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(19)、『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』(23)の脚本を担当した角田貴志は“大人”、“脚本家”、“自分自身”といろいろな目線で楽しんだようだ。
※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。
「実生活と結びついて描かれているからこそ、惹きつけられる」
「お話がコンパクトにまとまっていて、観やすかった」という角田は、邦題のタイトルから自分が想像していた結末があったという。「途中までブルーはビーのイマジナリーフレンド(空想の友達)なんだろうなと思って観ていたのですが、途中で頭を切り替えました(笑)。2人の関係は自分が想像していたものとは違ったけれど、そこが意外でおもしろく感じたポイントです」と笑みを浮かべ、本作の予想外の展開に触れる。主人公の少女、12歳のビーは幼いころに母を亡くし、そして今度は父親が病気で入院することから祖母の家に預けられ、そこでブルーたちと出会う。「最初は結構ビターな話かなと思ったけれど、ちゃんとハッピーエンド。もちろんお母さんがいないのは、ビーにとっては寂しいことだけど、終わりは爽やかでよかったなと思いました」と結末も気に入ったようだ。
「子どもが安心して観られるようにと考えて作られていて、大人目線ではまた違った味わいで楽しめる気がしました」と脚本家目線で語る角田。本作を手掛けたクラシンスキー監督は「大人を虜にするための鍵はノスタルジー」とコメントしているが、まさにノスタルジーが大人の心に届いていると共感する。角田自身が考える大人を虜にする鍵は、「実生活や実社会にちゃんと結びつくものが入っていること」だという。
「全部空想でなんでも願いが叶う、ということではないこと。僕の解釈ですが、ビーも病院で出会う少年ベンジャミンも、大人にならなきゃいけないということが描かれています。特に、ベンジャミンにはイマジナリーフレンドが見えないということが明らかになったシーンは、劇中で一番ビターな瞬間だと思いました。だから彼が自分のイマジナリーフレンドを見つけた瞬間はすごくいいなと思いました」と心を動かしたシーンを挙げながら、「ベンジャミンにイマジナリーフレンドが見えない理由、そして見えるようになった理由。無邪気に空想できるようになったのは、彼の置かれている状況に変化があったから。実生活と結びついて描かれているからこそ、惹きつけられたんだと思います」と、角田自身が気になっていた少年ベンジャミンの描かれ方をもとに解説する。
角田自身が本作でノスタルジーを感じたのは遊園地のシーンだという。「僕は子どものころに『グーニーズ』を観ている世代。誰も住んでいない建物になにかがあるかもしれない。そういう想像は大人になったいまでもします。きっと、僕のなかにまだ子どもの心が残っているんじゃないかな(笑)。『グーニーズ』的な思考もそうだし、お金もある程度自由に使えるようになって、昔のおもちゃを買い直したり…みたいなことをしている大人は多いと思うので。僕自身はイマジナリーフレンドという存在よりも、空想の世界や現象のようなものはずっと好きな気がしています」。
角田貴志
俳優、脚本家、デザインナー。1978年生まれ、大阪府出身。2004年、第16回公演より京都を拠点に活動する劇団「ヨーロッパ企画」に参加。Eテレ「銀河銭湯パンタくん」シリーズでは、人形デザインと脚本を担当し、脚本として参加した『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』(19)と『映画 すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』(23)も大きな話題を呼んだ。8月31日(土)から11月9日(土)まで12都市を巡演するヨーロッパ企画第43回公演「来てけつかるべき新世界」に出演する。