池松壮亮、『ぼくのお日さま』越山敬達&中西希亜良が放つ魅力に惚れ惚れ!「物語を超えてサポートできたらと必死だった」と充実感

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池松壮亮、『ぼくのお日さま』越山敬達&中西希亜良が放つ魅力に惚れ惚れ!「物語を超えてサポートできたらと必死だった」と充実感

第77回カンヌ国際映画祭オフィシャルセレクション「ある視点」部門に正式出品された『ぼくのお日さま』(9月13日公開)の記者会見が外国特派員協会で行われ、越山敬達、中西希亜良、池松壮亮、奥山大史監督が出席した。

『ぼくのお日さま』の外国特派員協会での会見が行われた
『ぼくのお日さま』の外国特派員協会での会見が行われた

本作は雪の降る田舎町を舞台に、吃音をもつホッケーが苦手な少年タクヤ(越山)と、選手の夢を諦めたスケートのコーチ荒川(池松)、コーチに憧れるスケート少女さくら(中西)の3人の視点によって紡がれる物語。監督、撮影、脚本、編集を『僕はイエス様が嫌い』(19)の奥山大史が務めた。現在15歳の越山は本作で映画初主演を果たし、6月16日に13歳になったばかりの中西はキャスト募集を知ったスケートのコーチからの勧めで応募し、100名以上が参加したオーディションでヒロインに抜てきされ、初めての演技に挑戦した。

本作で映画主演デビューを果たした越山敬達。フレッシュな才能あふれる15歳だ
本作で映画主演デビューを果たした越山敬達。フレッシュな才能あふれる15歳だ

キャスト陣はスケートをしながら芝居、撮影をするという作品に挑んだ。苦労したことに話が及ぶと、越山は「湖の撮影の時に、自然の氷だからゴツゴツしていたんですが、たくさん転びました。右膝を3回、自然のリンクに強打して。痛すぎて、泣いちゃったというエピソードがあります」と回想。会場を温かな笑いに包んだ。フランス語、英語も堪能なマルチリンガルである中西は、流暢な英語で「映画初出演なので、最初は緊張していました。どうしたらいいのか、正しいやり方がわかっているわけではなかったので少し怖かったです」と回答。「長年、スケートをやってきた経験をありがたいことに活かすことができました。演技面で力不足かもしれないというところがあっても、スケートの技術で補うことができた部分が多分にありました。スケートをしていなかったら、この役を獲得することはできなかった」と未知の世界に飛び込んだ感想を口にした。

13歳になったばかりの中⻄希亜良は、本作で初めての演技に挑戦した
13歳になったばかりの中⻄希亜良は、本作で初めての演技に挑戦した

「スケートに初めて挑戦した」という池松は、「お二人はとても上手」と越山と中西を称えながら、「お二人の足を引っ張らないように頑張った。(監督の)奥山さんもスケートをやっていて、カメラも自分で回していますから、奥山さんがカメラを担いで滑っているんです。そこに上手な2人がいて、置いていかれそうになりながら必死についていきました。湖のシーンでは、この4人で遊ぶように滑って撮影をして。そういった光景は一生忘れないだろうなと、驚くべき瞬間だったなと思います」と撮影を懐かしみながら、充実の表情を浮かべていた。

越山敬達と中⻄希亜良を称えた池松壮亮
越山敬達と中⻄希亜良を称えた池松壮亮

また池松は「奥山さんは、『撮影をしながら物語の余白を埋めていきたい』強くと望んでいた」と奥山監督の求めた映画づくりについて説明。「役の人生にとっての、スペースをもらったような気がする。即興で『こういうものを撮ってみよう』となったり、言葉を足していったりして、余白をもらうことでどんどん膨らませていった。2人は脚本をもらわずに、その場でセリフを聞いて、それを綿密に染み込ませていくような作業だった」と越山と中西には脚本が渡されていないと明かした。越山は「それが一番、自然体を引き出だせるやり方だったと思いますし、それが一番やりやすかったと思っています」と奥山監督に感謝。中西も「自分自身の姿もそこ(役柄のなか)にありました。未経験者への演出としては、とてもいいアプローチでした」と自由に演じることができたと話した。

みずみずしい演技を披露した2人が、笑顔を弾けさせた
みずみずしい演技を披露した2人が、笑顔を弾けさせた

越山と中西は未成年のために、20時で会見を退出。大きな拍手があがるなか、越山と中西は心を込めてお辞儀をして会見をあとにした。2人が去った後、彼らとの共演の感想を聞かれた池松は「できれば2人がいるところで言いたかった」と微笑みながら、「お二人が役を演じる以上のことをされた。それぞれが辿ってきた人生をそのまま役に乗せて、本当に魅力的でした。2人に引っ張られながら、2人をどうサポートできるか、映画を楽しんでもらえるのか、物語に没頭してもらえるのかと。コーチ役として、物語を超えてサポートできたらと思って必死に頑張りました」と若い2人との共演は、池松にとってもかけがえのない時間になった様子。奥山監督は「スケートができる子を選ぼうと思っていましたが、事務所にも所属していてスケートもできて、お芝居もできる子となると、限られていた。越山くんに出会えたのは、とても幸運でした」とキャスティングについて述懐。「さくらを演じてもらう子はなかなか見つけられず、日本各地のスケートリンクに『映画のヒロイン募集中』と張り紙をして、中西さんが応募してくれた。時間はかかりましたが、中西さんと出会えたのはこの映画にとって幸せなことだった」と喜びを噛み締めていた。


メガホンを取った奥山大史監督
メガホンを取った奥山大史監督

「スケートを習っていた」という奥山監督。「スケートは他のスポーツ選手と比べても、選手生命が短い。若い人でも現役を引退していく人はいっぱいいた。選手としての夢を諦めて、前向きに道を選んでいく。そういう人に独特なつややかさ、色っぽさを感じることがあった。一度なにかを諦めた人の独特な雰囲気を、池松さんにも感じた。そこから荒川というキャラクターができあがった」と本作には池松の存在が欠かせなかったという。池松は「複雑な想いを抱えて生きてきた人の役」と演じた役柄を分析し、「後悔や諦めが漂っている。2人(タクヤとさくら)に出会うことで、もう一度人生に前向きになっていく。後悔を抱えた荒川が、なにを言ってあげられるのか。導いてあげられるのか。そういうことに葛藤しながら、子どもたちと対峙したかった」と役作りについて語っていた。

取材・文/成田おり枝

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