韓国映画界の女帝、キム・ヘスが30年以上世界中のファンに愛され続けている理由
ラブロマンス、サスペンスから時代劇まで…幅広いジャンルで大活躍
それはドラマでも同じことが言える。日本の人気ドラマ「ハケンの品格」をリメイクした「オフィスの女王」でのスーパー派遣のミス・キム役では、シュールな笑いと痛快なラブロマンスを届け本国でもヒット作に導く。日本でもリメイクされた秀作サスペンス「シグナル」では正義感が強い刑事役を熱演し、ヒューマンドラマとしても奥行きを深めていた。「ハイエナ -弁護士たちの生存ゲーム-」ではチュ・ジフンとの最高のバディを披露。なかでも共演者たちの良さを引き出す姉御肌な役柄は、右に出る者はいないだろう。
凄まじい演技力が記憶に新しいのは2022年にNetflixで配信した「未成年裁判」だ。少年犯罪をテーマに扱う社会派ドラマで判事役として登場する。一方で時代劇ドラマ「シュルプ」では王妃でありながら5人の王子の母親として、いつの時代も変わらない親子の愛を深く優しく描いていた。
30年間“青龍映画賞”の司会を担当!韓国の俳優たちに与えた影響とは
またキム・ヘスの人柄や役者人生は青龍映画賞なしには語れない。韓国映画界最大の祭典のMCを30年間も務め(1993年/第14回~2023年/第44回 ※第19回を除く)、“青龍のシンボル”や“青龍の女神”であり、歴史そのものだと称賛されながら退いた。
当初はまだ22歳というプレッシャーを背負って大役を引き受けたのは、韓国ではどの映画がヒットして、どんな俳優が評価されるかを知りたかったからだと言う。それがいまでは俳優たちの憧れの存在だ。彼らは彼女のことを「すばらしい配慮があり、励ましと勇気となっている」と口をそろえて言う。彼女が新人俳優や端役の俳優の名前をメモして、監督などの関係者に紹介している話は有名だ。
SNSでも新人俳優たちを積極的にアップしているのをよく見かける。また青龍映画賞の授賞式の台本も自ら手を加えている。その内容を尋ねると「外見などを評価するコメントは排除し、彼らが韓国映画界にどんな影響をもたらしたか、どんな努力をしてきたかを重点的に修正している」と語っていた。35年以上のキャリアを経たいまもなお、数々の授賞式でキム・ヘスの名前がある。きっとなぜ彼女がそこに居続けられるかを誰もが知っているだろう。彼女の存在は韓国の俳優たちに大きな影響をもたらしているのだ。
さて、2024年の下半期には新作の「トリガー」がディズニープラスで配信予定だ。検察も警察も解決できない事件を追跡するテレビ局の調査報道チームが奮闘するスリラードラマ。キム・ヘスが演じる熱血チーム長と社会性ゼロの天下りプロデューサー役のチョン・ソンイルとの新しい組み合わせを心待ちにしている。
文/ヨシン