「逃走中」監督×プロデューサーが語る、映画で追求した登場人物の心情「テレビと同じことをしても意味がない」|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「逃走中」監督×プロデューサーが語る、映画で追求した登場人物の心情「テレビと同じことをしても意味がない」

インタビュー

「逃走中」監督×プロデューサーが語る、映画で追求した登場人物の心情「テレビと同じことをしても意味がない」

今年で20周年を迎えるフジテレビ系列の人気バラエティ番組「run for money 逃走中」をドラマ映画化した『逃走中 THE MOVIE』が公開中だ。映画の舞台となるのは賞金総額1億円超え、参加総数1000人の史上最大級の「逃走中」。ゲームの鍵を握るメインキャスト6人には、JO1から川西拓実、木全翔也、金城碧海、FANTASTICSより佐藤大樹、中島颯太、瀬口黎弥と、人気沸騰中のボーイズグループがコラボレーション!ほかにも個性あふれる多彩な芸能人が逃走者として出演する。

史上最大の「逃走中」が描かれる本作で、JO1とFANTASTICSが夢のコラボレーション!
史上最大の「逃走中」が描かれる本作で、JO1とFANTASTICSが夢のコラボレーション![c]2024 フジテレビジョン 東映 FNS27 社

そんな本作のメガホンを取ったのは、おもにフジテレビのテレビドラマで演出を担当し『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(18)を手がけた西浦正記監督。MOVIE WALKER PRESSでは、「『逃走中』をどのようにドラマ映画化したのか?」という疑問を探るべく、西浦監督と「逃走中」の第1回よりチーフプロデューサーを務めている笹谷隆司プロデューサーにインタビューを敢行!「逃走中」の誕生秘話から「子どもに観てほしい」という本作に込めた想いまでたっぷり語り合ってもらった。

高校時代、共に陸上部だった大和(川西)、瑛次郎(中島)、賢(木全)、陸(金城)、勇吾(瀬口)、譲司(佐藤)の6人。卒業後それぞれの道を歩んでいた彼らのもとに、史上最大の「逃走中」への招待メールが届く。久しぶりの再会を果たした6人だったが、それぞれの事情からかつての絆は失われてしまっていた。そんななか「逃走中」が何者かに乗っ取られてしまい、一部のハンターが制御不能に!ハンターに捕まると消滅する、“命賭け”のデスゲームとなってしまう。

「西浦監督は、日本の映画監督のなかでは一番『逃走中』を知っている監督」(笹谷)

西浦監督&笹谷プロデューサーに「逃走中」について語り合ってもらった
西浦監督&笹谷プロデューサーに「逃走中」について語り合ってもらった

――テレビのバラエティ番組をドラマ映画化するというのは、日本映画史のなかでもかなり珍しい取り組みだと思います。映画化の経緯を教えて下さい。

笹谷「『逃走中』には、未来世界でクロノス社が開催しているエンタテイメントゲームという設定があります。だから、いつかドラマや映画にしたいなとずっと思っていたんです。そしたら去年あたりにドラマ映画制作部の高田雄貴プロデューサーから映画にしませんかっていうお話をいただいて。我々も今年ちょうど20周年を迎えるのでタイミングもいいということで決めました」

――監督に西浦さんを起用したのは?

笹谷「『劇場版コード・ブルー』という大ヒット映画をつくられたという実績はもちろんですが、実は西浦監督は、過去に番組の『逃走中』でドラマ部分を2度ほど撮っていただいたことがあったんです。そういう意味では日本の映画監督のなかでは一番『逃走中』を知っている監督ということで、正直もう西浦監督以外考えられないと思っていました」

西浦「オファーが来た時にはびっくりしましたけど、ドラマ部分を撮影していた時に、笹谷プロデューサーとは、『これ映画にできるよね』っていう話をしていたんです。だから驚きはありましたけど、『とうとう来たか』という感じでしたね」

