心霊が“はっきり”映ったドキュメンタリーの舞台裏…豊島圭介監督と角由紀子が語る『新・三茶のポルターガイスト』

インタビュー

心霊が“はっきり”映ったドキュメンタリーの舞台裏…豊島圭介監督と角由紀子が語る『新・三茶のポルターガイスト』

三軒茶屋に実在する「ヨコザワ・プロダクション」で起こる怪現象の数々をとらえて話題となった心霊ドキュメンタリー『三茶のポルターガイスト』(23)の続編、『新・三茶のポルターガイスト』が公開中だ。

照明の明滅、鏡から噴き出す水、なにもないはずの床から伸びてくる白い手…という現象の真相を突き止めるため、オカルト編集者の角由紀子がヨコザワ・プロダクションに潜入し、定点カメラ、降霊術、サーモグラフィなどさまざまな手法を用いながら“徹底検証”に挑んだ。監督を務めたのは、ホラーにアイドル映画、テレビドラマ、ドキュメンタリーまで幅広いジャンルを手掛ける豊島圭介だ。

かつてないほど幽霊が“はっきり”と映った本作の裏側に迫るべく、PRESS HORRORでは豊島監督と角にインタビューを敢行。聞き手は「第2回日本ホラー映画大賞」で大賞を受賞し、商業映画監督デビュー作『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』が公開を控える近藤亮太が務めた。

「『本物を撮るぞ』と構えたわけではなく、本物としか思えないものを見てしまった」(豊島)

豊島圭介監督は、自身が見た“モノ”に驚きを隠せない様子
豊島圭介監督は、自身が見た“モノ”に驚きを隠せない様子[c]2024 REMOW

――はじめに、『新・三茶のポルターガイスト』は“本物”と“やらせ”を巡った心霊ドキュメンタリーという異色の作品に仕上がっています。今回“本物”の心霊映像を撮影するにあたり、どのようなことからスタートしたのでしょう。

角由紀子(以下、角)「まず、自分が間近でみたものがあまりにもおもしろかったので、純粋に『こんなおもしろいものがあるから、みんな見て!』というのが最初の原動力になっていました。そのあとから『否定派を納得させたい』といった欲も出てきたり、『正体を突き止めた先に、新しい発見があるのでは』という期待が高まって、1作目に続いて2作目を作るに至りました」

角由紀子立ち会いのもと、様々な角度から検証が行われた
角由紀子立ち会いのもと、様々な角度から検証が行われた[c]2024 REMOW

豊島圭介(以下、豊島)「心霊を信じることと、目の当たりにすることには大きな溝がありますよね。前作『三茶のポルターガイスト』はもちろん、ほかの方が撮ったヨコザワ・プロダクションの動画を観たり、角さんからお話も聞いてはいたんです。でも、自分の目で、実際になにもないはずの場所から手が出てくるのを見てしまって…ガラガラと価値観が崩れるような感覚がありました。同時に、清々しくて神々しいような、ヒヤッとした空気があり、それがおもしろかった。ヨコザワプロにハマった人たちは、これにやられたんだとわかりました」

――今回は前作の後藤剛監督から、豊島監督へバトンタッチされましたね。

豊島「当初は後藤監督で撮影が進んでいたんですが、後藤さんが多忙になってしまったので僕が監督を務めることになりました」

――実際に撮影されたフッテージの中から“物語”が立ち上がってくる構成は、以前豊島監督が手掛けられた「怪談新耳袋 殴り込み!」シリーズを彷彿とさせます。

豊島「『殴り込み』では、こんな映像が撮れたから、こう物語を組もう…などと考えながら編集するのが醍醐味でした。それが今回のヨコザワプロには、最初から物語がある。『すごい場所だな』とハマってしまいました。だから『本物を撮るぞ』と構えたわけではなく、本物としか思えないものを見てしまった、という自分自身のグラウンド・ゼロ体験を基に作っていきました」

――「殴り込み」でも、ほかのいわゆる心霊ドキュメンタリー作品では味わえない生々しさがありました。今回は明らかにレベルの違う映像になっていますが、撮れた“モノ”について、どのような印象を受けましたか。

豊島「『殴り込み』の時は『人間の形をした幽霊が撮りたい!』と思っていろんなところに行ったけど、撮れなかった。今回は心霊スポットで感じるような怨念とか、そういう文脈ではない、もっと違った“モノ”である気がしています」


専門家が各々の立場から究明を試みるが…
専門家が各々の立場から究明を試みるが…[c]2024 REMOW

角「私もいわゆる幽霊ではなく、違う“モノ”がいる、と言ったほうがみんな納得してくれるんだろうなと思い始めています。この映画を撮影し終えたくらいから、完全に(心霊)肯定派に変わったんです。私はかなりヨコザワプロに通い詰めているのですが、最初に訪れたころは『ヤラセかな?』という疑念がありました。それが何年通っても、一つも証明できる証拠が見つけられてない。ならば本物でしょうと。今回も専門家の方が来ていましたが、明確なヤラセの証拠は見つけられませんでした」

――怪異が現れる時、映像ではその場にいた人の恐怖感が伝わりきらないこともありますが、ヨコザワプロでの現象も、現場では相当に怖い体験だったのでしょうか。

角「最初に見た時は『本当にヤバいモノを見てしまった』と思いました。でも考えてみると、ヨコザワプロの生徒の方はいつも見てるんだから、全然大丈夫だなって(笑)。また徐々に、テレビの企画なんかで芸人さんなんかも来るようになったので、怖くない雰囲気が出来上がっていったと思います」

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