ちょっぴりウザいが心に刺さる…吉田鋼太郎扮する昭和親父の“ハンサム”な名言集
伊藤理佐が手掛けた複数の漫画作品を融合させたオリジナルストーリーで、どこにでもいるような普通の家族“伊藤家”の日常が描かれる「おいハンサム!!」。2022年1月期にフジテレビ系列の「土ドラ」枠でひっそりと放送されるや好評を博し、今年4月期には同枠でシーズン2も放送された同作がスクリーンに初見参する映画『おいハンサム!!』が6月21日に公開された。
家族の幸せを願う父の伊藤源太郎(吉田鋼太郎)と、恋や仕事に悩み、もがき続ける三姉妹の長女の由香(木南晴夏)、次女の里香(佐久間由衣)、三女の美香(武田玲奈)。そして超マイペースに家族を見守る母の千鶴(MEGUMI)を中心に、彼らの周囲にいる個性豊かな人々との人間模様が描かれていく本作。その名物といえば、劇中の至るところに散りばめられた、人生の格言とも呼ぶべき胸に刺さる名言の数々だ。
そこで本稿では映画版に備え、テレビドラマ版に登場した“ハンサムな言葉”たちをピックアップ。これまでのストーリーや登場キャラクターと共に振り返っていこう。
「やり残しを恐れずに前向きに生きろ!前向きに倒れろ!」(シーズン1・第3話)
シーズン1は三姉妹の三者三様な迷走を中心に物語が展開。“ホントの自由”を求めて一人暮らしを始めた美香は、漫画家志望のユウジ(須藤蓮)と合コンで出会ったエリートサラリーマンの学(高杉真宙)との間で揺れ動き、里香は夫の大輔(桐山漣)の浮気が発覚したことで大阪から実家へと里帰り。そして仕事も恋愛も順調だと思っていた由香は、交際相手に妻がいたことが発覚する。
そうしたなかで定期的に開かれる“伊藤家リモート会議”で源太郎は、自分の経験をもとにして娘たちを鼓舞するような“ハンサムな言葉”を投げかけていく。シーズン1の第3話では、定年退職した同僚が残していった仕事の資料と家の冷蔵庫の中で忘れ去られる食材たちとを絡めながら、“やり残し”がある人生のすばらしさ、悩むことの必要性を説く。そんな源太郎に娘たちは、「なに言ってんのハンサムで」「出たよ、ハンサムで」「ハンサムでなに言ってんの」(ハンサムで=いい顔しての意味)といつも通りの反応。しかし、この言葉あたりから娘たちの日常は大きく動きだしていく。
「時代は変わる、尺度も変わる。流されるな。わからないことを批判するな。視野を広く持て」(シーズン2・第1話)
昭和気質な父親が、時代の変化に触れてアップデートしていく作品がここ最近のテレビドラマのトレンドの一つになりつつある。一見すると本作もその流れを汲んだ作品に思えるかもしれないが、源太郎は社会の流れにもともと敏感で、その都度、柔軟に対応していけるアップデート済みの昭和親父。頑固に信念を曲げない一方、自分自身や家族、部下のためにあらゆることを見つめ直し、守るべきものを守り、変えるべきものを変えていく。この源太郎のスタイルこそ、本作の愛すべきところだ。
シーズン2の第1話では、そんな源太郎が首を寝違えてコルセット生活を送ることになったのをきっかけに、改めて物事の本質を見つめ直し覚醒する様が描かれた。終盤で語られたこの“ハンサムな言葉”は、あらゆる先入観で凝り固まった視点が、結果的に自分自身の日常をネガティブなものにしてしまうのだと説く。コルセット姿で説得力がないと笑う里香と美香に対し、近所に住む独身女性の大杉さん(富田靖子)との出会いで自分の先入観に気が付いた由香は、その言葉を深く噛み締めるのだった。
「恐ろしいことに、自分の人生の決断の責任は自分にしか取れない」(シーズン2・第2話)
そんなシーズン2は、三姉妹の恋愛模様はほとんど振り出しに戻った状態からスタートしている。美香は学との結婚がなくなり、漫画家デビューを果たしたユウジと結婚を前提にした同棲生活を始め、里香は大輔と離婚して東京に戻り、昔働いていた出版社に復帰。由香は過去最大の“非モテ期”に突入し思い悩む。
ユウジが自在に鼻血を操れる“鼻血女”(逢沢りな)とホテルに行ったことから距離を置くために実家へ戻ってきた美香。2人の関係を見かねた源太郎は、ユウジと2人で腹を割って話がしたいと美香に伝えるのだが、「余計なことしないでよ」と一蹴される。そこで源太郎が口にしたこの言葉は、美香に向けられたと同時に、たまたま居合わせた里香やその場にいなかった由香にも向けられたものである。源太郎のさりげなくも深い言葉には、娘たちもいつものツッコミを忘れるほどだった。