本作のメガホンをとった西浦正記監督
本作のメガホンをとった西浦正記監督

――とはいえ、『コード・ブルー』のようにドラマを映画化することと、今回のようにバラエティ番組を映画にするのとでは全然違うと思います。そのあたりはどのように考えたんですか。

西浦「映画でわざわざバラエティ番組を見せられてもなって思うだろうなという気がしたんです。だって普段は無料で見られるわけですから。だからどのような違いが出せるだろうかと考えました。番組の『逃走中』は、逃走者それぞれのキャラクターとか性格や、彼らがどれくらいお金をゲットできるか、最後まで逃げ切ることができるのかといった興味で見る。映画ではそこに、この人はなぜお金がほしいのか、なぜ走るのか、その理由まで見せて、もう一つ深いところまで描ければ、今回つくる価値があるんじゃないかと考えました」

笹谷「そうですね。やっぱりテレビ番組でやっていることを映画でやっても意味がない。番組では人の心理を描こうとはしているんですけど、ガチで撮影しているから、寄りの表情とか迫力のあるシーンは、なかなか思い通りには撮れない。そこが映画では圧倒的に違って、心情がしっかり描くことができるので意義があるなと思いました」


「『逃走中』は、むき出しの人間が見えるところがとてもおもしろい」(西浦)

――そもそも番組の『逃走中』はどのような着想から生まれたのですか?

笹谷「20年前、僕はなにかワクワクドキドキする番組をつくりたいと思っていました。それで最初に無我夢中になったことってなんだろうと思った時に浮かんだのが、子どものころのかけっこや鬼ごっこだったんです。これを大人が真剣にやったらどうなるんだろう?というところから始まりました。シンプルで誰もがわかりやすくてワクワクできて、子どもから大人まで楽しめるっていうのが良かったと思います。しかも、そこにはお金が賭けられていて、お金も欲しい、名誉も欲しい、だけど怖い。そういう自分のなかの葛藤を見せていくという意味では、実はドキュメンタリー性の高いゲームバラエティになっていると思います。『心理逃走劇』という言い方をしているんですけど、裏切りがあったり、人を助けたり、その人の人間性や本質的なものを浮き彫りにするような番組なんじゃないかと思います」

西浦「僕も視聴者として番組を観ていて、やっぱりむき出しの人間が見えるところがとてもおもしろいなと思いますね。出演するタレントさんやアスリートの方々にはそれぞれのイメージが一般的にはあると思うんですけど、追い込まれると『この人が、こんなことしちゃうの?』っていうのがあったりして。本当にドキュメンタリーを観ている感覚でワクワクできるんですよね」

――『逃走中』の第一回は深夜番組として始まりました。その番組が20年も続いて、しかもいまは特に子どもたちが熱烈に見るような番組になりました。ここまで成長すると思っていましたか?

笹谷「誰も思ってないですね(笑)。20年前に始めたメンバーの共通意識は、とにかく自分たちがワクワクドキドキする番組をつくりたいということだったので。最初は10~20代前後の若い人たちに、流行り始めたという感覚がありました。mixiにいろんなコミュニティができて、全国で“知らない人同士によるリアル逃走中ごっこ”をやり始めるという現象があったんです。それがゴールデンタイムで放送するようになってから、急に子どもたちが見始めた。でも、『逃走中』ってお金のためにいやらしい人間性も出るし、怖い感じもするし、子どもには向かないんじゃないかと当初思っていました。それがまさかの子どもに刺さって、すごく人気になった。それは僕らとしてはまったく予想していませんでした。僕が一番うれしいのは、子どもたちから手紙をもらうことですね。『将来ハンターになりたいです』、『ハンターになるにはどうしたらいいですか?』って。絶対的に怖い存在が必要だと考えてハンターをつくったんですけど、怖いだけではなくて、カッコいい存在でもあり、憧れもある。そういう絶妙なバランスのキャラクターになったと思います」

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